名前
その笑顔の意味は知りたくなかった。
きっと、「いなくなる」ということなのだろう。
もう、オレに会えて満足だみたいな顔をして。
最後にいい思い出が出来たみたいな顔をして。
ふっざけんな!
ぐっと拳を握る。
オレは満足させるためにきたんじゃない。思い出をやりに来たわけでもない。
なのに何勝手に満足してさよならしてんだよ!
「涼珂!」
「…!!」
びくんと、面白いくらいに肩を揺らしてこんどこそ身体ごと振り返った。
その顔をオレは一生忘れないだろう。まさに驚愕。その一言に尽きる。
そのあまりの驚きようと零れ落ちそうなくらい見開いた目を見てオレは思わず笑ってしまった。
笑う場面じゃないことはわかってるけれど。
しかしオレが笑い出したことが「涼珂」にはわからなかったらしい、ますます目を見開いて固まっている。ドライアイにならない?
「その顔、おもしれー」
「その、なま、え…」
「うん?お前の名前だろ?」
オレはコイツ…涼珂湖の事を調べていたのだ。
この地域は実は一部には非常に有名な霊的スポットだ。
そして涼珂湖は悪霊など人にとって害あるものを清める湖だった。
そして清められた霊たちはその近くの神社で成仏するのだ。
しかし、あるとき事件が起こる。
湖が埋め立てられる切欠になった事件だ。
ある一人の霊能師がこの町に来た。
強い霊力を持ってるそうだ。ちょっと町でも話題になって新聞やテレビにも出たと思う。
その霊能師がこんな発言をした。
物凄く強い悪霊がこの町に潜んでいる。悪霊にとっても厄介な涼珂湖を穢してやろうと虎視眈々と狙っていると。
はじめ当然信じるものはいなかった。
しかし、霊能師はこう続けた。今はまだ力は涼珂湖に劣っているが、いつか力をつけた悪霊が少しずつ害をなしていくだろう。
そうなったら涼珂湖ごと封印をして捧げれば事体は収拾するだろう。
この霊能師の言葉から少し経った後。
少しずつだが町に異変がおきはじめたらしい。オレは全く知らないからわからない。その頃はまだオレは涼珂と遊んでいる頃だ。
ちょっとした不注意で済まされることからだんだんと危険な事故に発展していったそうだ。
そうして、町は涼珂湖ごと悪霊を封印することに決めたのだ。
あの霊能師が言ったとおり、涼珂湖を捧げた後ぱったりと謎の自己事件は収まった。
涼珂湖は埋め立てられ、湖の中心にあたるところには悪霊を封印した石碑が建てられているという。
この話は当事者達には有名な話ではあるが、そうでないものには殆ど知られていない。
悪霊を怖がったり恐れたりすると、その気持ちが悪霊の力になってしまうことがあるからだそうだ。
だからオレはこのことを知るのにとても苦労した。




