↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春の蕾に口づけを  作者: 犬村汐里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

第2話



「どこに住んでるの?」



 明白は聞いた。



「どこにも住んでない。家はない」



 家はないと言う割には着ているものもそれほどボロボロではない。裕福な家庭とは言い難いが、それでもちゃんとした衣服だった。



「本当に?」


「家はない。何回も言わせないで」


「悪い。だが、帰る家がないなら放っておくことはできないよ。うちに来るか?」


「……いい。俺はここで死ぬ」



 明白は困った。しかし、あることに気がついてくすりと笑う。



「君に名をあげた。なのに安安と死なせることはできない。君のことは何も聞かない。詳しく聞くことはない。ただ、僕のそばで生きててくれないかな」



 明白の言葉に春蕾は目を丸くした。



「……求婚してるみたいになってるよ」


「えっ?」



 明白が驚く。すると、春蕾はくすりと笑った。



「無自覚? ふふっ、お兄さんいい人そうだね。あなたの名前は?」


「名は明白、字を清陽という」


「ふーん。どっちで呼んでほしい?」



 澄んだ目が明白を見て尋ねる。その瞳に吸い込まれそうになりながらも、明白は答えた。



「明白、と」


「分かった。明白、よろしくね」


「ああ」


 そう頷いて、明白は立ち上がった。



「さあ、帰ろう」


「うん、帰ろう」



 春蕾は橋の向こう側を見つめた。


 おそらくそっちには本当の家があるのだろう。しかし、春蕾は寂しい顔をすることなく、どこか笑顔で背中を向けた。きっともう、後悔はないのだろう。


 それなら、いいのだ。



「嫌いな食べ物はある?」と、明白は言った。


「何でも食べるよ」


「私はきのこが嫌いなんだ」と言えば、信じられないものを見たかのような顔で春蕾がこちらを見た。


「美味しいのに!?」


「美味しくないよ」


「えー、信じられない」


「美味しいと思う人のほうが信じられない」



 そんな話をしながら、明白の隣を春蕾は歩いていた。春蕾を見れば、頭の上に桜の花がついていた。


 明白はその桜をつまんでとった。



「ん?」と春蕾がこちらを見る。


「ついてた」


「ふふ、ありがとう」


 少し照れたように笑う春蕾が愛らしく、明白はその笑みを見つめたまま笑い返した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。