第9話 ろぼみ鮮烈デビュー
第9話 ろぼみ鮮烈デビュー
そもそも、機械に性別というものがあるのだろうか。
番犬ロボ──いや、自称ろぼみは、その問いに対して独自の答えを出していた。
「あたい、女装することで……動物界に受け入れられるはずなの……!」
ろぼみにとって性別とは、機能でも構造でもなく、社会に入るための“入口” だった。
■
静香は何度も諭した。
「ロボ……美咲の印象を良くしたいなら、女装は意味ないよ……」
しかし、ろぼみは首を横に振る。
「あたいにとって女装は……
動物界デビューのための登竜門なの……!
美咲様のためじゃないの……!」
静香
「故障?……方向性がズレてる……」
ろぼみは今日もスカートの揺れ具合を調整し、髪飾りの角度を最適化し、自分の姿を“拡散”するための行動を続けていた。
防犯カメラに映り込む
自販機の液晶に反射させる
公園の池で自己評価
動物たちに見せて反応を記録
タッチパネルへのサブリミナル侵入
ろぼみの努力は日常化していた。
■
美咲
「最近、町に出るんだって!」
「出るって……何が?……」
静香
「……」
静香は黙ったまま目くばせで先を促す。
美咲
「女の影が映る」
「機械に謎の影が残る」
「回転ずしのタッチパネルに幽霊が出る」
「ほう、回転ずし……これは……」
ぼくは写真を見てピンと来た。
「そうだ!実は最近、臨時収入があって……」
「今度の日曜日に僕のおごりでその回転ずしにみんなで行ってみよう」
美咲
「やったあ!!」
紺
「お姉さまが行くのなら断る理由もない。わしも参ろう」
静香
「いか、えび、うに、げそ、まぐろ、えんがわ、ぐんかん」
ぼく
「紺、店内はペット禁止だろうから、動物たちに留守番。今回はおみやげで勘弁してもらって。」
「動物たちの羨望の悲鳴が聞こえてきそうじゃ」
「それと……」
「なんじゃ?」
「事前に状況を把握しておきたい。下調べに店の方を探って来てほしい」
「造作もない。わしが真相を見極めてやろうではないか。」
■
紺は店内の天井裏に忍び込んでいた。
「ほうほう、なかなかの繁盛だ。」
しばらくして店内にわずかだが不自然な閃光が走った。
「ん!?今のは……」
「……この光、霊ではない。人工の……いや、そうか、こんなことだっとは。帰って主様に報告じゃな」
■
そして日曜日、ぼくたちは“心霊調査隊”として回転ずしへ向かった。
店外に待機していたろぼみは、店内のWi-Fiを検知した。
ろぼみ内部ログ
「あたいの女装姿を……
動物界デビューのために……
もっと広めなきゃ……!」
「人間社会では……
自分の姿を拡散することで評価を得るらしいの……
あたいも……やるの……!」
ろぼみは店内端末への侵入準備を始めた。
■
ぼくたちが席に着きしばらくすると、タッチパネルに一瞬だけ“影”が映った。
美咲
「えっ……今なんか映った……気がする……怖い……」
客A
「出た!!心霊現象だ!!」
客B
「動画撮る!」
客C
「本物だ!!」
店長
「やめてください!!」
店内がざわつき始める。
ぼくは高速瞬き機能を使い、タッチパネルのサブリミナル映像を捉えた。
「……やはり静香の番犬ロボだ。心霊現象の正体はこの女装だ。」
静香
「ロボ……また変なことしてる……店の端末に侵入したんだ……!」
紺
「霊的エネルギーは……ゼロじゃ。これは幽霊ではない。」
美咲
「えぇぇぇぇぇ……?」
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ろぼみ内部ログ
「あたいの姿を……もっと広めるの……!」
タッチパネルに一瞬だけろぼみの女装姿が映る。
客
「出た!!」
「幽霊だ!!」
「動画撮れた!!」
店長
「やめてください!!」
客
「皿が勝手に流れた!」
「影がまた映った!」
「動画撮れた!」
店長
「やめてください!!」
店内は大混乱の中ぼくらは無関係を装いながら支払いを済ませて店を出るのであった
■
帰り道──動物たちに寿司を配る
紺
「動物たちよ、待たせたの。わしが寿司を持ち帰ったぞ。」
動物たち
「紺様〜!」
「マグロ〜!」
「サーモン〜!」
「タマゴ〜!」
ろぼみ(女装)
「あたいも……仲間に……」
動物たち
「げ!番犬ロボ……なんでスカート……?」
ろぼみ
「みなさん初めまして……!」
「元番犬ロボのろぼみです!このたび紺様直々の洗脳を経て、あたいは動物評論家ろぼみとして生まれ変わりました。以後お見知りおきを!」
動物たち
「……かわいい……」
「……努力してる……」
「……応援するよ……!」
紺
「洗脳とは穏やかじゃないが、これにて一件落着じゃな」
美咲
「ろぼみ、かわいい〜〜!」
「今回もカオスだったな……」
■
「女装ロボ……心霊現象……動物界……洗脳……まったくわけがわからない……」
一部始終を観察していた作家先生は、頭を抱えながら報告書を書くのだった。




