第7話 静香の親睦会
夕方の公園。紺はベンチに腰掛け、静かに空を見上げていた。
周囲には近所の動物たちが集まっている。
犬、猫、カラス、スズメ、タヌキ、時々飼いウサギまで。
定例報告会である。
彼らは紺に向かって口々に報告する。
「紺様、静香の家、最近何か変です」
「番犬ロボが警戒モードで怖いです」
「ひどい目に合わされた仲間もいます」
「敷地内はロボが巡回してて近づけない」
「空の上で変な気配もします」
紺はほぼ無表情で聞いていた。
「ふむ、どうしたものか……そういうこともあるじゃろう。
じゃがな動物たちよ、それは人間界のこと、わしはあまり興味がないのじゃが……
まあ、それとなく探ってみることにするかの。」
動物たちはざわつくが、紺は淡々としている。
■
昼休み。静香がぼくたちに声をかける。
「今日、うちに来てほしい。お母さんが会いたいって。」
美咲は気乗りしない。
「えぇ~……どうしよっかなぁ。でもあんたが行くなら行ってもいいけど。」
紺は静かに言う。
「静香殿の家に異変ありと聞いたゆえ、わしも参るとしよう。
美咲お姉さまが心配でもあるしの。」
ぼくは普通に「行くよ」と答える。
■
作家先生は静香の家の方向を見て、妙な気配を感じ取る。
「……今日は何やら危険な匂いがする。張り込みをするか。」
彼は自称作家だが、妙に鋭い勘を持っている。
■
静香の家の玄関が開き家族一同が出迎える
「我が家へようこそ」
静香の父は礼儀正しいが冷たい。
ぼくを“観測対象”のように見つめる。
「いらっしゃい。静香のお友達のみなさん。」
静香の母は明るく歓迎する。
「来てくれて嬉しいわ!静香、ずっと楽しみにしてたのよ!」
静香は少し照れながら「ありがとう」と言う。
美咲は珍しい家具に目を奪われワクワクしている。
ぼくは普通。
紺は無言。
■
紺は玄関に入らず、外に残る。
番犬ロボが敷地内を巡回している。
ロボ「警戒モード。不審者判定。」
紺「ほう……わしを不審者と申すか。
ならば、少し相手をしてやろうかの。」
ロボ「……対決開始。」
そして始まる意味不明な儀式。
● 相撲を取る
ロボが四股を踏む。
紺も四股を踏む。
互角。
● 踊りのような不可思議な動作
ロボが奇妙なステップを踏む。
紺も同じステップを踏む。
完全に同期。
● 最後に揃って遠吠え
ロボ「ウォォォォン」
紺「ウォォォォン……じゃ」
静香の家の外で、人間とロボが揃って遠吠えする。
■
張り込み中の作家先生は双眼鏡を落としそうになる。
「私は今、何を見せられているのだろうか。」
「……何だこれは。儀式……?相撲……?踊り……?遠吠え……?まったくわけが分からない……。」
■
儀式が終わると紺は静かに家に入る。
番犬ロボは職務を放棄し、紺の後ろをついてくる。
紺が席に座ると、ロボはその横に鎮座する。
「……紺様の護衛モードに移行。」
美咲は気づかない。
ぼくは「またか……」と思う。
静香は困惑。
■
父の反応──「……(これは本当に問題だ)」
ロボが紺の横に鎮座しているのを見て、
静香の父は表情を変えず、母の耳元にだけ小声で言う。
「……これは本当に問題だ。」
母は主人公一派を見て安心したように微笑む。
「いいじゃない。紺ちゃんも美咲ちゃんも、静香のお友達なんだから。」
父は言葉を失う。
■
静香は父の言葉に気づくが、
母の笑顔を見て少し安心し、
ぼくたちの方を見てふっと笑う。
「……来てくれて、本当に良かった。」
■
美咲は家具を褒めていた流れのまま、静香に笑いかける。
「静香、いい家に住んでいるのね。見たことない家具ばかりだし。」
静香は嬉しそうに笑う。
■
ロボは美咲の方へ首を向け、
腰を左右に大きく揺らし始める。
「……美咲様の発言を受信。崇拝度、上昇。尻尾振りモード、強化します。」
静香「さっきより尻尾振ってる……!」
■
紺はゆっくりロボを見て、
ほんの少しだけ目を細める。
ロボは即座に尻尾振りを停止し、姿勢を正す。
「……紺様の視線を受信。警戒。姿勢を正します。」
■
ロボは紺の横で鎮座したまま震え始める。
「……美咲様を視認したい欲求を検知。しかし紺様の視線を優先。忠誠度の葛藤が発生しています……。」
静香「葛藤してる……!?ロボって葛藤する機能あったっけ……?」
美咲は気づかず家具を褒めている。
■
美咲がロボを褒める。
美咲「あら、かわいいじゃない!」
紺(急に妹モード)
「お、お姉さま……!あまり甘やかすと……ロボが調子に乗りまする……
でも……お姉さまが褒めるなら……よいのでございます……」
ロボ(昇天)
「……紺様の柔らかい声を受信。忠誠度、最大値……!」
(紺、完全に美咲に弱い……)
静香(紺ちゃん……声が……)
父(意味が分からない……)
母
■
「今日はみんなありがとう」
父は表向きは友好的に礼を述べた、
母は安心した笑顔を浮かべ、
静香は主人公一派を見て嬉しそうにし、
美咲は家具を褒め、
紺は美咲だけ妹口調になり、
ロボは忠誠の葛藤で震え、
作家先生は意味不明な儀式を思い出して自問自答を繰り返す。
この時の静香の家は、
一触即発のピンチでありながら、
同時にただの“日常の団らん”でもあった。
親睦会が終わりぼくたちは静香の家を後にした。
紺は帰り道にぼくの家へ立ち寄って
番犬ロボを懐柔して美咲信者に仕立てあげたこと
今日の親睦会の表と裏
番犬ロボから得た内部事情などを告げて帰っていった。




