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第6話 新しく家族が増えました(美咲モノローグ)

正直に言うと、

紺がうちに居候するなんて、最初は冗談だと思ってたのよ。

だってあいつ、山の異空間から来た“霊力の化け狐”よ?

普通、家に住ませる?

無理でしょ。ねえ、そう思わない?

……と思ってたんだけど。

気づいたら、

私の部屋の隅に布団敷いて寝てるし、

私のお下がりのパーカー着て

「姉上の服……尊い……」

とか言ってるし。

どう思う?

これ、普通の反応なの?

私にはわからない。


初日なんて、もう大騒ぎ。

「姉上、ここがわらわの部屋か?」

「違う。そこ押し入れ」

「ではここは?」

「そこトイレ」

「ではここは?」

「そこ私のベッド!!」

ねえ、聞いてよ。

なんでこんなにテンション高いの?

異空間から来た子って、みんなこうなの?

しかも母さんが妙に気に入っちゃって、

「まあ可愛い子ねぇ。しばらく泊まっていきなさい」

なんて言うもんだから、

気づいたら紺の布団が私の部屋に敷かれてた。

いや、なんでそうなるのよ。


翌朝、クローゼットが荒らされてたの。

「ちょっと紺!! 何してんのよ!!」

「姉上の服……どれも尊い……

 わらわ、これが着たい……!」

ねえ、どう思う?

私のお下がりのパーカー抱きしめて、目を潤ませてるのよ。

「そんなに嬉しい?」って聞いたら、

「姉上の香り……最高……!」

……もう、恥ずかしいってば。

でも、パーカー着て胸張ってる紺を見ると、なんか……悪い気はしないのよね。


その日の夕方よ。

「美咲……今日の宿題……教えてほしいな……?」

振り返ったら、

主人公そっくりの姿が立ってたの。

……いや、耳が出てる。

「紺、バレてるから」

「くっ……!」

別の日はこう。

「美咲、今日一緒に帰らない……?」

「紺、語尾が古い」

「むぅ……!」

さらに別の日。

「主殿……いや、君……」

「紺、尻尾出てる」

「しまった!!」

ねえ、どう思う?

あいつ、何がしたいのよ。


静香が来ると、紺は全力で逃げる。

「紺さん、観測させてください」

「いやじゃ!! 姉上、助けて!!」

「観測は痛くありません」

「痛いとかじゃなくて怖いのじゃ!!」

静香は無表情で追いかけ、紺は泣きそうな顔で逃げ回る。

これ、最近の日課になってる。

ねえ、これって普通の家庭なの?


紺はよくこう言うの。

「わらわは選ばれし存在……主殿、美咲姉上、静香殿の一派……この世界で最も強き集団……!」

いや、何その謎の誇り。

実際は――

私の荷物持ち

静香に観測されて逃げる

家では私の後ろをついて回る

どこがエリートなのよ。

でもね、胸を張って言うから、なんか……可愛いんだよね。


その日の夜。

紺は私の布団の横で丸くなって寝てた。

小さくて、温かくて、呼吸がふにゃふにゃしてて、

なんか……猫みたい。

私はそっと頭を撫でた。

「……あんた、本当に面倒くさいわね」

紺は寝ぼけながら尻尾を揺らした。

「……姉上……すき……」

胸が少しだけ、あったかくなった。

ねえ、聞いてよ。

別に妹ってほどじゃないけど……

でもまあ――

家族が増えるのも、悪くないかもね。



居候してから数日。

今日から正式に学校へ行くことになった。

……いや、なんで正式に行けるのよ。

と思ったら、お母さんが勝手に手続きしてた。

「家庭の事情で同居してることにしたから」

「狐耳はコスプレってことで通るわよ」

うちの母は……

そして登校中。

紺の後ろには――

町内の動物たちが大行列。

カラス

野良猫

スズメ

タヌキ

ウサギ(また脱走)

そしてなぜか自販機前にいた猫まで合流

全員、紺の後ろを整列して歩いてるのよ。

紺は胸を張って言った。

「わしの軍勢じゃ。今日も忠義深いのう」



◆ 自販機前で“定例会議+花見”

学校に着く前に、紺が突然止まった。

「ここで会議をするぞ」

そこは――自販機の前。

動物たちが円陣を組み、紺が中央に座る。

自販機が喋った。

「いらっしゃいませー」

紺は深く頷いた。

「うむ、鉄の箱よ。今日もよい挨拶じゃ。

そなたも議題に参加するがよい」

いや、参加しないから。


動物たちは真剣そのもの。

カラス「紺様、桜の花びらが落ちております」

猫「紺姉御、今日の献上品は?」

犬「紺様、近所の子供がボールを落としました」

タヌキ「紺さま、花見の場所取りは完了しました」

献上品って何よ。

紺はうんうん頷きながら言った。

「まずは鉄の箱から献上された飲み物を――」

「いや、それ私が買ったジュースだから!!」

「お姉さま、嫉妬か?」

全然違う。



◆ そして翌日――新聞に載った

学校に行くと、クラスメイトが新聞を持ってきた。

「美咲ちゃん!これ見て!!」

地方新聞の地域欄に、カラー写真で載ってた。

『狐耳少女と動物たちの花見会議自販機前で和む異色の光景』

写真には――

紺が桜の下で正座

動物たちが円陣

自販機が背景に鎮座

紺がジュースを掲げている

動物たちが真剣に聞いている


これ、完全に“異界の評議会”よね。

でも記者のコメントはこう。

「地域の癒やしとして話題に」

「狐耳の少女はコスプレ愛好家か」

「動物に好かれる不思議な子ども」

紺は新聞を見て尻尾をぶんぶん振った。

「わしの威光がついに紙面に……!

これでこの町の支配は近い……!」



◆ 放課後:紺、他人の家のペットに勝手に命名する

自販機前での“動物会議+花見”が終わったあと、

帰り道で紺が突然立ち止まった。


「……おぬし、名がないのか?」


誰に話してるのかと思ったら、

近所の家の前で日向ぼっこしていた柴犬だった。

飼い主のおばあさんが言った。

「この子は“ポチ”って名前なのよ〜」

紺は真剣な顔で首を振った。

「いや、ポチは凡俗すぎる。

そなたは今日から――“雷牙らいが”じゃ!!」


おばあさん

「えっ!?」

柴犬

「ワン!!(嬉しそう)」

紺は満足げに頷いた。


「うむ、よい返事じゃ。今日から雷牙はわらわの副将とする」


いや、副将って……。


おばあさんは困惑していたけど、

柴犬は尻尾をぶんぶん振ってる。


これ、完全に“勝手に命名”よね。

でも紺は本気。

「名とは魂を縛るもの。わしが与えた名は、そなたの力となる」

いや、そんな設定……。



◆ そして翌日――

新聞に載った“狐耳少女と動物会議”の写真を見て、

近所の人たちが噂していた。


「あの子、動物に名前つけて回ってるらしいよ」

「うちの猫も“黒影”って名付けられた」

「うちのハムスターは“疾風丸”になった」

「なんか中二病っぽいけど……動物は喜んでるのよね」


紺は胸を張って言った。


「わしの軍勢は日々増えておる。名を与えるのは主君の務めじゃ」



新聞掲載の翌日。

学校に“自称作家先生”が現れた。


「いやあ、昨日の写真も面白かったけど……

今日は“雷牙”くんの話を聞いたよ。

君、動物に名前をつけて回ってるんだって?」


紺は誇らしげに言った。


「うむ、名付けは主君の務めじゃ」


作家先生は笑っていたが、その目は笑っていなかった。


「……なるほど。動物の行動パターンが変わっている理由が少し見えてきたよ」


「いやいや、私はただの作家だよ。ただのね」



帰り道。紺の後ろには――


雷牙(柴犬)


黒影(猫)


疾風丸(ハムスターの飼い主が連れてきた)


そして新たに命名された“蒼牙(青い首輪の犬)”


紺は満足げに言った。


「ふふ……わらわの軍勢、順調に増えておる」


美咲

「……アンタ、ほんとに電波扱いされるよ?」


「電波とは、わらわの威光のことか?」


でもまあ……

こういうところが、紺の可愛いところなんだけどね。




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