第43話 回転ずしと久しぶりの作家先生
静香の父は、昨夜の告白に肝を冷やしました。
そして今、彼の脳裏には──
これまで想像すらしなかった「穏健派との協調」という新しい選択肢が、
静かに芽生えつつあります。
マーガレットの告白を聞いた翌日。
静香の父は昨日のマーガレットの告白について考えていた。彼は今まで穏健派とそれを率いるマーガレットを軽視してきたが、考えを改めざるを得なかった。こと、謀略にかけては彼女は自分よりも数枚上手である。真正面から対立すべきではない。
コンコン、とノックの音。
「社長、よろしいでしょうか?」
「サーチマンの予約の礼にとこんなものを入手したのですが」
差し出されたのは、回転ずしバイキングのクーポン・チケットだった。
「これを私に?」
手に取り記載内容を確認する。
「いや、私はいらないので、これと同じものを10人分用意してほしい」
「それをサーチマン発売記念として美咲ちゃんに贈ろう」
「承知しました」
間もなくして彼の元に10枚分のチケットが揃った。
「さて、次は……」
静香の父は直接美咲に手渡すのでなくおりずを呼び出した。
おりずが到着すると
「いや、度々呼び出して申し訳ない」
「昨日の話は本当にためになった。それと、君の大事なワッペンを侮辱してすまなかった」
「君には何か感謝と謝罪の意味で贈り物をしたいと考えたのだが」
「偶然にもこんなものが手に入ってね。これを君と美咲ちゃんたちに進呈しよう」
「まあ、これは!美咲ちゃんもヘレン様もきっとお喜びになるでしょうね」
「ヘレンが?ああ、そう言えば彼女は魚に目がない」
おりずは笑顔で去っていった。
そして美咲の馴染みの面々が回転ずし店へ集った。
「それじゃ、みんなを代表して美咲ちゃんに挨拶してもらいます。どうぞ」とメアリが取り仕切り美咲に挨拶を促す。
「え?あたしが挨拶?そんなの考えてないよ」
「えー、この度サーチマンの発売を記念して、静香のお父さんのご協力により、ここに祝賀会が開かれることとなりました。みなさん、今日は存分にお召し上がりください」
「おーー」一同
そして各々が注文し始めようとした時、
「ごめん、美咲ちゃん、こちらのお二方とは私は初対面なんだが、ぜひ紹介してほしい」
「え?そう言えば、作家先生は二人は初めてだったね。紹介します」
「こちらはマーガレットさんの妹さんのヘレンさん。今は番組制作のお手伝いをしています」
「ヘレンです。よろしくお願いいたします。」
「こちらはおりずさんで、あたしのお弟子さんです」
「おりずと申します。よろしくお願いいたします。」
「私は美咲ちゃんの知り合いで作家のまねごとをしています。よろしくお願いいたします。」
ヘレンとおりず、作家先生は初対面同士ではあったが、互いの情報網により素性を知っていた。
(この男は確か警察の……)
(どうして穏健派のヘレンとリズが美咲ちゃんの元に……潜入工作なのだろうか?)
しばしの沈黙が政治的な緊張を生む。
「もう3人とも難しい顔してるよ。今日はお祝いなんだから」
美咲は微妙な空気を感じ取り場を和ませた。
そして食事は再開された。
「美咲ちゃん、サーチマンってどんなものなの?」と作家先生が再び美咲に問いかける。
「ん?秘密と言いたいところだけれど。教えましょう」
「これくらいの、見た目は亀のおもちゃなんだけれど」
「例えば、ここで使うと、店内にいる人。外を歩いている人。みんなわかってしまうの。すごいでしょ?」
(それはつまり索敵レーダー……)
「それは……すごいね」
「さらに、水中でも使えるのよ。これがどういう意味かわかるでしょ?」
「つまり、美咲ちゃんの目的は、水の中にいる魚か」
「その通り。先生もほしいでしょ?」
「注文するなら急いだ方がいい」
「ここにいるヘレンさんとマーガレットさんのグラビアも付いてくることになっていて、そっちも注目されているからね」
「それは、すごいね……」
(事態を全く想定していなかった。我々も強硬ビルに潜入しなくては)
作家先生は不安を募らせたが、他の面々はそれぞれが思い思いに食事を楽しむのだった。
後半では、久しぶりに作家先生が登場しました。
相変わらずの頓珍漢な推理は、今回も期待を裏切りません。
しかしその裏で──強硬ビルが今や美咲の情報発信の舞台となりつつあることは、誰の目にも明らかです。




