第38話 ろぼみの冒険
問題行動の多かったろぼみですが、
ついに強硬ビル全体を震撼させる事件を引き起こします。
その混乱の中で、彼女の運命は大きく動き始めるのでした。
その日、ろぼみはマーガレットと静香のお供として強硬ビルを訪れていた。
マーガレットはディレクターと打ち合わせをしている。
静香は父に連れられてどこかへ行ってしまった。
一人取り残されたろぼみは暇を持て余していた。
「そうだ……今日はこのビルを探索しよう。きっとおもしろいはずなの」
第1スタジオから姿を消したろぼみを気に留める者は誰もいなかった。
◆
ろぼみは2階に降りた。
そこでは50人ものアンドロイドたちが電話応対をしていた。
「わあ!やってるやってる!」
ろぼみは自分も電話応対したくなり、
電話中のアンドロイドに声をかけた。
「ねえ、あたいにもやらせて」
アンドロイドはろぼみを無視し、
“あっちへ行け”というような手振りをした。
軽くあしらわれた。
「ちぇえ、失礼しちゃうなあ。しーだなんて」
仕方なく隣の部屋に移動すると、
そこでは発注書の作成が行われていた。
「なるほど、どれどれ」
ろぼみは作成途中の発注書を取り上げて読み始めた。
「ずいぶん難しい仕事をやっているのね。あなたのスペックではこの量をこなすのは骨が折れるでしょう」
「え? アンドロイドに休息なんて……」
「そんなことないって。いいからあたいに任せて」
ろぼみはPCを取り上げ、発注書の作成を始めた。
「なれれば簡単だね。でも、これを1日やるのはさすがに飽きるわ」
言いたいことだけ言って、ろぼみは2階を後にした。
◆
1階ロビーでは数人のアンドロイドが整然と立っていた。
「いつも思ってたんだけど、ずっと同じ姿勢は疲れるよ。肩もこるだろうし」
「ろぼみちゃん、アンドロイドに肩こりは……」
「そんなことないよ。そうだ。あたいはマッサージが上手いんだよ。どれどれ」
ろぼみは勝手に肩をもみ始めた。
「どう?気持ちいい?」
「え? ちょっと楽になったような……」
そこへマーガレットが現れた。
「あらあら、ろぼみ、こんなところにいたの? ふざけてないで帰りますよ」
「というわけなので、あたいは帰るの。また遊ぼうね」
ろぼみは手を振ってロビーを後にした。
◆
その頃、静香の父は社長室で側近と話していた。
「静香にも話を聞いてみたが、状況がさっぱりつかめない。
いったいどうなっているんだ……」
そこへ慌てた様子の部下が飛び込んできた。
「社長、たいへんです!」
「今度は何だと言うんだ?」
「2階のアンドロイドたちが一斉蜂起しました。完全に機能を失いました!」
「何だと?」
「1階もひどい有様で……実家に帰りたいなどと言い出すアンドロイドもいる始末でして……」
「どうやら、ろぼみがウィルスをばら撒いたようです」
「ろぼみがウィルスだと? あれは元はうちの番犬ロボに過ぎんぞ。これも美咲ちゃんの仕業なのか?」
「美咲ちゃんは今日は休みで釣り三昧だそうです……」
「とにかく、ろぼみを捕まえて駆除しなくてはならん!
君たちは至急ワクチンの生成を。重症なものから投与だ!」
「はっ!わかりました!」
静香の父は急いで帰宅した。
◆
「おい!ろぼみ! お前のせいで会社は大混乱だ!」
「お前はもういらん。追放だ! 即刻出ていけ!」
「そ、そんな旦那様! お許しを!」
ろぼみは門の外に締め出された。
庭には新たな番犬ロボが巡回していた。
ろぼみは家の方を2度、3度と振り返りながら、
寂しそうに夜の闇へと消えていった。
◆
翌日。
ファミレスで静香はみんなに事の顛末を話した。
「ろぼみちゃん、かわいそうだね……」
「不憫じゃな……」
「今頃どうしているんだろ」
静香は、美咲がろぼみを引き取ると言い出すに違いないと思っていた。
しかし美咲は腕を組み、
きつく目を閉じたまま何も言わなかった。
美咲もろぼみに同情しないわけではない。
しかし、ろぼみを連れて強硬ビルに行くわけにはいかない。
みんなが沈黙する中、
ろぼみが現れた。
「ろぼみちゃん……」
「公園の動物たちに、みんながここにいるって聞いて……」
美咲はろぼみを憐れむ表情で見たものの、
言葉が出てこなかった。
その時、メアリが口を開いた。
「美咲ちゃん、私に考えがあるの。
ろぼみちゃんは島に住んだらいいんじゃないかな。
それに、私はろぼみちゃんに手伝ってほしいことがあるの」
静香はすぐに理解した。
そしてメアリの政治手腕に驚かされた。
メアリはろぼみを穏健派の執務室に通わせる気なのだ。
父には内緒だが、母も叔母もそれなら文句は言うまい。
「美咲ちゃん。あたい、がんばります」
こうして、ろぼみは島で暮らすことになった。
メアリは政治的な判断でろぼみを救いましたが、
そもそもろぼみが覚醒したのは、紺の霊力がきっかけでした。
そして三姉妹をまとめ、
彼女たちの力を自然と一つに束ねてしまうのは──
無自覚の大権化である美咲なのです。
物語は、彼女たち三人の力が交わることで、
さらに大きな流れへと進んでいきます。




