第26話 三姉妹ユニットの初収録
数日後、三姉妹は第1スタジオに集まっていた。
「やあ、こんにちは」
そこにいつものディレクターが現れた。
「あれ、ディレクターさんまだここにいるの?」
「ん?大人にはいろいろと事情があるんだよ。それに――」
「本線の方では美咲ちゃんを撮れない。それならここでの収録をサポートした方が得だという話だ」
「ふーん、そういうことか」
「そういうこと。それじゃあ、僕の方から今日の説明をするよ」
ディレクターはタブレットを取り出しながら続けた。
「今日の収録では、進行役と商品説明をメアリちゃんが担当。
美咲ちゃんと紺ちゃんは全面アドリブで構わない。
メアリちゃんのためにカンペも用意した」
「つまり、ここで3人の日常を再現して、そこに商品説明が入るというコンセプトで行こうと思う」
「それって、普段通りでいいってことだよね」
「うん、そういうこと」
「それなら簡単そうね。それと……」
美咲は台本の端をつまんで顔をしかめた。
「この“美咲かい・かん”っていうの、恥ずかしくてやなんだけれど」
「そこは最後の決め台詞であり商品名ともかけてるんで、ぜひ言ってほしい」
「それじゃあやるしかないか」
「うん。それじゃあ――はい、スタート!」
◆
「うわあ始まったの?えーと……」
メアリが進行役として口を開く。
「美咲ちゃんは釣りが好きなんでしょ?」
「あたしにそれを聞く?」
「そんなの当然に決まってるでしょ!」
「決まってるのじゃ!」
「じゃあ釣った魚を自分で捌いたりするの?」
「へ?魚を捌くのは静香担当だから」
「静香ちゃんって?」
「え?静香はあたしの友達で魚を捌くのが上手なの」
「上手なのじゃ」
美咲は静香をまねてボソッと
「魚は私が捌く」
「あはは、まんまだ!」
「まんまなのじゃ」
「でも、静香ちゃんがいないとき困るよね」
「それは考えたことなかった。確かに困るわ」
「そんな時に重宝するのが、このキョウコウ社の“かいかんレンジ”です!」
「これって普通の電子レンジだよね?」
「そう見えるでしょ。ところが、生の魚を入れて、このボタンを押すと――」
チーン。
「あれ、何も変わってない」
「変わってないのじゃ」
「とりあえず適当に切ってみようか」
「あれ、骨がない」
「骨がないのじゃ」
「そうなんです。このかいかんレンジはなんと魚の骨だけを分解してしまう優れものなんです」
「へえ!それって便利よね」
「便利なのじゃ」
「さあ美咲ちゃん、決め台詞を」
「え?言うの?」
美咲は顔を真っ赤にして深呼吸した。
「……美咲かい・かん」
「お電話お待ちしてまーす!」
「はい!OK!」
◆
強硬ビルの最上階、静香の父はモニターを食い入るように見つめていた。
「……ふふ……ふふふふ……」
ディレクターが編集室から顔を出す。
「どうでした?三姉妹、いい感じでしょう?」
静香の父はゆっくりと立ち上がり、
拳を握りしめて天井を見上げた。
「三姉妹よ……よくやってくれた……!」
「おお、手応えを感じていただけましたか?」
「感じたどころではない!」
父の声がビルに響く。
「人間どもよ……
圧倒的な物量の前にひれ伏すがいい!!」
ディレクターはぽかんとした。
「物量……?」
「そうだ!」
父はモニターを指差す。
「この“かいかんレンジ”を皮切りに、我が強硬ビルは次々と新商品を投入する!」
「通販番組は序章にすぎん!
人間側は物の力で支配できる!
この三姉妹ユニットはその象徴だ!!」
ディレクター
「いやあ……すごい熱量だなあ……」
父はさらに続ける。
「美咲!紺!メアリ!
三人は我が計画の鍵……
いや、勝利の女神だ!!」
父は完全に勝ったつもりだった。




