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第21話 美咲無双Ⅱ

ショッピングモールの一角。

美咲は照明に照らされながら、カメラの前に立っていた。


「みなさんこんにちは。私は今、このショッピングモールで有名なとんかつ屋さんの前に来ています」


声は明るく、表情も完璧。

 しかし心の中では――


(早く終わらせて釣りしたい……)


完全に釣りモードだった。


「ぼく、迷子になっちゃったあ……」


突然、撮影現場に小さな乱入者が入り込んできた。


美咲は一瞬だけ子どもを見るが、

表情を崩さず、カメラに向き直ろうとした。


(いやいや、今は仕事中……!)


スタッフが慌てて子どもを遠ざけようとする。


「お父さんとお母さんを探してよおばちゃん!」


「おばちゃんって!」


美咲は素に戻った。


「ちょっとぼく、おばちゃんはないよ。

 せめておねえちゃんって呼んでよ」


現場は騒然となったが、撮影は続行されていた。


美咲は子どもを落ち着かせようと、そっと抱き上げた。


「よしよし……泣かないで。

 紺、この子のお父さんとお母さんを探してあげて」


「任せるのじゃ!」


紺は即座に走り出した。


「静香もお願い」


静香はいつの間にかヘッドセットとインカムを装着していた。


「了解。半径五キロ圏内にフィールド展開。

 誰も入れない、逃がさない」


宇宙人勢力はすでに現場一帯を監視していた。

穏健派は容認、強硬派は黙認――その背景には、

美咲たちが“緊張緩和”の役割を果たしているという信頼があった。


「ろぼみも行くの……! エージェントモードなの……!」


ろぼみは真剣な顔つきで捜索を開始した。


ほどなくして、紺と静香とろぼみが、迷子の父と母を連れて戻ってきた。


「お父さん! お母さん!」


男の子は美咲の腕から飛び降り、両親に抱きついた。


カメラはその一部始終を記録していた。


「おい、今のちゃんと撮れてるよな」

 ディレクターがカメラマンに確認する。


「バッチリです」


◆ 撮影終了の宣言

「よっしとディレクターさん、撮影再開しよう!」


美咲はやる気満々だったが――


「美咲ちゃん、今日はもう終わりだ」


「え?」


「おかげでいいものが撮れた」


「いいの? ディレクターに二言はないわよ」


「うん。食レポは日を改めてまた撮るよ」


「やったあ!

 それじゃあみんな、釣りいくよ!」


美咲はスタッフよりも早く撤収を開始した。一行は速やかに退散する。



残されたディレクターは、

美咲が去っていく背中を見つめながらつぶやいた。


「あんな天才がいたなんて……」


彼の脳内では、美咲を中心にした新たな企画が構築され始めていた。



ショッピングモールの屋上。

静香の母――穏健派の代表者は、現場を俯瞰できる位置から状況を見守っていた。


「迷子の子ども……人間社会ではよくある事象ですね」


隣には強硬派の監視担当が立っていた。


「本来なら介入すべきではない。だが今回は黙認だ。彼らが現場にいる」


「彼らは緊張緩和の役割を果たす。

 暴走も露見も起こさない。

 美咲という中心人物がいる限り、島は安定する」


穏健派の母はモニターに映る美咲を見つめた。


迷子を抱きしめ、泣き止ませ、

紺・静香・ろぼみを自然に動かし、

現場を掌握する少女。


「……人間社会は複雑だな」

 強硬派がぽつりと言った。


「ええ。だからこそ、あの少女が必要なのです」


穏健派の母は静かに答えた。


「だって、静香の選んだお友達ですもの」


その声には、母としての誇りと、宇宙人勢力の代表としての確信が混ざっていた。


娘は――

本当に素晴らしい友人に恵まれたのだと、母は思うのだった。



美咲のタレント活動は、

島の共同体を支える新たな柱となりつつあった。


その中心には、

美咲の天然のカリスマ性と、

それを支える島の仲間たち、

そして静香の母が見守る宇宙人勢力の政治判断があった。


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