第20話 かつぐ神輿はぱーがいい
ファミレスのテーブル席に、島の主要メンバーが勢ぞろいしていた。
先日放送された美咲のテレビ出演――釣り番組としては成立していない内容だったが、
美咲のカルト的なカリスマ性が視聴者の心をつかみ、大反響を呼んでいた。
「お姉さまなら当然の結果なのじゃ」
紺は胸を張っている。
「いや〜、あたしもびっくりしたよ。
出演料、10万円ももらっちゃった!」
美咲はテーブルに身を乗り出し、目を輝かせた。
「紺、あとで釣具屋に行くわよ。
これで新しいリール買おうっと。
リール買ってもおつりがくるだろうし、竿も買っちゃおうかな」
「お姉さまの買い物に付き合えるなんて……光栄なのじゃ!」
紺は完全に浮かれていた。
美咲はそのまま紺を連れて、釣具屋へ向かっていった。
◆
美咲と紺が去ったあと、テーブルには静香、メアリ、ろぼみ、そしてぼくが残った。
「さて……島の運営について」
静香がタブレットを開く。
「コミュニティが拡大したことで、維持費が増えている。
動物勢力の食費、設備の老朽化、外界との通信費……」
静香は淡々と数字を羅列した。
「ほう……そんなにかかってるのか」
ぼくは天井を見て応えた。
「みんなでアルバイトするっていうのはどうかな?」
ぼくが提案すると、メアリがぱっと顔を上げた。
「わたし、アルバイトやってみたい!」
しかし静香は首を横に振る。
「わたしたちには純粋な人間が少ない。外界での労働は困難」
「……まあ、そうだよな」
ぼくは肩を落とした。
◆
後日、静香の端末が通知音を鳴らした。
「美咲に、テレビ局から新しいオファーが来ている。食レポ番組への出演依頼」
「食レポ? 釣りと関係ないじゃん」
美咲は乗り気ではなかった。
しかしメアリが思い出したように言う。
「そういえば……その店の近くで魚影を見たって、ピーターが言ってたよ」
「えっ、ほんと?」
美咲の目が一瞬で変わる。
「釣り船に乗せてもらえるなら……OKしちゃおっかなあ」
完全に釣り目的だった。
「でも食レポって何すればいいの?
食べて『うまっ!』って言えばいいのかな?」
「比喩表現が必要」
静香が即答する。
「お姉さまなら大丈夫じゃ!」
紺がどこからともなく戻ってきて胸を張った。
◆
美咲のタレント活動を島の資金源にする――
その案に、全員が賛同した。
「わたし、働くってどういうことか知りたいの。
だから……マネージャーやってみたい!」
メアリが手を挙げる。
「財務は私が担当したい」
静香が淡々と告げる。
「じゃあぼくは……裏方の総責任者ってことで」
ぼくは苦笑しながら引き受けた。
「わしは広報じゃ! 家臣団も総動員するのじゃ!」
紺はやる気満々だ。
◆
翌日。近所の公園
静香は母にこの計画を報告した。
「お母さんに話した。応援してくれるって」
穏健派は美咲の活動に賛同し、島の新しい体制を支援することになった。
ぼくは言った。
「みんなで美咲のタレント活動を応援する……それで行こう」
メアリは感動したように言う。
「美咲ちゃん……すごい……」
ぼくは照れ隠しのつもりで言った。
「かつぐ神輿はぱーがいい……」
「ちょっとあんた!
パーいいって何それ、どういう意味よ?」
美咲がむっとする。
「どういう意味なのじゃ……!」
紺も眉根を上げる。
ぼくは笑って答えた。
「つまりそれは……美咲は島の宝だということだよ」
美咲は一瞬だけ照れたように見えた。
「……もう、そういうこと言うんだから。
そんなの……照れるじゃない……」
美咲がデレて一件落着。




