第15話 Message In A Bottle(後編)
翌日。ぼくらはメアリの歓迎キャンプを開くことにした。
島の夕暮れ
紺の館は完成しつつあり、
静香のキッチンからは油の香りが漂い、
ろぼみのアンテナが青く光っている。
火が灯り、島の夜が赤く染まる。
メアリ
「ピーター……いつか帰ってきてくれるかな」
「……ピーターは自由が好きだ。だが、メアリのことも忘れちゃいない」
紺
「主様、ピーターは必ず戻るのじゃ」
静香
「帰る」
ろぼみ
「あたい、ピーターの電波を追跡するの……!」
美咲
「メアリ、あたしたちがついてるからね!」
メアリ
「……ありがとう」
火の粉が夜空に舞い上がり、島の風が静かに吹いた。
翌日。
メアリが島に正式に加わったので、ぼくらは紺の館の前に集まっていた。
紺
「メアリよ、まずは自己紹介なのじゃ。この島のことを知っておく必要がある」
メアリ
「うん、よろしくお願いします!」
美咲
「じゃああたしから!美咲!釣りが好き!」
ぼく
「なるほど……、美咲は普通の中学生だな」
美咲
「普通だよ!」
紺
「では次はわしじゃ。わしは島の領主なのじゃ」
メアリ
「領主!?えっ、島ってそういう制度なの!?」
美咲
「領主だったの!?いつから!?」
紺
「昔からじゃ。周知の事実なのじゃ」
美咲
「周知じゃないよ!!」
静香
「わたしは宇宙人勢力の観測担当。裏切っている」
メアリ
「宇宙人!?観測!?裏切り!?えっ……えっ……えっ……!」
美咲
「観測ってそういう意味だったの!?静香って時々“観測だ”とか言うから、
ただの変な子だと思ってたよ!!」
静香
「変ではない。観測は任務」
ぼく
「なるほど……美咲だけ知らなかったってことか」
美咲
「なんであたしだけ知らないの!!」
ろぼみ
「あたい、宇宙人勢力のスパイだったの……でも裏切ってるの……!」
メアリ
「スパイ!?裏切り!?なんで裏切ってるの!?」
ろぼみ
「主様が好きだからなの……!」
紺
「ろぼみは昔から裏切っておるぞ」
美咲
「昔から裏切ってるって何!?なんであたしだけ知らないの!!」
ぼく
「ぼくは……脳にちょいと細工があるらしい。だから江戸っ子語りが自然に出るって寸法だ」
メアリ
「脳に細工!?そんなことあるの!?」
美咲
「細工だったの!?ただの変な口調だと思ってたよ!!」
静香
「異常。だが問題ない」
ろぼみ
「あたい、主様の脳波を解析したいの……!」
メアリ
「えっと……わたしはメアリ。ピーターの飼い主で……普通の女の子です」
ぼく
「なるほど……メアリも普通ってことだな」
美咲
「普通でいいよ!!普通が一番だよ!!」
紺
「普通は貴重なのじゃ」
静香
「普通、観測対象」
ろぼみ
「普通、好きなの……!」
メアリ
「みんな……すごいね……わたし、ついていけるかな……」
美咲
「……あたしだけ知らないこと多すぎるよ!!」
紺
「周知の事実なのじゃ」
美咲
「周知じゃないよ!!」
こうして、メアリは島の“異常な共同体”の全貌を知ることになった。
そして美咲は、自分だけが“本当に普通の中学生”であることを悟った。
翌朝。
学校へ向かう道を、三人の少女が並んで歩いていた。
その姿は、まるで本当の三姉妹のようだった。
三人の笑い声が、朝の通学路に軽やかに響いた。
メアリがぼくらの仲間に加わったことは、誰の目にも明らかだった。




