第13話 孤島を私物化しました
ぼくは朝、いつもより早く目が覚めた。
「……たまには散歩でもしてみるか」
公園の前を通ると、動物たちが妙に慌ただしく動いている。
犬
「急げ急げ!島に行くんだ!」
猫
「美咲様が朝の大物を狙うらしいぞ!」
カラス
「紺様のご出陣だ!」
ぼく
「ご熱心に……みんなは島か」
動物たちはゲート前に殺到していた。
ぼくは割り込んで入ろうとする動物たちを軽く制し、ゲートを踏んだ。
■
瞬間移動の光が消えると、そこは朝焼けの海岸。
そして──
朝焼けの中に立つ4人の乙女たち。
その姿には、得体の知れない美しさがあった。
美咲と紺の周りには、
無数の動物たちが見守るように取り囲んでいる。
「おはよう、美咲」
美咲
「しーーっ!大きな声出さないでよ、魚が逃げちゃうじゃない!」
動物たち
「しーーーっ!!」
ぼく
「なるほど……こりゃあ壮観だな」
美咲
「おはよう」
ぼく
「朝早くからがんばるじゃないか」
美咲
「朝は大きいのが来るの。
──来たっ!」
「おっと、そいつはゴンズイだ。毒があるから触っちゃいけないよ」
美咲
「どうしよう……!」
ろぼみ
「あたいに任せて!機械に毒は効かないの……!」
ろぼみは器用に針を外し、魚を海へ放り込んだ。
「ほう、たいしたもんだ……このすっとこどっこい、手際が良すぎるぜ」
美咲
「もうちょっとして帰るから、先に学校行ってて」
「そうかい。それじゃまた後で」
■昼休み。
美咲は女子生徒たちに釣りの魅力を熱弁していた。
美咲
「朝はね、大きいのが来るの!
夕暮れも来るの!
キスはね、砂地をこう泳ぐの!」
女子生徒
「すごい……美咲ちゃん詳しい……」
紺
「主様、お姉さまは釣りの名人になりつつあるのじゃ」
静香
「熱中してる」
「なるほど……釣りが美咲を変えたって寸法か」
■ 放課後
美咲
「急いで帰らないと夕暮れに間に合わない!」
「夕暮れも大きいのが来るんだから!」
紺
「お姉さまは本気じゃ」
美咲
「紺、あんたクーラーボックス持ってきて!」
「あたしは速攻でえさ買ってくるから!」
「……なるほど……こりゃあもう言葉も出ない」
■ 夕暮れの孤島。
美咲は釣り場を区画整理し、
紺は動物たちを従えて“館”を建て始め、
静香は岩場に簡易キッチンを作り、
ろぼみは島の中央に奇妙なアンテナを立てていた。
「なるほど……この島はもう完全にオレたちの拠点じゃないか」
タヌキ
「紺様の島です!」
カラス
「情報発信基地です!」
ウサギ
「草むしり完了です!」
「いやいや、すっとこどっこい、勝手に私物化してるだけだろう……まあ、悪くないが」
■ 夕暮れの海。
美咲の竿がしなる。
紺の館が形になり始める。
静香のキッチンからは油の香りが漂う。
ろぼみのアンテナが青く光る。
「なるほど……こりゃあ、しばらくは平和だな」
そのとき──
波打ち際に、コトン、と何かが転がった。
美咲
「……瓶?」
紺
「主様、これは……海からの贈り物なのじゃ」
静香
「メッセージ……」
ろぼみ
「あたい、開けるの……!」
「このすっとこどっこい、割るんじゃない。
……どれ、ぼくが読むか」
瓶の中には、小さな紙切れが一枚だけ入っていた。
「……こりゃあ、ちょっとばかり面倒なことになりそうだ」
美咲
「えっ、何て書いてあるの?」
「うーむ……」
波の音だけが静かに響いていた。




