第12話 新鮮なキスのフライが食べたい
海外旅行はハズレ、騙されたのだと思い込んでいた。
しかし、あの孤島でのキャンプは、美咲たちの心に深く刻まれていた。
はずれどころか、実は大当たりだったのだ。
孤島での経験は、ぼくらに大きな飛躍を与えることになるのだろうか。
美咲
「また行きたい……」
「釣りしたい……」
「キャンプしたい……」
静香
「わかる。あの島、妙に落ち着く」
ろぼみ
「あたい、島の電波が忘れられないの……!」
紺
「主様、わしもまた行きたいのじゃ」
「気持ちはわかるよ……アクセスがなあ」
■
公園では、紺が動物たちに囲まれていた。
犬
「紺様〜!島に行ってみたい!」
猫
「紺様〜!海の魚食べたい!」
カラス
「紺様〜!いっそのこと島に移住したい!」
紺
「主様よ、みんなまたあの孤島に行きたいそうじゃ」
「そりゃ楽しかったしな……」
紺
「それに……わしも新鮮なキスのフライを食べてみたいのじゃ」
「さぞうまかろうなあ……」
「キスのフライか……うん、たしかにありだ」
■
「しかし、アクセスがなあ」
「毎回チャーター機を借りるのは無理だろうし」
静香
「方法ならある」
「おっ……あるのか?」
静香
「瞬間移動装置でここと孤島をつなぐ」
「そんな芸当ができるのかい」
静香
「できる。ろぼみが解析済み」
ろぼみ
「あたい、宇宙人の瞬間移動装置を分解したの……!」
「公園のトイレと孤島をつなげられるの……!」
「そうかい……しかし」
「そんなことしたら怒られるだろう!?」
静香
「ばれたら、100パー怒られる」
「そりゃそうだ!!」
静香
「でも、やる価値はある」
ろぼみ
「あたい、やるの……!」
「やめた方が無難なんだが……」
■
深夜。公園のトイレに、静香とろぼみが現れた。
静香
「装置は?」
ろぼみ
「あたい、持ってきたの……!」
静香
「じゃあ、接続する」
ろぼみ
「孤島の倉庫横にリンクを貼るの……!」
静香
「よし、起動」
装置が青白く光り、公園のトイレの一室が孤島へのゲートになった。
静香
「できた」
ろぼみ
「あたい、やったの……!」
■
翌朝。ぼくたちは公園に集合していた。
「……で、これが孤島につながってるって寸法かい?」
静香
「うん。でも、誰でも使えるわけじゃない」
「どういうこった?」
静香
「起動条件がある」
ろぼみ
「あたい、宇宙人の装置を解析したの……!」
「起動には“特異な所作”が必要なの……!」
美咲
「特異な所作って……何?」
静香
「3回回って、わん」
「3回回ってわんだと!?江戸っ子のぼくにそんな真似させる気かい!」
美咲
「えぇぇぇぇぇ江戸っ子……?」
静香
「最後に、ドアを三回ノックして“孤島へ参ります”と言う」
「恥ずかしすぎるだろうよ!!」
紺
「主様、これは……神聖な祈りなのじゃ」
ぼく
「祈りねぇ!?」
■
紺は迷いなく正座した。
紺
「(3回回って)わん」
「キスのフライが食べたいのじゃ」
三回ノック。
紺
「孤島へ参りまする」
装置
──ピコンッ──
美咲
「起動した!!」
ろぼみ
「あたい、成功なの……!」
静香
「これでいつでも行ける」
「いや、行けるだろうが……意味不明だよな……」
「変人認定される……」
美咲
「じゃあ、わたしも……」
美咲
「(3回回って)わん」
三回ノック。
美咲
「孤島へ参ります!」
装置
──ピコンッ──
美咲
「やった!!」
「こりゃあおもしろい……」
「……やるしかないか」
「(3回回って)わん」
三回ノックして。
「孤島へ参ります……」
装置
──ピコンッ──
紺
「主様、見事じゃ!」
美咲
「かわいかったよ!」
静香
「似合ってた」
ろぼみ
「あたい、録画したの……!」
ぼく
「しょうがねえな……」
■
静香
「じゃ、行こうか」
紺
「主様、キスのフライを食べに行くのじゃ!」
美咲
「釣りしよ!」
ろぼみ
「あたい、島の電波を最適化するの……!」
ぼく
「……ようし、行くか」
みんな
「おお!!」
こうして、
公園のトイレから孤島へ向かう“異常な日常”が始まった。




