第11話 行き先不明の海外旅行
出発当日、空港にて
優勝賞品の「行き先不明の海外旅行団体招待券」。
その怪しさを抱えたまま、ぼくたちは空港に集まっていた。
美咲
「海外って言っても……外国じゃないよね?パスポートの案内なかったし」
静香
「うん、普通じゃない」
紺
「霊的エネルギーが……空港の奥から漂っておるの……」
ろぼみ
「あたい、電波の波形が……なんか変なの……!」
「……嫌な予感しかしない」
作家先生はすでに空港のロビーで双眼鏡を構えていた。何を監視しているのかはわからない。
■
場内アナウンス
「優勝者・美咲様とご同行の皆様、チャーター機搭乗口までお越しください」
美咲
「チャーター機!?そんな豪華なの……?」
静香
「豪華というより……怪しい」
紺
「主様、これは……何かが始まるの……」
「うーむ……」
■
搭乗口に着くと、係員が無表情で言った。
係員
「こちらの目隠しを着用していただきます」
「えっ……なんで?」
係員
「規定です」
静香
「規定って何……?」
ろぼみ
「あたい、誘拐の匂いがするの……!」
美咲
「えぇぇぇぇぇ……?」
紺
「主様、これは……儀式なのかもしれぬ」
ぼく
「儀式じゃないと思う……」
結局、全員が目隠しをつけたまま待機することになった。
■
タラップを登る音が、妙に華奢で頼りない。
「これ……本当に飛ぶのか……?」
機内に入ると、さらに異様だった。
パイロット以外は誰もいない
CAはモニター越しの自動音声
荷物棚は空
座席は妙に新しい
窓は曇りガラスで外が見えない
ろぼみ
「あたい、これは……無人機の匂いがするの……!」
紺
「主様、これは……霊的に安全じゃ」
「霊的に安全って……」
美咲
「でも……なんかワクワクするね!」
静香
「美咲、強い……」
■ 目隠し解除
離陸後しばらくして、アナウンスが流れた。
自動音声
「目隠しを外していただいて構いません」
「やっとか……」
目隠しを外すと、みんなの顔はなぜか期待で明るかった。
美咲
「海外旅行って感じするね!」
紺
「わしは初めての空の旅じゃ」
ろぼみ
「あたい、飛行機の電波に侵入できるの……!」
静香
「やめて」
「……なんでみんなそんなに楽しそうなんだ」
■
到着間近、窓の曇りが晴れ、外が見えるようになった。
「……あれ?」
そこには──
まっすぐに一本の滑走路が伸びるだけの、完全な無人島 があった。
美咲
「えっ……島……?」
紺
「主様、これは……孤島じゃ」
静香
「やっぱり怪しかった」
ろぼみ
「あたい、だまされたの……!」
「……だまされた」
■
着陸後、案内されたのは脇にひっそりと立つ倉庫のような建物。
中には──
キャンプ道具一式
釣り具
食材
調理器具
簡易シャワー
発電機
美咲
「これ……キャンプセット?」
静香
「キャンプしろってこと」
紺
「主様、これは……修行なのかもしれぬ」
ろぼみ
「あたい、キャンプは初めてなの……!」
「……サバイバル生活が始まるのか」
外に出ると、パイロットは姿をくらましていた。
「おい」
■ みんなでキャンプ(※作家先生の期待するようなことは起きない)
「とりあえずテント張ろう」
美咲
「任せて!」
紺
「わしは薪を集めるのじゃ」
ろぼみ
「あたい、ペグを打つの……!」
静香
「料理は任せて」
みんなで手分けしてテントを張り、日中は海岸で釣りをすることにした。
■
「じゃあ投げ釣りを教えるよ」
みんな
「おお〜〜!」
「まずリールのガードを解除して──
竿のしなりとタイミングを合わせて──
投げる瞬間に糸から手を放す──
着水したら沈むまで待って──
魚信が来たら合わせて──
巻く」
美咲
「なるほど〜!」
紺
「主様、わしもできるのじゃ!」
ろぼみ
「あたい、魚を電波で探知できるの……!」
静香
「それはズル」
みんなは釣りに興じて大盛り上がりだった。
■ 夕飯はカレー
静香
「カレー作ったよ」
美咲
「おいしそう〜!」
紺
「主様、これは……至高の味じゃ」
ろぼみ
「あたい、カレーは好きなの……!」
■
日が暮れ、暗くなると、遠くに明かりが見えた。
「誰かいる……?」
カレーを持って明かりの方向へ行くと──
そこにはパイロットがいて、テレビのゴルフ中継を見ていた。
「テレビ映るのかよ……」
パイロット
「まあね」
ぼく
「明日帰るからよろしくお願いします」
パイロット
「了解」
■
美咲
「花火しよ!」
紺
「わしは踊るのじゃ!」
ろぼみ
「あたい、咆哮するの……!」
静香
「やめて」
しかし紺とろぼみは、いつの日かの相撲と踊りと咆哮を再現した。
その瞬間──
島にいる生き物はすべて紺に制圧された。
紺
「主様、わしは……この島の支配者になったのじゃ」
「ずいぶんこんまい話だ。ローカルすぎる……」
■
翌日、滑走路には島の多くの動物たちが集まっていた。
紺
「みなの者、また会おうぞ」
動物たち
「紺様〜〜!!」
「何を話してるんだ……?」
静香
「わからない……」
ろぼみ
「あたい、翻訳できないの……!」
■
週明け。教室に入ると──
美咲
「ただいま〜!」
紺
「主様、帰ってきたのじゃ!」
「……本当に海外旅行だったのか?」
静香
「どう見ても無人島キャンプ」
ろぼみ
「あたい、また行きたいの……!」
美咲と紺の二人が、季節外れに日焼けした肌を
何とも自由な色で演出していた。




