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五話 黒い渦の正体

テレビでは、東京で発生した黒い渦が映され、現場の中継が入っていた。

二子橋の中央――そこだけ“世界が欠けている”かのように揺らめいている。


渦の縁は黒い霧のように波打ち、中心は底の見えない暗闇へと続いていた。


(……東京にもあるのか)


宮本はベランダから戻り、テレビの映像に目を凝らした。

渦の周囲にはすでに野次馬が集まり、パトカーが次々と到着している。


「危険です!近づかないでください!」

「ロープを張れ!立入禁止だ!」


警察官たちが慌ただしく動き、陸橋の両端に黄色いロープを張り始めた。


だが――遅かった。


「おい!あれ……人が出てきたぞ!」


野次馬の叫びに、宮本は思わず身を乗り出した。


黒い渦の中から、三人の若者がよろめきながら姿を現した。

服は泥だらけで、息は荒い。

そのうち一人は足を引きずっていた。


そして三人とも――手に“野菜”を持っていた。


「おい……なんだあれ」

「キャベツ?いや、なんか形が違うぞ……」


ざわめきが広がる。


大学生の一人が、息を切らしながら叫んだ。


「マジで……マジでやべぇって……!」

「中、洞窟みたいになってて……モンスター出たんだよ!」


「おい、やめろ!勝手に喋るな!」

警察官が駆け寄り、三人を保護しようとする。


だが、その瞬間――


「カメラ回ってます!現場入りました!」


テレビ局のクルーが走り込んできた。

アナウンサーがマイクを握り、渦と大学生たちの間に割り込む。


「こちら現場です!黒い渦から、先ほど若い男性三名が出てきました!

 彼らは何かを手に持っています……野菜でしょうか?

 いったい何が――」


そのとき、大学生の一人が警察の制止を振り切り、カメラに向かって叫んだ。



「俺たち、加護をもらったんだよ!!」


アナウンサーが目を見開く。


「加護……ですか?」


「そう!“加護:筋力強化(小)”って出た!

 で、洞窟の中でモンスター倒したら……これがドロップしたんだよ!」


彼は手に持った奇妙な野菜を掲げた。

キャベツに似ているが、葉が青白く光っている。


「これ、食えるのか分かんねぇけど……

 マジでゲームみたいに“ドロップ”したんだって!」


もう一人の大学生も叫ぶ。


「俺は“俊敏強化”って加護が出た!

 でも、こいつは……」


足を引きずった青年が苦笑した。


「俺は……“加護なし”だった。

 だから逃げ遅れて……足を、やられた」


アナウンサーが震える声で問いかける。


「モ、モンスターとは……どういう……?」


「黒い狼みたいなやつ!

 でかくて、速くて……

 でも、倒したら光になって消えて……

 そのあとに、これが落ちてた!」


青年は再び野菜を掲げた。


警察官が慌てて三人を取り押さえようとする。


「おい!やめろ!勝手に喋るな!」

「医療機関に搬送する!道を開けろ!」


だが、大学生たちは必死に叫び続けた。


「加護は本物だ!

 洞窟はダンジョンみたいになってる!

 モンスター倒すとアイテムが落ちるんだよ!!」


その声は、テレビ中継を通じて全国に流れた。



宮本のスマホが震え続ける。

SNSは瞬く間に“資源洞窟”の話題で埋め尽くされた。


《マジでダンジョンじゃん》

《加護って本当にあるのかよ》

《野菜ドロップってどういう世界線?》

《加護なしで入るの危険すぎる》

《政府どうすんのこれ》

《全国に渦が出てるって噂マジ?》


(……全国に?)


テレビには“全国各地で黒い渦が発生”という速報テロップが流れていた。



画面が切り替わり、別の現場が映し出された。

そこでは、自衛隊が黒い渦の前で展開している。


《こちら福岡市の現場です!

 渦の内部から“巨大な影”が確認されたとの情報が――》


突然、渦の中から“何か”が飛び出した。


黒い毛並み、鋭い牙、異様に長い前脚。


(……狼?いや、違う)


大学生が言っていた“黒い狼”に酷似していた。


自衛隊員が叫ぶ。


「撃て!!」


銃声が響き、黒い獣は倒れた。

だが、倒れた瞬間――光になって消えた。


そして、地面に“何か”が落ちた。


《い、今……光になって……何かが……落ちました!

 これは……肉?肉の塊でしょうか!?》


アナウンサーの声が震えている。


(……本当に、ゲームみたいだ)


心臓が跳ねた。



テレビ局の専門家が緊急出演し、震える声で解説を始めた。


「これは……“資源洞窟”と呼ぶべき現象でしょう。

 内部は異空間で、モンスターが存在し……

 倒すと資源が得られる……

 まるでRPGのダンジョンのような……」


(未来記述の女が言っていた“均される”って……

 こういうことか?)


世界が均される。

資源が落ちる洞窟。

加護。

モンスター。


(……世界が、ゲームのようなルールに書き換えられている?)



昼になり、宮本は手早く昼食を済ませ、情報収集を続けた。


テレビで追加の速報が流れる。


《国際線の旅客機が、出発した空港に“無人”で戻ってきました。

 客室は荒れていましたが、争った形跡はありません。

 航空会社によると、乗客・乗員全員が“光に包まれ”、

 それぞれ自宅に転送されたと報告しています》


《国内線はまだ飛行中ですが、一部の乗客が光に包まれ消失したとの情報もあります》


《世界周遊クルーズ船も、出港した港に無人で帰還しました。

 乗客から旅行会社に“自宅に転送された”との連絡が相次いでいます》


(……世界規模で“所属”が適用されている)


そのとき、タブレットに新着アラートが鳴った。


アメリカの“未来記述”持ちが動画を投稿していた。

タイトルは――『twice white』


胸の奥で、また“カチリ”と音がした気がした。


視界の端で、Fate Enter が揺らめく。


【Fate Enter:入力待機中】

【対象:任意】

【効果:運命の一部を書き換える】

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