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【タイトル変更】世界が分断されちゃって日本の生存確率低下中、西日本は俺達に任せとけ  作者: かぶんす


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二十六話 九州ダンジョン巡り開始 ――悪戯の標的

夜の関門海峡を渡り、車が九州側へ滑り込んだ瞬間、孝治は胸の奥に張りつめていた緊張が、少しだけほどけるのを感じた。


「……大阪に私たちが居るのは予想できた。その日のうちに九州までは予想できていないでしょうね」


孝治が《地図(極)》を確認しながら頷く。


「そうだな、今見ても大阪・兵庫・京都は真っ赤だ、九州は敵対反応がほとんどないな。どこかで車を借り換える。すぐに美佳と俺を紐づけて九州に来ていることがばれるとは思わないが、念のためな」


後部座席では、乙部美佳が窓の外を見つめていた。

九州の山々は深い緑に覆われ、大阪とはまったく違う静けさを湛えている。


「……ここ、本当に日本なんですね……大阪とは空気が違う気がします……」


「だからこそ、潜伏には最適だ」


孝治は減速しながら、門司港で高速道路を下りた。


「和田さん免許持ってました?車借りるのに名前お借りしたいんですが」


「大丈夫よ。普段から8人乗り運転してるからここからは運転変わってあげる」


コインパーキングに車を止めレンタカー屋に向かう。美穂が免許証を取り出しながら言った。


「昨日の脱出劇から、年甲斐もなくワクワクしちゃってるわ」


「そうなの?私も孝治さんも叔母さんたちを巻き込んで申し訳なく思ってるのに」


レンタカーを借り美穂がハンドルを握る。


「宮本さん、まずはどこに行くの?」


「部埼灯台というところに小規模ダンジョンがあるみたいなので、そこから回ろうと思います。そこから時計周りに九州のダンジョンを巡りましょう」


「了解よ。車出すわね」


昨日の雨が嘘がったように青い海を眺めながらダンジョンに向かった。


「叔母さんや玲子さんに丁寧すぎて距離感じるわ。巻き込んで言うのもおかしいけど、ここまで連れてきたら一蓮托生よ。普通に話しましょ」


「私はいいわ、玲子さんもいいわね?和田も乙部も二人いるからややこしいのよ」


「今後はみんな下の名前ね。私は叔母さんは叔母さんで、美佳も玲子さんはお母さんだと思うけど」


政府からの追跡の手から遠ざかったからか、車内は少しリラックスした感じになっていた。

目的のダンジョンが近づき車を止めてもらい周りを確認する。


(この周辺に追手はいないみたいだ。だが、十人ほど渦を遠巻きに見ている。目の前で運命記入使うのはリスクがあるか)


「佐那、ここから渦の情報出せるか?」


「いつもよりだいぶ遠いけどやってみる・・・・・・見えた。加護(大)はないけど中ならいろいろある。今書き出すわね。後、安全地帯あるみたい」


「佐那さん、なんで加護のことがわかるんですか?」


(当然の疑問だな。でも説明は後回しだ)


「今日の予定が決まった。このダンジョンで一泊する。安全地帯まで着いたら、九州で俺と佐那がしようとしてることも説明するよ」


書き終わった佐那からリストをもらう。


「毒耐性・属性強化・疾病耐性・汚染耐性 近畿だと出にくかった耐性系の中加護が多いな。俺と佐那は耐性系中を 美佳たちには動けるようになってもらう必要ががあるから、身体強化・身体能力向上・思考加速をまずは順番にとろう」


「ここからできそう?」


孝治は自身を対象に権能の発動を試した。自身に毒耐性を選ぶ。


「行けたな。佐那、順番に手を握らせてくれ」


孝治に差し出された手を佐那が握る。


「佐那も毒耐性にした」


「美佳、次はあなたが手を握って」


美佳、美穂、玲子と手をつなぎ三人に身体能力向上を選んだ。


「佐那、これは意味があることなのよね?」


「ダンジョンに入ったらわかるわ」


俺と佐那の亜空間にあった武器や防具を人数分取り出す。自分だけ車を降りて車の陰に隠れて着替えた。

渦の前に居た数名が0時間近に到着したこちらを警戒してみている。ドアが開き下りてくる。美佳だけドアから顔を出す。


「この衣装恥ずかしすぎますよ。私も佐那さんたちみたいに露出少ないのありませんか?」


「女性向けの装備は佐那が全部持ってるから、佐那に聞いてくれ」


佐那がニヤッと笑いながら言った。


「美佳、恥ずかしがってないで早く出てきなさい」


街灯で照らされた美佳が必死に手で隠しながら車を降りてきた。


(目のやり場に困るが・・・・・・こいつかなり着痩せするんだな)


すぐに視線を外し佐那に聞いた。


「いつこんなの拾ってたんだ」


「滋賀の双頭竜のドロップだったわ。ちゃんと見てあげた?かわいい服を着てる女性は褒めてあげなきゃ」


今は渦からは見えない場所だが、この格好で渦に入るのは注目されそうだ。


「ああ、うん。かわいいし、似合ってるよ。ちょっと直視できないけど」


顔真っ赤にしながら美佳がしゃがみ込む。満足したのか佐那がマントを亜空間から出して渡し、耳元で何か囁いていた。そんな様子を見ながら美穂も玲子も「さすがにあれは着れないわね」と話していた。


「ダンジョンにある安全地帯はモンスターが侵入できず中に居れば認識されない。だから外で政府の追跡を気にしながらホテルに泊まるより安全だ」


「話逸らすの下手ね」


佐那が微笑む。美穂が近づいてきて肩に手を置いて言った。


「昨日からキリっとしたところしか見てなかったけど、孝治は可愛いところもあるんだな」


「茶化さないでくださいよ!ほら、さっさと出発して安全地帯まで行きますよ!」


さっさと渦に向かって歩き出した。後ろを歩く3人が佐那にいろいろ聞いていたが聞こえていないふりをした。

渦の前に男女が4人、鉄パイプや野球のバットを持って入るか迷っていた。横を通り抜けて佐那を先頭に女性陣を先に入らせた。

人数が減って警戒心が緩んだのか高校生くらいの女性が声をかけてきた。


「すみません!ダンジョンに入りたいんですが、こんな準備で入っても大丈夫でしょうか?」


振り返って改めて4人を見た。手に持ったもの以外はどこでも手に入るジャージだ。


「加護をとるだけなら今入ってすぐ出れば問題ない、入口付近のモンスターは既に倒しているはずだ。もし、一匹でも倒そうと思うなら、討伐に有用な加護を得た場合だけチャレンジするのをお勧めする」


簡単なアドバイスを送り渦へ向かう。

渦を抜けると、内部は赤黒い岩肌に覆われた洞窟だった。


「……暑いな……」


つぶやくと同時の毒耐性(中)を取得したアナウンスが流れる。

少し先では美佳が額の汗を拭っていた。


「ちょっと遅かったわね。みんな指定の加護もらえたわ」


「了解。すれ違った4人組に声をかけられてちょっとアドバイスをね」


孝治は周囲を見渡し、地図(極)で敵の位置を確認した。


「前方に三体。火蜥蜴サラマンダーだな」


「美佳さん、後ろに下がって」


佐那が前に出る。


「《水扇》」


青い水の刃が走り、火蜥蜴たちは蒸気を上げて消えた。


「……すごい……」


美佳が呆然と呟く。


「佐那さん、強すぎません……?」


「慣れよ、慣れ」


孝治が笑う。


「美佳もすぐこうなる」


「えっ……無理です……!」


「無理じゃない。適応値600は、戦闘系も補助系も伸ばせる」


美佳は少しだけ顔を上げた。


「……頑張ります」


洞窟の奥で、一体の火蜥蜴が光となって消え、オーブを落とした。


佐那が虚実看破で確認する。


「……一階で出たわね。中身は美容ポーション……」


美佳は驚いた顔でオーブを見つめた。


「そういうのも出るんだ……?」


「みたいだな。佐那、知ってただろ」


佐那が笑みを浮かべて言った。


「先を急ぎましょ」


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