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【タイトル変更】世界が分断されちゃって日本の生存確率低下中、西日本は俺達に任せとけ  作者: かぶんす


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十九話 仮面の攻略者 ――20階層を駆け抜ける影

土曜日の朝。

大阪市内は加護持ちの小競り合いが増え、ダンジョン付近に警察・自衛隊が多く派遣されていた。


「……大阪で動くのは、もう無理ね」


「だから今日は、琵琶湖の大型ダンジョンだ」


二人は亜空間に食料・寝袋・キャンプ道具を詰め込み、

朝の電車に乗り込んだ。



昼過ぎ。

山道を抜けると、巨大な黒い渦が静かに脈動していた。


「……誰もいない。今がチャンスね」


「ああ、ここの情報を教えてくれ」


「階層20階 フィールド型 10階層が隔離空間になってて甲殻鬼将シェルジェネラルを倒さないと先に進めないわ。出てくるのは殻鬼蟹、跳猿、牙狼、鎧熊、泥鰐。ボスは風水双頭竜ツインエレメントドラゴン。」


「竜がいることはわかってたが、ここのボスもか。フェイク動画としていろいろ言われそうだな」


「瞬間移動(中)と認識阻害(中)が使えそうよ」


宮本は自身に認識阻害(中)佐那に瞬間移動(中)を設定した。


「俺が認識阻害、佐那が瞬間移動だ。それじゃあ、撮影始めよう」


二人は黒の目出し帽、ラテックス製の髑髏マスクを装着。

佐那がスマホを固定し、録画を開始する。


宮本が低い声で語り始めた。


「――俺たちはKOJIとSAYO。自称ダンジョン研究家だ。

 春分の日から6日、すでに情報として耳に入っていると思う。食料・資源、日本は大半を輸入に頼っていて備蓄が尽きてしまえばどちらも手に入らなくなる。テレビ・SNSや動画でモンスターを倒せば野菜が落ちることも知っていると思う。

俺たちはこの動画でまずは政府に提案したい。分断され、ダンジョンが発生し、加護が与えられ、モンスターを倒すことで食料が得られる。この意味を正しく理解してほしい。あの白い空間で分断され均された現実を直視してもらえないだろうか。

 この動画がフェイクではないことを後ろに見える渦、ダンジョン№28509を攻略することで証明する。そして、俺たちが知りえた情報や考察、研究家としてこのアカウントで発信する。役立ててほしい」


「挨拶はこの辺にして……行くわよ、KOJI」


「おう」


二人は渦へと飛び込んだ。


内部は巨大な洞窟。

階層は20。

アメリカの軍隊でも物量作戦を使って一階層一日、そして十階層が最前線だ。


だが――


「《身体能力向上(極)》、起動」


宮本の身体が“音を置き去りにする速度”で加速した。


ドッッッ!!


一瞬でモンスターの群れを突破。

殻鬼蟹、跳猿、牙狼――

どれも反応すらできずに吹き飛ぶ。


孝治は最短ルートで駆け抜け、佐那は後方から録画しながら追いかける。


動画には、

“人間とは思えない速度で階層を駆け抜ける二人”

が映り続ける。


走りながらも地図(極)を確認し武器防具アイテムの回収を行う。


五階層で泥鰐を倒したとき、今日初めてオーブがドロップした。


「ここで一旦前進を止めて説明する。浅い階層ではドロップしないが、少し潜り始めるとオーブがドロップする。鑑定(小)であれば中身が(中)であれば何がどれくらい入っているかわかる」


「白菜三つ、野菜複数形オーブ。開けてみて」


オーブを開けるという意思を持って割る。佐那のいう通り、中には三つ白菜が入っていた。


「こんな感じで入っている。今回は野菜複数だったが、ダンジョンによっては金属・貴金属・レアメタル・重油といった資源オーブもドロップする。参考にしてくれ」


「先に進みましょう」


そこからはノンストップで回収を行いながら草原や荒野を走り抜けた。


「ここが十階への階段だ、このダンジョンでは十階ごとに関門がある。避けては通れないボス戦だ」


軽く休憩し階段を下りた。


甲殻鬼将シェルジェネラル

巨大な甲殻類の中ボスが咆哮する。


「ここは俺が行く」


宮本は一歩踏み込み――

地面が砕けた。


「《身体強化(極)》」


筋力・反応速度・耐久が極限まで跳ね上がる。


甲殻鬼将の巨大な爪が振り下ろされるが――


「遅い」


宮本はその爪を片手で受け止め、

逆の拳で腹部を貫いた。


ドガァァァァァン!!


甲殻鬼将が壁に叩きつけられ、光となって消える。


佐那が呆れたように言う。


「……KOJI、やりすぎ」


「中ボスだし、派手に行かないとな」


動画には、

“怪物を素手で粉砕するKOJI”

が鮮明に映っていた。


中ボスを倒した後、二人は十五階まで走破し一泊することにした。


「一度ここで撮影を終わる。ではまた」


佐那が撮影終了の合図をくれたので気づかずに強張っていた肩の力を抜く。


「お疲れ様……」


「撮影を意識しながらは疲れるな」


「疲れるで済むのが可笑しい速度だったけどね」


「それもそうだな」


「宮本さん。私たち……本当に“攻略者”になったのね」


「もう後戻りはできない。でも、それでいい」


二人はしばらく黙って天井を見上げた。



交代で仮眠し軽く食事を済ませる。

スマホを確認するとダンジョンに入ってから20時間が過ぎていた。


「早速撮影を始めよう」


目出し帽・マスクを被り準備を始める。

佐那も同じように準備し、スマホをこちらに向け合図を送ってきた。


「――俺たちはKOJIとSAYO。自称ダンジョン研究家だ。

ダンジョン№28509を引き続き攻略する。追加情報を一つ。ダンジョンでドロップ又は回収できるものの中に、武器防具アイテムがある。これらは鑑定スキルで見るといろいろわかる。しかし、一つだけ注意してほしい、それぞれ消耗度が設定されていて鑑定(大)でしか消耗度が分からない。武器防具は消耗度が100%になると壊れる。今のところ消耗度の回復方法は不明。アイテムに関しては、効果が落ちる。今後、市場に回復系アイテムが出回ると思うが、消耗度が高いものを高額で売りつける詐欺も予想される。注意するように」


展開された地図にモンスターの反応があった。


「モンスターの気配が強くなってきたから、解説はここまで。進みましょう」


今日も最速で回収を行いながら走る。資源系オーブがドロップし、足を止めて500kgの鉄鉱石を見せた。


「オーブがドロップしたからと言って、中身を確認せずに開封すれば持ち帰れないこともあるので注意してくれ」


そう言って駆け出す。


最下層に到達すると、巨大な双頭の竜が待ち構えていた。


右の頭は風属性。

左の頭は水属性。


「……厄介ね」


「いや、むしろ相性がいい」


二人は顔を見合わせ、頷く。


「行くぞ、SAYO」


「ええ、KOJI」


佐那が詠唱する。


「《水矢》」


宮本が続ける。


「《風矢》」


佐那の頭上から、大人より一回り大きい水の塊が圧縮され回転しながら竜に飛ぶ。

宮本の頭上からは風のがギュルギュルと音を立てながら竜に迫る。


ほぼ同時に二つの魔法が着弾し――


ドオオオオオオオオオオン!!!


双頭竜は抵抗する間もなく、光の粒となって消えた。


「……完封、ね」


「奥義の相性が良すぎたな」


動画には、

“二人の奥義で一瞬で消し飛ぶ最終ボス”

が映っていた。


“黒い霧が一点に収束”し、青白い光を放つ球体が浮かび上がった。


「これがダンジョンコアか」


佐那の虚実看破が強烈に反応する。


《ダンジョン№28509:完全攻略を確認》

《攻略者に管理権限を付与します》

《攻略者:KOJI/SAYO》

《世界通知を開始します》


「これから世界通知が始まるみたい」


次の瞬間、視界にウィンドウが強制的に展開された。


◆【全世界通知】

《ダンジョン№28509(日本・大津市)完全攻略》

《攻略者:KOJI/SAYO》

《報酬:管理権限・ダンジョン安定化・資源供給量上昇》

ダンジョンコアが光を放ち、二人を包む。


次の瞬間、森の中――渦の出口に転移していた。


ダンジョンを出た瞬間、宮本が言う。


「全速で離れるぞ。誰かに見られたら終わりだ」


「地図で人が居るか確認して、居たら瞬間移動でいない場所へ飛ぶわ」


「右前方・右後方に反応。一度山頂方向に」


「わかったわ」


佐那が俺の手をとり瞬間移動を発動した。景色が変わり地図の反応も1キロ以上離れている。

マスクをとり、衣装を登山服へ変えた。


「認識変更、発動」


声・体格・雰囲気を微妙に加工し、

KOJI/SAYOの“匿名性”を確保する。


山道を下り、何食わぬ顔で大阪への帰路に就いた。


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