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ー0007ー

 アルテミスズ親子に案内されて騎士学校の貴賓室に通されるはこびとなる。

貴族とは思えない親しげさでナイトと会話をするオソラ。

オソラの問いかけに単調に端的に相槌や疑問をクチにするナイトのある種の人懐っこさ、逆に言えばデリカシーの無さが功を奏してシャルルは今日会ったばかりの関係性で知ってはいけない情報を得た事に少しばかり頭を抱えたは震えを覚えていた。


「そう、だから元は片田舎の小さな領主に過ぎなかったから貴族って感じになったのは最近なのよね。

昔は普通に近所の子達とドロンコになって遊んでたのにね!

お母さんが学校の学長になってから大変だったんだよ!

だから喋り方とか、ご令嬢って感じじゃないでしょ?」


「う?うん」


「でしょ、だから習ってはいるけど苦手なのよね。

咄嗟だと素が出るっていうか?」


「うん。」


「そもそも、お父さんは婿入りだから、お母さんに頭上がらないのよ」


「?

へ〜」


「あっ分かって無いでしょ」


「うん」


「ではではオソラ先生が教えてあげましょう!」


 最初は馬が暴走していた原因の話だったのがコロコロと変わり今は婿入りの説明が始まり笑顔で語られるマシンガントークのオソラに相槌的に短く答えるナイト、楽しそうにしている2人を他所に部屋の壁に控える騎士たちの視線にシャルルは耐えられそうになかった。

シャルルは、どうにかしろとでも言われるように注がれる|男達(騎士)の睨まれこわい顔に青くさせる。


(…………どうすればいいんだ。

話に入るべきなのか。輪を壊しそうだし。

この中で年長者として、このままってのも何か気まずいし………。)


 そこにドアがノックされ1人の端麗な女性が入ってくる。

後ろには笑顔に汗を浮かべたベアオランの姿が有った。


「やぁやぁ♪

遅くなってすまないね〜

こっちは妻の────」


「で、どっちだい!

婿養子候補の気骨のある騎士志望の男ってのは?」


「へ!?」


 あまりの事にシャルルはキャパが、一瞬振り切れ吐きそうになる。

喉が酸っぱいのを飲み込んで何とか平静を装う。


「お母、……御母様いきなり何を!?」


「う〜ん。

君は何とも経験豊富、常日頃から鍛錬しているのが顔付き、体格ガタイから分かるが大海の、一飛沫ひとなみの域を出ていない。

コレからも精進なさい。」


「はっへ?

はい!」


 立ち上がり敬礼を見様見真似ながらに裏声気味に返事をして頭に添えた右手が震える。


 シャルルの行なった騎士式敬礼とは右手を握り蟀谷辺りに軽く当て、その拳の裏側を相手に見せる位置で止める。

反対の左手は心臓の位置に手の平を握らずに添える。

跪くのは王のみで、それ以外は立ったままとされている。

意味は右手に武器、剣を持っていないと示し裏を見せる事で思惑が無い事の表しであり。

左手に盾、或いは二の武器を持たず相手あなたに忠誠や敬意を自身の命に掛けて誓うと表す。

のだが成り立ちは各々の騎士らは武装の構造上に因れば武器や盾が手放せない。

取れないといった事から座れなかったりする等も多かった。

理由はお揃いの鎧では無かったり戦場では、わざわざ|武装(剣)を解除するのは死を意味する。

そのため王位などの偉い立場に会う時に限れば武装も持ち合わせず戦時の物では無ければ鎧も儀式用だったりと座れたと言うだけの話である。


 シャルルに興味を無くした豪華なドレスこそ身に包んでいるがその実、動きに隙がない女性は獲物を捕らえた肉食獣のまなこでナイトをロックオンする。


「っと云う事は君かい?

うんうん。

締まりのない顔だね〜

本当に娘を助けたのかい?

たく……っ!?」


(こんな、ひ弱なら私でも……違う。

ぐわっ!?

気圧された!!!

……………身のこなしが先を見越している?

無防備に見せて、その実にいつでも戦闘態勢を取れるように緩めている?

緊張の1つも見て取れない。

これはコチラに油断を誘っているというのかい?

所作、1つ1つの体の動きが精練されている?

そんな錯覚から、一瞬で死を幻覚せた!?

それに、あの目も先を見通したような眼力さえ感じる。

……………………これまで多くの騎士を見てきた驕りが私を鈍らせていたね。)


 黙り込み、膝を着き、額に手を当てて汗をぬぐう妻と母の姿に室内の空気が変わる。

駆け寄ったベアオランやオソラが声を掛けるが上の空で返事は返ってこない。

過大評価されるナイトだが、その実、本当に何も考えていない。

部屋に入ってきたオソラの母親が自分に話しかけるも腰を折ったので首を傾げていた。


「御母様、どうしたのですか?」


「ラト!?

ラトっ、返事をしてくれ!!」


「あ、あぁ。

すまないねぇ〜私とした事が甘くなってたみたいだよ」


 ラトの言葉にナイト以外の全員が頭にハテナを浮かべる。

ナイトは最初から何も分かっていない。


「このラト・リン・アルテミスズが気圧されるとわね〜

単なる養子じゃなくてオソラを嫁に出しても良い位だね!」


「えっ!?」


「ゴッほ、ウッホッホ、ウッホぉゴアぁ!?」


 何を言ってるの顔を向けるオソラに咳き込む父ベアオラン。

何も聞いていませんと壁の一部と化す騎士たちと限界を超えたシャルルが空気に溶けそうになる。


「ふん、冗談はここまでにして本題に入ろうかい」



「「冗談だったかいのぉ!?」」


 意味合いの異なる父娘おやこの様子にラトが呆れる。


「喋り方!………まったく。

夫のベアオランから聞いたよ。

娘を助けてくれた事、母親として感謝する。

騎士学校に入りたいのも聞いた。

入学試験の手続きは済ませて来たよ。

でもだ!

娘の命の恩人だとしても学長としては、一切の特別待遇はしないから自力で合格するんだね。」


「はっ、はい!!」


「………でだ、これも聞いたんだがねぇ〜

5年くらい前から、一般枠は相応の実力や1つでも加味する特出点が有れば免除制度を適応しててね。

その様子じゃあ知らなかったみたいだね」


「そ、そうなんですか?」


「私が勝手にやってるだけなんだけどね。

アンタ達はソレに載せてくから試験を頑張りな!

それじゃ、私は忙しいから後は娘達に任せるよ!」


 そう言うとラトは部屋に居た騎士数人を手で呼ぶと引き連れて足早に去って行った。

その疲れたような様子のラトに夫であるベアオランは少し違和感を覚えたがナイトとシャルルへの対応をするように姿勢を戻した。


「悪いね、妻も忙しい身だ。

ここからはワタシに任せなさい。

入学金、支度金は妻が言っていた制度に落ちたとしてもコチラがお礼として払わせて頂くよ」


「そ、そんな!

いけません、そんなつもりで言った訳では無いんです!!」


「いや、これも1つの礼だと思ってくれ。

それに合格すれば良いんだ。

その場合は浮いた、お金で学寮金やその他諸々に使えばいいんだからね。」


「分かりました。

ありがとうございます!!」


「うむ。

オソラ、どうするかね?」


「え?

な、何がお父様?」


「予定では来年度を受けるはずではあったがね。

ナイト君達のいる、今回の分を受けてみるかい?」


「そ、そうね。

それも面白そうだし、そうしようかしら!」


「うんうん、そうだねぇ〜」


「じゃ、そう言う事だからよろしくね、ナイト!」


「ん?

うん・・・・・何が??」


「お前、はなし聞いて無かったのかよ!!!」


 シャルルのツッコミがジャストヒットし炸裂した貴賓室は笑いに包まれた。


===ラト・リン・アルテミスズ===


次回から1日1回投稿になります

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