ー0006ー
救出した少女の名前はオソラ・リン・アルテミスズだと自己紹介される。
そう聞いてシャルルは確信に変わる。
王国立軍士養成寄宿騎士学校 アルテミスズ支部。
アルテミスズの名の通り、この街に有る1つの騎士学校で彼女の父親はこのアルテミスズの領主である。
名前をベアオラン・リン・アルテミスズ。
そしてシャルルの憧れであるアルテミスズ騎士学校の学長は、そんな彼の妻でありオソラの母親にも当たるラト・リン・アルテミスズが務めており、この好機を逃すシャルルでは無かった。
「失礼します、少しよろしいでしょうか」
その仕草や口調、表情等から普段、彼が見せる軽薄で軟派な物ではなく上流階級の作法や静な佇まいにベアオランの目を止める。
田舎領主の貴族では有るが、それなりに経験のから央都の社交界や王にも謁見した事のあるベアオランの目を引き誤魔化せる程の動作は一瞬にして上級貴族が出現したような違和感さえ生んだ。
「ッき、君は?」
「ありがとうございます。
御息女を助けました彼のツレになります。
シャルル・シェイドと申します」
「それで何だね?」
「お見受けした所、お間違いで無ければ貴方は領主様にあらせられますベアオラン様でございますね」
「確かに、そうだが?
何かね礼の事かな、礼金等が欲しいと言いたいのだな?」
「いえいえ、私は彼の友人に過ぎません。
それに私は御息女オソラ様を助けるのに関わっていないのが事実ですから」
「ならば何だ??」
「え〜〜実はワタクシは今年度の騎士学校の入学試験を受けようと思っていまして。
本日は入学金を準備し試験申し込みをしようとしていたという奇跡の為せる吉日と言いましょうか!」
「そうだったのか〜〜」
「そうなのかね!」
ナイトとベアオランの言葉が重なる。
「それは僥倖だ。
名案だな」
「はい!!」
ここに来てはシャルルの思惑は成功を見せて素に戻って返事をしていた。
「騎士志望の少年に愛娘が救われ、その彼を騎士として輩出できるとは。
うむ、うむ確かに今日は何と良い巡り合いの日だろうか?」
「へ?」
素っ頓狂な声を出すシャルルと同時に違う意味合いではあるがオソラも驚く声を小さく発していた。
「え?」
「どうしんだオソラ?」
「君、私に騎士だって名乗らなかったかしら?」
「うん、僕?俺?はナイトだよ」
「ナイトって騎士の意味じゃなくて名前だったの?」
「?、みたい。」
「でも騎士志望ならピッタリの名前ね!」
「そうなの?」
「なんで他人事みたいなのよ、自分の事でしょ!」
「ナイトくん、君は面白いね!
ウムウム。騎士志望でも、そうで無かろうと暴れ狂う馬車に飛び乗り、誰と知らずして構わずに勇敢に1人のみで助けようと動ける物ではないよ。
ここにいる騎士団の中に騎士学校入学前にそれが出来た者が居たかね?」
ベアオランの言葉に騎士団の者たちは左右を見るばかりで返事は無い。
「だろうな、それも娘と同い年くらいだと言うのだから尚更だ。」
「ナイトは私と同い年位かしら?」
「ん?多分?」
「まぁ見た感じ、15歳くらいよね。
逆にシャルルさんは年上よね」
「まぁ、そっすね21です。」
「これまで騎士になろうとしなかったの?」
「入学するには試験受ける云々以前に支度金とか入学金を提示して預ける必要がありますから集めるのに時間食ったんですよ。」
「なるほどだね。
よしナイトくん、君にはぜひ騎士学校に入学して欲しい。入学金等はコチラで持とう。
安心なさい恩人の友人なんだ、無碍にはしないよ」
「ほっ、本当ですか!?」
不貞腐れ気味だったシャルルはベアオランの言葉に飛び跳ねて喜ぶ。
「だが君が折角、苦労の果に貯めた入学金を使わないのも勿体ない。
それ以外の寮料や生活費等を面倒を見よう。」
「あ、ありがとうございます!!」
「なに、これも何かの縁だ。
ではコレから一緒に入学手続きに行こうかね」
「実は私も今日、来年度の入学に向けて見学に向かってたのよ」
「へ〜〜」
「君、相変わらず反応薄いよね」
オソラ、ナイト、シャルル達はベアオランが乗って来た新しい馬車に案内されシャルルの本来の目的だった王国立軍士養成寄宿騎士学校 アルテミスズ支部にやっとではあるが向かった。
===アルテミスズ家===




