ー0002ー
1人の青年が家路を急ぐ。
辺りはまだ明るく爽快な青空に白い雲が風を運ぶ。
今は昼過ぎ、彼の足取りは至って軽く柔らかい。
「仕事を始めて丁度、1年!
ふぅ〜〜騎士学校の入学金がやっと貯まった!
やっ‥‥‥‥‥‥‥たぜ!!!!」
道の真ん中での大きな独り言は周囲からの冷たい視線に青年を居た堪れなくなり匆惶とさせた。
(やっと、やっとだ。
この1年、全てを失って………………。
……これでやっとスタートラインに立てる。
…………待っててくれよ。)
ビシッと天に向かって人差し指を刺すのは赤い髪に黒い瞳のシャルル・シェイド。
若い男性で服装は古着を自分流にアレンジして着こなしている。
腰には木刀を提げて時たま、地面や人に当たっては音を奏でて怪訝な顔を向けられる事も度々と起こる。
そんなシャルルに声を掛ける者がいた。
「シャルちゃん、そんな嬉しそうにどうしたの?」
「オバチャン、シャルルだって毎回言ってんだろ!
って、聞いて下さいよ、ついに!
ついに入学資金が集まったんですよ」
「それは良かったねぇ〜
なら3日後の編入試験、受けられるじゃないの〜」
「そうなんですけどね。
ちょっと悩んでまして。勉強とか体を鍛えてからの来年にしようかなと思ってたりして〜」
「何言ってるの!
試験、受けるための最低条件をやっとクリアしたんだろ?
ならグダグダせず当たって、ぶつかりなさい。
砕けてもお金が減る訳じゃないんだからさ!」
「そっそうですかね?」
(確かに弱気に成り過ぎたかな…………1年前、何もかもを失い。
新天地である此処に流れ着いた時は絶望に打ち拉がれてたものだけど今では目的も有ってしっかりと、この足で立って歩けてる。
弱腰じゃ〜あダメだよな。
ここまで来たんだ!)
「そうだよ〜
記念にお安くしとくからねぉ〜」
「ちょっと〜そこはタダにして下さいよ〜!」
「そうだねぇ〜なら試験に受かったそん時にはタダにするかねぇ〜」
「ホントっそか〜
まぁ良いっすけどぉ〜買いますけど〜約束ですよ」
「毎度あり!
さっすがシャルちゃん!」
「だからちょっと────」
お決まりのパターンの後、無事に買い物を終えてシャルルは家を目指した。
☆
普段、シャルルは傭兵としてハンターギルドでその日暮らしの収入を稼いでいる。
その中から入学金と学費を貯金して遣り繰りしていた。
町外れの郊外にある、一軒家で1人暮らしを始めて1年。
すぐ近くに森が広がり野生動物や魔物が現れる事も少なくない立地のため余所者のシャルルでも安く契約出来た。
(ん!?叫び声……近いぞ!
野生動物………いやマモノか!)
その時、女性の悲鳴が聞こえた気がしてシャルルはその方向に走り出す。
四方をゴブリンに囲まれ大木に追いやられている女性を見つけ飛び上がり割って入る。
女性に手を掛けようとしていた1匹のゴブリンを下敷きにして木刀を握ると後ろにいた数匹を薙ぎ払う。
「大丈夫ですか怪我は?」
シャルルの声に “ありません” と答えて震える彼女にシャルルは片手で庇うように制止ながらゴブリン等を木刀で吹き飛ばしてゆく。
(武器が木刀しかないのがな……。
仕事後で修理に預けたばっかで運が悪い)
木刀では決定打が決められず女性を庇いながらでは上手く前に出れず膠着状態が続くかに思えた、その時だった。
「ミカーーー!」
「サビオーー!」
(あっ彼氏いたのね)
前に出ようとするミカを “危な、危ない! ” と止める。
ゴブリン達が彼氏の声に気を取られ後ろを向いたその隙にシャルルはゴブリン等の各急所を叩き斬っていき首を折られた1匹がキレイに放物線を描いて絶命する。
一瞬の間に倒すと木刀を地面に刺すと、やけっぱちに。
「俺は未来の大英雄!
騎士 (じゃまだないけど)シャルル・シェイド様だぁ!!」
笑顔で勝鬨を上げながら心の中でシャルルは泣いていた。
「は、はぁ~……………彼女を助けて頂きありがとうございます。」
「本当にありがとうございます騎士様が来なかったら私、死んでいました。」
「いえいえ、もしお困りな事がございましたらハンターギルドまで御依頼を!」
(モテるって大変だ〜とほほ〜〜)
誰でも成れる傭兵として活動する生活で経験を積み、騎士としての称号が無ければ騎士としての階級と正式にも名乗れないのだがシャルルには志が確かに騎士として確固として心底にあった。
「あっじゃあ〜お帰りは気を付けて〜〜」
女性を助けたからと言ってモテる訳でも惚れられる訳でも無い。
そんな心理を知った帰り道を今朝、出かけた時と同じように1人で家に足を向けるシャルルの姿を夕暮れが余計に寂しさを倍増されるように見せた。
===シャルルその1===
この世界ではシャルだと女性名。
女性の方が多い、そんな感じのイメージでお願いします。




