ー0015ー
少し長いです。ご注文下さい
シャルルとイエロが全快では無いにしろ、立ち上がれるようになり回復に向かって安静に入院が続いた。
そこから日常生活に支障無く歩けるまでになって数日、退院の日。
「実技試験は戦闘からは逃れられない。
それにイエロを殺そうとしてた、あいつらからの妨害……いや確実に俺達も殺しに来る。
ソイツらとの戦いだって予想される。
まぁその張本人は、のほほんとしてたけども。
ともかくナイト、そのためにだっ!!
武器だ!防具がいる!
お前の武器とか諸々と新調するぞ!!
おーーー!」
「うん。
分かった」
「ったく相変わらず覇気のない奴め………。」
早々にイエロは不完全な身体へ鞭打って空元気に帰っていきシャルル達は入り口付近で駄弁っていた。
その2人に近づく影が塀から伸びていた。
「じゃじゃーん!!
スタッ!キラ!シャラーん、からのターンターン、ピタっ!!
オソラ様、可憐に参上ッ!」
「えっ?」
「あの………えっと……。
オソラさん?」
「こほん。………だったら我が家が力になるわよ!!」
「オソラ‥‥‥お見舞い、お疲れ様」
「これはどういたしまして。
それでね、キングドラゴンモドキのオークションはまだだけど、お父様に言えば無利子で貸してくれるはずだから!!
アルテミスズ家に任せなさい!」
「凄い」
凄〜い!
さすがぁ〜惚れちゃうぅ〜〜
オソラ様ぁ〜」
「ちょっとヨイショが露骨過ぎよ」
「あっすいません。
………でもそれってナイト限定………だろ?」
「モチロンよ!」
「ですよね!
。゜(゜´Д`゜)゜。」
「ウソウソ、でもシャルルにだって少しは、お金貸してくれるでしょ!」
「本当っすか!」
「ええ(利子は発生すると思うけど)」
「ありやとございや〜すッス!」
「それ決まれば屋敷に、お抱えの鍛冶師が有るからなんなら今から来る?」
「そりゃ凄いぜ!
行かせて頂きまっす♪」
「なんで家に鍛冶師が居るの?」
外に待たせてあった馬車に乗り込みながらナイトがオソラに尋ねる。
「そりゃウチは領主だかね。
街の警護とかパトロールする騎士団とは別にアルテミスズ家に仕える騎士団も要るし、屋敷内に訓練場もあるし、武具の消耗は激しいのよ。
だから専属、お抱えが在住してるって訳ね♡」
「やっぱ貴族は大変だよな〜」
「そうね、一昔前は先祖代々昔馴染みだけだったのに今じゃ騎士団用の宿舎が近くに併設されて鍛冶師までいるんだからね〜」
「やけに他人事だな」
「環境が一気に変わっちゃたから心の底ではまだ実感持ててないのよ」
「へ〜」
いつもの返事、いつもナイト。
だがナイトは馬車の窓から外を眺め、流れゆく景色の中にある一つ一つの行き交う人々や建物、屋根や路地を見ては目だけが警戒をしていた。
「でも俺達、ばっかり世話になっていいの……ですかね?」
使用人らの目を気にして敬語で話すシャルルと、それにフフっと笑って答えるオソラ。
「問題ないわよ。
だって私の分は、とっくにパ……お父様が高い素材やらを、お金に物を言わせて集めては造らせ終わってるから!」
「はっ、ハハハ〜」
また、彼女も口調を貴族らしく話すのに四苦八苦している。
苦笑いして話題を変えながら会話が続くシャルル達にはナイトがただ単に窓を見ているだけに映っていただろう。
☆
「武器なら何でも。
でも常に予備がいっぱい欲しい」
「使い捨て………違うな。
これを見るにお前さんに武器が付いて行けてないな。
まぁお前さんも歩み寄ってはないがな。
二刀流が戦闘スタイルに合ってるかぁ…………。
本来なら使い手に合った武器を1から造ってやりたいが何せ時間がない。
せめて物の抵抗に有りものをお前さん用に見繕うくらいだな」
「武具は?」
「しっかり欲しい。
革より鉄。
盾は腕に、くっつけれて取り外し出来るのが良かった。」
「小手な!
まぁ連撃タイプのようだから軽めにしとくか。
盾はラウンドシールドで良いだろう。
好きなの選びな!
着脱式にしてやる。」
「じゃ私はナイトの採寸手伝ってあげるわね」
「お嬢に任せら………いや宜しく頼んます。
んでお前は?」
「やっと俺の番か。
お願いしま〜す!
俺は小回りが利くように防具は軽めで得物は長剣か太刀でオナシャス!
ずっと憧れてるんですよ!」
「あぁあん?
ダメだ。
試験は実戦だぞ、それも数日後なんだろうが。
本番に慣れてない得物で戦ってみろ………火を見るより明らか…だろが!」
「は、はい」
「今までどおりの武器にしとけ、とびっきりを出してやる。
勘定次第でな!ばっはははは!」
「それは笑えないっすよ」
「どれどれ……………うむ。
使い込んではいるようだが………荒いな。
何度も同じ箇所を修理しているようだが?」
「へへっ。
分かりますぅ?」
「なんだと思ってんだプロだぞ!
誤魔化せるか!
クセなんだろうが………直せよ、弱点になる。
だが愛着があるのは良い。俺達鍛冶は武器に武具にも魂を籠めるからな。
分かった。コイツを鍛えてやる。
お前の行き付けの鍛冶屋には後で怒られろ!」
「へっ?」
「お前がな。
だってそうだろ?
この剣もソコで買ったんだろ?
んでソコで治して貰ってんだろがよ!
俺なら勝手に他所の鍛冶屋に行かれて見ろ?
怒るね。
しかも改造れんだから堪ったもんじゃねぇ〜よ?
実際さ。
だから死ぬ気で謝れ!」
「はい。
…………あの……。」
「んん?」
「そのドマジさんが謝りに付いて来て一緒に謝ったりは───」
「しない」
「ですよね〜〜」
「次だ。
お前、防具出せよ?
なんで出さない、ん?」
「あっいや、その、だからですね〜〜」
「テメェまさかッ!?
装備ねぇのか!!」
「いや、違うですよ。
鎧とか防具って重いじゃないですか?」
「だから何だ!?
してねぇってか?
お前、騎士目指してんだろが!
騎士なんてのは鎧ガチャガチャして動き回ッてるぞオラァ!」
「いやまぁそうなんですけど、重いし手入れ面倒だしでハンターギルドの貸し出し用のレンタル品のレザー製の胸当てだけとかにしてました。」
「なんだそりゃ!?
横着な、俺んとこに来たんだ。
もう誤魔化せさせんぞ。まずはお前さんも採寸やんな、良いな(# ゜Д゜)」
「はい(´Д⊂グスン
すみません!!
オソラさんお願いします。」
「ん?
あっ私、ナイトで忙しいからゴメンね!」
「あっはい。
………あーーー!
ならメイドさん」
「なら、ついさっきティータイムの準備してくるつって取りに行って居ないな。
仕方ねぇ、普段ならやらねぇ〜んだが俺がやってやるよ。
俺直々にサービスだ!」
「あっ……ありがとうございます(ノД`)シクシク
痛くしないで下さいね。」
「おう。
お前が大人しくすりゃ〜ぁあ〜な!」
「ひぃ」
☆
「いや〜〜〜採寸だけで、やら直しだ、とか何度も体を触られて、その度に採寸したり来直したりで半日掛かるとわね!」
「早い方よ、コレでも。
ドマジが魔法使えるからなのと弟子達と役割分担してるから。
まぁそれでも武具の完成は数日は必要だし、どうするの?」
「あっ、ならリハビリがてらマモノ狩りと行きますかッ!」
「なら私も付き合うわよ!」
「おいおい、色々と面倒見て貰って置いてなんだけどさ。
お嬢様のお守りしながらマモノ戦闘はキツイぜ?」
「へ〜〜それなら大丈夫よ!
だって私も騎士試験の受験者だしね!」
「はぁ!?
え?
はーーー?
先にそれを言え、……言って下さいよ!」
「知ってるもんだと思ってたわ」
「知ってた」
「はぁ〜何でぇ〜!?」
「あ〜それわね!貴族とか推薦の試験会場で一緒だったのよ」
「同じだった」
「先に言えよ、早く言ってくれよぉお〜〜!ピエロじゃん!俺ピエロじゃんか…………なら行きますか‥‥‥‥‥の前に、ちょっと寄り道していいかな?」
「ん?」
シャルルが寄ったのはハンターギルドのメイン通りから離れている廃れた一軒家だった。
ボロボロの見た目に今にも崩れそうな屋根には “ポロポロの剣店” の看板がある。
店先等には壊れた武器が樽等に入れられて放置されている。
「で?
此処には何しに来たのよ?」
「ハンターギルドに常時依頼で薬草なんかの採集、なんて出すマッドスミスの異名の変態に用があるんだよ」
「マッドスミス?」
「逝かれた鍛冶職人ポロポロだよ」
「誰でぇ!?
マッドスミスなんて呼んだやつぁ!!!」
勢いよく入り口を吹き飛ばして現れたのはドワーフの男性だ。
蹴り飛ばされたドアはナイトがキャッチして地面に寝かせる。
「俺だ。
ポロのオッサン。
普通の薬師や鍛冶師は自分の庭、菜園とかで育てるか鉱山やらから直接卸してもらうか専属の戦士やらを雇うんだよ。
それをハンターに押し付けやがって、ハンターは何でも屋じゃね〜んだぞ!」
「ふん。減らず口を!
簡単な依頼も出来ねぇ奴が生言ってんじゃねッ!」
「あのなぁ、アンタが要求する薬草やら鉱石は希少性の高いモンばっかりで危険が伴う割に報酬が、こんなだぞ?
こ・ん・な!
誰がやるんだよ!
この偏屈じじーのドワーフのボロボロ頑固野郎がぁ!!」
「テメェこのヤロウがぁ!
言いやがったな!
シャルちゃんよぉ〜!
誰がボロボロだぁ!儂はポロポロじゃい!!」
頬からも伸びたヒゲのモジャモジャを回転させ転がりながら取っ組み合いが始まり、ナイトとオソラはケンカが終わるのを待つのだった。
☆
「はぁはぁはぁはぁ。
邪魔するぜオッサン」
「はぁはぁはぁ、ぁあん?
邪魔すんなら帰れ」
「なんだとぉ!?」
「はいはい、もう終わり。
私達を放ったらかして何時まで続ける気?」
「おぉ、こりゃ悪い。
紹介もまだで悪ガキとドンチャンドンボコ騒ぎと失礼したな、見た感じ……嬢ちゃん、良いトコの出っぽいしな!」
「いえいえ、ただ単に家が古いだけですから!」
「ハッハハハハハハハ!
面白いこと言うね〜〜
気に入ったぜ、入んな!」
店内は外見とは打って変わって、しっかりと建てられていて綺麗に掃除され商品の武器・防具等が飾られていた。
特に驚いたのが外から抱く以上の広さだった。
「むひっ、スゲーだろう?
魔法で広くしてんのよ!」
そういったポロポロの顔は子供のように純真な笑顔だ。
奥のレジカウンターを上げて入るとイスに腰を落とす。
火を付けて煙を吐き出すと、やれやれと遅れて入ってきたシャルルを見る。
「騎士になったらしいじゃねぇーか、もうハンターは辞めちまうのか?
夢が叶って良かったじゃね〜かよ」
「騎士学校の試験受ける途中だよ。
合格もしてねーよ。
何処からそんな情報仕入れてくんだよ、めちゃくちゃ間違ってんじゃんかよ」
「どうでもいい、俺に音沙汰ないのが気に入らねぇ。
………………体………大丈夫なのか?」
「はぁ……なんだよ、いきなり。
気色悪りぃ……………あぁ、まぁなんとかな」
「あら、私達お邪魔だったかしらね?」
「ん?うん?
たぶん?」
小声でナイトと空気を読んでササッと壁と一体化して温かく見守る事にした。
そして温かい空気が流れると思われた矢先、又も2人は口論を始めてしまう。
「採集が好かねえだと?
分かってねぇぜ、別に打ちや染料だけって訳じゃねぇんだぜ!
素材と素材が組み合って貴金属を造るのも大事な鍛冶師の仕事だ!!
それをお前!
お前がいらねぇ〜って取らなかったソレやコレやが最後の決め手になるかもしれねぇんだ!
その素材が|鋼鉄(鉱石)に何を齎すか化学反応を起こしてくれるか分からねぇ〜だぞ!!」
「知ってるよ、耳タコだよ。
………でも面倒くさいんだよ。
ハンターは道中はマモノに注意してんの!
足元なんか見てられるかよ!!」
「何ぃ!?
シャルル、てめぇ!!
それが───」
「好きだよ、薬草集め。
石とか小枝も」
「お、おう。
ナイトはそうだな!」
「おっおう。
石や小枝は多少なりとも違うでも無いが、坊主は見込み有りそうだな!」
「はぁ!?」
「そこまで!
なにぃ、貴方たちは毎回こんななの?」
「そうでも……、そうです。」
「そ、なら要件は言えなそうね」
「い、………別に平気ですよ」
「?
なんだ、なんか用があったのか?
剣の手入れじゃね〜のか?」
「ぎくっ!」
「儂にか?
ほれ、言ってみやがれ」
「……………………くっ………。
ドマジさんって鍛冶師に────────」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
今にも崩れそうな一軒家がポロポロの大声で揺れた。
天井から落ちてきた埃を見てナイトは、わおっと声を出して驚いていた。
☆
シャルルはポロポロの武具店の裏で雑用をしては忙しく動き回っている。
「ったく。
勝手に人様に儂の作品を弄らせやがってからに」
「す、すみません。
私がウチの鍛冶師を紹介するって誘ったんです。」
「いや、嬢ちゃんは悪かねーのよ。
………今、手元にねぇ〜から分かりはしねぇがドマジ・マーク・マージの評判はホンモンだ。
確かドマーフって種族はドワーフより魔法に長けた鍛冶職人が多いとも聞く。
…………………少し愚痴を聞いてくれるかい?」
「はい、勿論です」
「…………………シャルルの……奴の剣の筋や形もスゲーモン持ってんだよ。
なのにそこから一向に成長しねぇ!
会った時からだ。
スゲーのによ、性根がダラケきってやがるんだ、アイツは。
それを儂の剣で、武器でも防具でも、何かのキッカケになればと思ってた。
顔合わせれば、いがみ合ってばかりだ。
孫とジジみたいな関係が楽しかったのかも知れん。
奴に甘えとったんだな………。」
「そんな、そんな事は。」
「いいのよ。
シャルルめ、こうなったらビシバシ鍛えて儂の剣のように強くしてやるからな!
新しい、儂に出来なかったキッカケを作ってくれてありがとうな!
嬢ちゃん、坊主!」
「は、はい!」
「う、ん?」
「ドマジに会ってみるかの………。」
「おい、コラ!
俺だけに手伝わせて、皆は楽しくしてんじゃねーよ!」
「お〜〜う?
シャルル、テメェは儂の剣、朱伐を無断で預けやがって、その罰だろうが!キビキビ動け!!
それとも採集依頼を名指しで指定依頼してやろうか!!」
「ひーーーーごめんなさーーい!!」
その日のハンターライフは延期になった。
===鍛冶師と鍛冶屋===




