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第80話血だらけで食べるタラは不味い

「こんにちは、いつものタラのグラタンをお願いします」 

「私はとりあえずエールね!」

 仲間のハラウと共に最早習慣となった食事内容を注文する。


 アッサリとしたタラに小麦粉と胡椒で味付けされたホワイトソースの、濃厚なクリームのような味が楽しめる。


 ここ、『水夫と冒険者の食事処』では様々な海鮮料理を出してくれる。


 水夫も海専門の冒険者も基本的に財布に余裕がある者が多い……まぁ博打で全て擦る者も多いが。


 私がこの街で活動を始めてもう2年以上経つ、魔法の才能を買われて『潮風の向こう』という冒険者パーティに所属している。


 自慢では無いが中々上位の冒険者団だ。


 出てきた食事に舌鼓を打っていると、水夫の集団から若者が囃し立てられて余所者の冒険者へ喧嘩を売らせようとしていた。


 なんとなくその囃された若者と余所者の冒険者を見る。


 一目見て男女3名の冒険者――特に金髪と黒髪の2人――が相当な手練な事がわかった。


 短剣を持った相手に暢気に見えるが、恐らく襲いかかった瞬間返り討ちとなるだろう。


「ナンパならすぐそこにいるんだから、俺じゃなくて本人に言えよシャイボーイ」

 男の言うことも最もである。


 どんな関係かは知らないが、本人に話せばいいのに。


 そして黒髪の男の何を考えているのかわからない冷ややかな目が、若者をけしかけている水夫達へ向けられる。


「まぁ、余所者にお前をけしかけてニヤついてるお仲間さんよりは根性あるよ」

 この街の悪い所だ、余所者……それも冒険者には厳しい。


 厳しいというより海を知らない雑魚と見下している所がある。


 黒髪の男性の元へ男達が近付く。


 男性の目が得体のしれないガラス玉のように輝く。


 本当に何を考えているのかわからない、何をするのかも何もかも。


 ――ただ1つ言えることは、後数秒の後に水夫が皆殺しになるだろうと言う事だ。


「我が風の拳は鉄槌を下す」

 一瞬で9発の風の拳を生成する。


 私の隣のハラウも弓矢を用意する。


「目障り」

 立ち上がっている全員に1発ずつ風の拳を放つ。


 ほぼ同時に全員に当たったと思ったが、なんと黒髪の男が水夫を盾にして魔法を避け、鉄砲をこちらへ向けていた。


 ハラウが私をフォローしようとするが、金髪のスカーフの女性に鉄砲で牽制されており、弓を構えることが出来ていない。


 ……次はどう出るか、考えていると。

 

  黒髪の男が武器を仕舞い、こちらへ腰も低くやって来た。


「いやぁ、へへへ、申し訳ない……助けられてしまって……」

 男と共に鉄砲を構えていた女性も銃ををポーチへ仕舞って立ち上がり、上品に頭を下げる。


 先程までの得体のしれなさは何処かへ行き、手揉みまでしている。


「……別に貴方達を助けたわけじゃない」

 私が手を出してなかったなら、水夫達が皆殺しだっただろうから。


 そんな血なまぐさい所で食事はしたくないものだ。


 気を取り直して食事に戻りしばらくすると、店主から小さなケーキが私と相方のハラウへ出される。


 店主を見上げると――


「さっきのお客さん達から、助けてくれてありがとうだってさ」

 ……時には人助けも悪くないかもしれない。


 そう思い先程助けた冒険者達を見ると、黒髪の男がニコリと笑いかけて小さく手を振っていた。


 緑髪と金髪の彼女等も彼のこういう所にやられたのかもしれない。

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