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第七十七話来たぜ!水着回!水着出ます!水着ありますよ!

「皆さん!水着を来て海水浴しましょう!」

 ネリーとロカから大方の予想ルートを聞き事前に様々な事を確認し、実際にどの様な場所なのかは明日以降に歩き回る事で一段し、お姫様とレミを含んだ全員が一同に会したところで(おもむろ)にネリーが切り出した。


 そういえばそんな話もしてたな……


 現在時刻は太陽が頂点を過ぎた頃で夕方にはまだ時間はあるが、数時間で日が沈みそうなところだ。


 この施設はすぐ近くが海水浴場として整備されているらしく、ほぼ直結で砂浜へ行けるので時間的には遊べる。


「海水浴か……うーむ」

 ロミが考える。


 今の季節は初夏からもうすぐ本格的な夏へとなりそうな時期で、まぁ海水浴自体はできそうな気温だ。


「アタシは水着なんて着ないぞ、鎧を外すと後が大変だからな」

 レミが無表情に宣言する。


 確かに彼女のトレードマークである全身鎧は、1度脱いでしまうと再度装着するのは大変そうだ。


 エルフの里山で外した時はその後、別々に事情聴取を受けた為、既に再装着していたのでどの様に着けるのかはわからないが……あのクソ重たい鎧を着けるのは難儀しそうだ。


「え〜水着着ましょうよ〜、私みたいな安月給の木っ端記者が水着を着られる機会なんて、この先一生無いんですよ〜」

 ……最早ただの我儘である。


 しかしながらこういう娯楽系でロミがどうするか悩んでいる時は大体決まって――


「水着!いいじゃない!皆で着ましょう!」

 お姫様が楽しそうに声を上げる。


 そういえば最初に海水浴の話をした時、彼女は馬車の中で聞いてなかったな……


 まぁこうなると殆ど鶴の一声で決定事項となる。


「ではレミ以外は水着を着て海水浴へ行きましょう、レミにはすまないが浜辺周辺の警戒を頼めるか?」

 ロミがお姫様の決定事項に応える。


 水着を着られないレミへの気遣いも含んだ指示を出す。


 富裕層向けの施設だけあって警備等はしっかりしているようなのだが、やはりレミが睨みを利かせているというのは彼女の強さを知っている身としては安心度が違う。


「俺もレミと周りの警戒しとくよ、女性陣だけの方がいいだろ」

 レミと共に警戒することを提案する、女性陣だけの方がいいというのも本音だが水着になると完全に無防備になる。


 無防備になるという事は、A3Wの装備を全て外す事……つまり完全なるA3Wのモーションではない素の俺の身体能力になる。


 そこで不安になるのが……俺、泳げるのかな……


「アルファさん!レミは鎧のせいで仕方ありませんが、1人だけ水着を着ないなんて言うのは無しですよ!」

 俺の言葉にお姫様が反応する。


 ちょっと悩むが、お姫様はこうなると頑固だ、まぁ……水泳というより浜辺とか浅瀬でちょっと遊ぶ程度なら大丈夫か。

 

「わかりましたよ、俺も水着に着替えるよ」

 そうして、海水浴へと繰り出す事となった。


◇◇◇◇


「レンタルしている水着は全て海棲(かいせい)の魔物の皮等を加工した物です、ちょっとやそっとでは破れませんので安心してご着用下さい」

 そう説明され、適当に水着を着て直結されている浜辺へ出る。


 俺の水着デザインは、黒いトランクス型の海パンである。


 太陽は燦々と輝いており、砂浜は日光で温められ、海水浴にはいい感じの気温だった。


「最初はアルファか、他はまだ水着を選んでいるらしい」

 レミの声にそちらを見ると、砂浜に膝くらいまで沈んだ状態の彼女を見つける。


 大丈夫かよ!?膝まで沈んでるけど!?

「大丈夫かよ!?膝まで沈んでるけど!?」

 反射的に思った事がそのまま口をついて出た。

 

「あぁ大丈夫だ、どうもアタシが動き回る程沈むみたいでな引き抜こうと思えば引き抜けるんだが……」

 重すぎて底なし沼とか流砂とかアリジゴクみたいになってるのでは……


 レミが砂浜を歩くのに難儀している様子を見ていると――


「お、アルファを待たせてしまったようだな」

 ロミの声にそちらを見ると、全員水着だった、否、当たり前なんだけど……


 ロミはツーピースの淡い緑色のビキニのような水着だ、騎士というだけあって身体は引き締まっており、特に腹筋と腕回りは主張し過ぎない程度に筋肉の形が分かる。


「というか……レミはどういう状態ですのよ……」

 ルミがレミが砂浜にめり込んでいるのに呆れた声を出す。


 ルミは殆ど装飾のされていない深い赤紫色のワンピース水着で、ロミと比べると肌の露出は少ないが、その右肩から右頬にかけて火傷痕がある、しかしそれは勲章であり特に隠すようなことはしていない。


「もしかして重すぎて沈んじゃってるんですか!」

 ネリーが驚愕の声を上げる。


 ネリーは深い赤色のツーピース水着でロミのようなシンプルなビキニスタイルではなく、上下にフリルが付いており、可愛らしい装飾がされている。


「レミは相変わらず凄いわね」

 最後にお姫様がクスクスと笑いながら歩いている。


 お姫様は真っ白なワンピースの水着に下半身にはパレオを巻いており、全体的に肌の露出は抑えられているが節々から覗く肌はやはり真っ白で血管の色が分かるほどで、高貴な青い血(ブルーブラッド)というのがあるならそれは彼女のことだなと思った。


 そこからは各々海へ入るが、お姫様は不安なようでルミの手をしっかり握って海際で波を楽しむ。


 俺も俺でA3Wの装備無しで泳げるかの実験の為、ちょっと沖の方まで平泳ぎやクロールで進む。


 流石にネイビーシールズのように装備を抱えて何kmも泳ぐような真似はできないが、完全なカナヅチというわけでもないようだ。


 ある程度の距離でUターンして浜辺へ戻る。


「アルファさん、泳ぎがお上手なんですね!」

 波打ち際でキャーキャーとはしゃいでいたお姫様が戻ってきた俺へ尊敬の眼差しを向ける。


 今回ばかりはA3W関係なく俺の実力なので完全にドヤ顔である。


 しかし、よく考えればこの世界では水泳というものはあるのだろうか?


 海に関してはフェイ商会が富裕層向けのリゾートとして整備し始めたばかりらしく、当然プールなんて無い……と思う、ので水泳は専門技術なのかもしれない。


「海は殆ど初めてと言っていたのに、随分達者ですのね、ワタクシも海で泳ぐのなんて初めてですわ」

 ルミも感心したように呟く。


 彼女も波打ち際で楽しんでいるようで、足元以外は濡れた様子が無かった。


「昔にやったのを体が覚えてたんだよ、そんなに褒められるようなもんでもない」

 なんだか久し振りに胸を張って自慢できる気がする。


 そんな俺の姿をお姫様はマジマジと見ている。


 ……なんか変な所でもあるのだろうか?


「そんなに見て、なんか付いてます?」

 どこか出てはいけない場所が飛び出していないか、ちょっと確認する。


 その言葉にお姫様は真っ白な肌が一気に真っ赤に染まる。

 

「いえ!ちがうんです!そういうつもりで見てたわけじゃなくて!」

 滅茶苦茶に慌てている。


 なんだ?どういうこと?


「アルファさんって意外と筋肉質なんだなって思って!つい視線が!そ!それだけじゃなくて右ももの傷痕がきになってしまって!」

 お姫様の言う通り、俺の身体は結構マッシブだし、右のももには迷宮都市で犬型の魔物に噛まれた跡がある。

 

 筋肉に関しては迷宮都市でマリーと離れ離れになってから、傷が癒えた後もリハビリとして各種トレーニングをしていた結果だ。


「右ももの傷は迷宮都市から脱出するときにちょっと……身体は結構鍛えてるから成果が出てきた所ですね」

素直に称賛として受け取っておく、騎士だけではなく、冒険者にとっても傷は勲章だ。

 

「なんだかんだ毎日不可思議な訓練は欠かしていませんものね、結構効果あるものですわね。さささ、お嬢様は向こうでワタクシと生物観察を致しましょう」

 ルミが横から割って入り、そのままお姫様を連れて潮の満ち引きでできた水たまりの方へ行ってしまう。


 なんだったんだ?結局よく分からないまま行ってしまった……


 その後もしばらく立ち泳ぎしたり、A3Wの購入画面(ショップ)で小型の折りたたみダイビングナイフであるスパイダルコ ソルトを購入して装備して泳いでみる。


 スパイダルコ ソルト――基本的にA3W中ではナイフはメーカー名が指定されていない装備だが、その独特な形状からほぼスパイダルコで確定だと言われている。

 

 盛り上がった峰部分(みねぶぶん)に大きなサムホールが開いており、折りたたみナイフながら親指だけで展開が可能で、H-1ステンレス――最近はローカーボンステンレスへ置き換えられているらしい――で出来た刃は殆ど炭素を含んでおらず、ナイフの鋼材中でもトップクラスに錆びづらい。


 一通り、どの程度泳げるかを試して砂浜へ戻る。


 やはりA3Wの装備があれば水中でも特殊部隊顔負けの水泳能力があるらしい。


 一息ついて休憩している時に、ふと辺りを見回す。 

  

 砂浜ではレミが腰まで埋まっている、お姫様とルミは浅瀬で生物観察を続けている。


 ……ロミとネリー、どこ行った?


 まぁまぁまぁ待て、ほぼ周知の事実なのだ、2人で遊ぶこともあるだろう。


 でも?流石に?無いよな?


 ……お姫様とルミが行ったのと逆方向を見る。


 おあつらえ向きにビーチから後ろが見えない大きな岩場がある。


 ………………そんな出歯亀みたいなこと……そう考えながらも気になって仕方ない俺の足は勝手に歩を進めた。


 岩場へ近付いて耳を澄ます。


 

「あっ――ネリー、ダメだ――」

「何がダメなんです?こんなに露出の多い水着を選んで、それに皆気づいてますよ?いっそ皆さんの前で――」



 即座に物音を立てないように岩場から離れる。


 俺は何も聞いていない、何も知らないし聞いていないったら聞いていないのだ。

連載1周年です!

読んでくださる皆様のお陰でここまできました!

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