第百二十三話ぼっちはつらいよな……
「それで、ボクに一緒に組まないか……と?」
俺はアーシェスくんと夕方の訓練の際、王都迷宮のパーティを組まないか頼み込んでいるところである。
「そーなの、完全にヤミ姫様にもスミーアとミリルナにも、俺がいない前提で話してるの」
今朝の出来事を話し、考えてみると後はアーシェスくんくらいしかパーティになってくれそうな友人がいない。
「うーん……ボクもスミーアの意見に賛成かな、キミほどの凄腕冒険者と迷宮に行っても得られるものは少なそうだからね」
えー、そんな事ないと思うんだけどなぁ。
「それに、既に友人と行く約束をしているから巡り合わせが悪かったね」
あれ?もしかしてぼっち確定?
「じゃあ、クラスの誰かに頼むかなぁ」
スミーア、ミリルナ、アーシェスがダメなら、他のクラスメイトを誘うしかないが……殆ど話した事ないな……
「クラスの誰かに頼むって……もしかしてキミ、クラスで怖がられているの知らないのかい?」
んん?どういう事だろうか?俺ほど物腰柔らかなコミュ強が怖がられるなんてことは無いと思うが……
「何を間抜け面してるんだい、ボクを模擬戦で一撃で倒したんだ、しかもずっと女子と仲良くしてるし、避けられてるよ、今回もヤミさんと行くと皆思ってるよ」
……うん、そうだね。
「じゃあ1人ぼっちで行くかぁ……やだなぁ」
憂鬱な気分を吐き出すように言葉にする。
「イヤ……キミなら大丈夫だろうけど、最低3人のパーティじゃないと参加できないよ、参加できなかったら単位を落として進級の評価に響くよ」
なにそのぼっちは人間じゃないみたいなシステム。
「あら?意外、ね?結構、よく喋る、から、もっと、友達、多いと思って、いたわ」
レキ先生が俺とアーシェスの話題に混ざる。
彼女が訓練以外の事で話しかけてくるのは珍しい。
「……よく考えたら、みんなが起きる前にグラウンドに来て訓練、そこからヤミ姫様とずっと一緒で、授業が終わればまたグラウンドで訓練……友達作る暇を作っておくべきだったか……」
俺はがっくりと肩を落とし、どうするか考える。
「じゃあ、私が、口、を聞いて、1人でも、いいように、してあげ、ましょうか?」
レキ先生は本当に優しい先生だ、こんなぼっちのゴミムシにそんな事を言ってくれるとは……しかし甘えるわけにはいかない。
「気持ちはありがたいですが、特別扱いは余計クラスメイトから避けられそうで……今回を期に更に友達を作ります!」
メラメラと俺の心が炎をあげて、友人作りを決意する。
「まぁ、がんばっ、て、応援、してる」
レキ先生の無感情な声が頼もしい。
◇◇◇◇
まずは友達作ろう大作戦のプランを考えねば……ということでまずは実際に友達がいる人に意見を聞こう。
「スミーアとミリルナってどうやって友達になった?」
朝食の時間、ヤミ姫様を挟んで2人並んでいる2人へ質問する。
「ハァ?どうやってって……そりゃあ席が近くて自然に……ねぇ?」
スミーアの要領を得ない話でミリルナへパスが飛ぶ。
「うん、初めて学院の講堂に来た時、前に座ってて、スミーアからたくさん話しかけてくれたから……」
っは!?話を聞くと俺はもしかして今までとんでもない大罪を犯していたのではなかろうか?
“百合の間に挟まる男”になってしまっていた!?
ヤバいヤバい、そういう意味でも一刻も早く独り立ちせねば、というか同性の友達が欲しい。
否、ヤミ姫様は別枠だが。
今後学院生活を送るにあたって、恐らく、まず間違いなく、訪れる“2人組作ってー”や“グループ作ってー”……
恐ろしい、マリーが見つかったら退学して冒険者業に戻るつもりだが、それでもぼっちは寂しい。
「そうかー、そうだよなー、既に友達の輪が出来ちゃってるもんな、新たに友人を作るハードルが高い……」
待てよ?友達の輪ができているなら、その輪に入れていない俺のような人を探せば良いのではないか?
最近ヤミ姫様に叩かれる回数の減った朝食を摂りながら、俺は1人で食事をしている人を探す。
これでいくらかロックオンして――ペシッ。
「食事中に周りを見回すのはお行儀が悪いですよ」
はい、ごめんなさい。
◇◇◇◇
俺の獲物を見定める目は、ヤミ姫様に怒られながらも朝食時に何人かロックオンしている。
後は授業中や授業間の小休止の時間の行動を観察する。
そしてぼっちの人にアタックをこちらから掛けていくのだ!
俺のコミュ力に隙はない、政治、野球、宗教の話題だって華麗に対応できるだろう。
そうしてぼっちを見つけた。
何名かは一匹狼的な人々だが、群れから弾かれた羊もちゃーんと見ている。
多分一匹狼的な人々は課題の為に手を組もう、と言えば余程断る理由がなければイエスと答えてくれるだろう。
しかしそれではダメなのだ、俺が欲しいのは友人なのだ。
グループ作る時に余らない事なのだ。
そして何名かリストアップした所で――
「スミーアさん、アーシェスくん、俺の友達になれそうな人を何人かリストアップしたんだけど、どんな人かわかりませんか!?」
昼食後の午後の授業が始まるまでの休み時間、スミーアとアーシェスくんを講堂に呼び出して情報収集する。
「……もしかして、友達作るって言ってたけど、その一環かい?」
アーシェスくんが心底呆れ返ったように、講堂の机に頭を垂れている、俺に言葉を落とす。
「ッ!サイテー!そうやって品定めして!そんなんで友達なんてできるわけないじゃない!」
スミーアさんに激しく心を削られる。
「知らない、もう話しかけないで!」
スミーアさんは激怒した様子で講堂から出ていってしまった。
あっという間の出来事でなんの言葉も返せなかった。
「あーあー、これに関してはスミーアが激怒するのも判るよ、というかボクもスミーア側かな」
馬鹿な……ちょっと共通の話題がないかとか調べたかっただけなのに……
「アルファはさ、なんで友達が欲しいんだい?しかもボク達にどんな人か事前に聞いてさ、課題を済ませるだけなら、キミのことだし一匹狼で課題の時だけ協力してくれそうな人は、リサーチ済みなんだろ?」
ズバリとリサーチ情報を見透かされる。
だって――俺の友人になる人はマリーに紹介しても恥ずかしくない人を選ばないと――
スッと席を立ち、壁際まで行く。
「お、おい、アルファ!どうした?――」
意味が分からないアーシェスくんが声を掛けるが、俺は講堂の石を積んだ頑丈な壁へ思いっきり頭突きをする。
「ハァ!?なにしてるんだい!?」
もう1発ゴツーン!と壁へ頭突きをする。
壁に血がこびりつき、俺の額に擦り傷ができる。
「やめたまえ!やめたまえ!やめろっつてんだろ!!」
3回目の頭突きの前にアーシェスくんに羽交い締めにされる。
「ハァハァ……ハァ〜、ごめん、俺が間違ってた、友達だもんな、友達に相応しいかなんて考え傲慢だよな」
額から血が流れ、触れてみるがちゃんと赤い。
「スミーアにも謝らないといけないな、結構最低なことしてたわ」
額の血を拭いながら、独り言を呟いた。
アーシェスくんが俺の拘束を解いたのでそちらを向く。
「キミねぇ……意外と真面目なタイプなんだね、しかし反省するにももっとやり方があったと思うけどね」
気が付けば講堂内にいた人々の視線を独占し、皆がヒソヒソ話している。
俺の友達に作ろう大作戦は中々大変そうだ。




