第百二十一話実は地球の中世都市は割と衛生観念しっかりしてたらしい
「ようこそおいで下さいました、アルファ猊下、私冒険者ギルドシャル王都支部長、イワンと申します」
なんだか広い部屋……マジでVIPルーム!って感じの部屋に通され、イワンさんが自己紹介する。
「あ、はい、アルファ・ワンと申します」
ペコリとお辞儀しようとすると――「なりません!学院外で頭を下げる等!」――強い口調で止められる。
「学院外にいる貴方様は神教会の勇者、私程度に頭を下げていいものではありません」
お、おう……そうか、俺、偉いんだよな。
「お伺いした通りの方のようですね、神教会とフェイ商会から、すぐにペコペコするからやめさせて……とクギを刺されています」
マジかよ、神教会だけじゃなくてフェイ商会も動いてるのかよ。
「さぁ、席にお掛けください、紅茶と茶菓子と出させます」
席を勧められてフカフカのソファに座るが――
「紅茶と茶菓子はいらない、学院の友達が待ってるから手っ取り早く冒険者証の更新をお願いしたい」
俺の言葉にイワンが片眉を上げる。
まぁ、礼節とかマナーとかあるのかもしれないが……
「早く手続き終わらせて友達と遊びたいんだよ」
俺の嘘偽りない言葉だ。
学生なんだから遊びたい、単純なお話です。
「そうですか……では早速更新作業に移らさせていただきます」
イワンが机に既に用意されていた書類を1枚手に取る。
「まず結論から、今回の更新でアルファ猊下は神聖黄金級となります」
はあ、パチンコの台みたいな名前のクラスだな……
「今回のランクアップにはアルファ猊下にふさわしい物が無かった為、新設されたものです、猊下がギルドへいらっしゃらないので保留されておりました」
ハイ・ゴッド・ゴールドクラス、俺の為の称号なのぉ?
「それは俺が神勇者だから、適当に称号を与えようってことか?」
何か嫌な感じ、まぁ神勇者自体が名誉職なので下手な称号は拙いと思ったのかな。
「……何か勘違いなされているようですので、ご説明させていただきますが、火地竜の魔法鱗個体は史上初めて観測された魔物です……それは常に最上級の防御魔法を鱗として纏った化け物です。それが、初心者講習に出たばかりの新人と講師のたった3人で討伐したのです、しかも止めは猊下であることは目撃者の総意です」
3人とはヴェルナーと講師のビエラと俺だろう。
「更に、ヤミ・メ・シャルリミダス王子、ロミ・ヴィエント・メ・セブ・シャル様、ルミ=リミュール様、レミ=エレンディア様、の百合騎士団連名で貴方が討伐した、または討伐に大きな功績を残した記録を提出いただいています」
そう言って書類の束を捲っていく。
「主な物だけで大鬼、大量の小鬼、海水竜、炎飛竜をほぼ単独で倒していると伺っております」
「否……炎飛竜は落としただけで止めはレミだから……」
炎飛竜だけは本当にレミが止めを刺している。
「そして……百合騎士団とエードル辺境伯との連携して、その奇跡によって陣頭指揮を執り、何万という魔物を屠っていると伺っております」
あー、アレはグレネードとショットガンの使い方を教えて回っただけだからなぁ、最後はエードル辺境伯の騎馬の魔法で決まったし。
「最後に……百合騎士団総意でアルファ猊下がいなければヤミ王子の護衛は成功しなかったと言っております、継承権第1位の王族を少数で王都まで護衛……もうこれだけで現在のギルドの階級制度では計り知れない為、純金級の上を作ったということです」
つまりは神教会やフェイ商会だけの思惑による物ではないと。
「うーん……でもその新しい階級で何が変わるの?」
俺の発言にイワンの眉間にシワがよる。
「……実はそこはまだ決まっていません……というか冒険者証も現在最高位の純金級の物をしばらく持っていただきます」
えー、本当に取ってつけたような階級だなぁ。
「冒険者証の権限は本来冒険者ギルドが決めるのですが……勇教会と神教会が介入しており、フェイ商会も金で動く冒険者ギルドの者達へ介入をしているなど混沌としておりまして……」
なんだか意外と苦労してそうな人だな……
偉くなるのって大変なんだよな……
「ですので、本日は称号を入れた純金級の冒険者証をお渡しさせていただきます……進展がありましたら、猊下へ一番に連絡させていただきます」
あ、そうだ、そう言えば誰にも言ってないことがあった。
「なぁ、去年の迷宮都市の事件の日、依頼を受けててさ、熊が標的だったんだけど、依頼主が嘘をついてて滅茶苦茶強い吸血鬼――魔族と戦ったんだけどこれも報告しといたほうかよかった?」
イワンの眉間にシワがより片眉が大きく跳ね上がる。
「証拠は?どのようなものでしょうか?」
俺はカバンの中身をゴソゴソするフリをして、インベントリからドラキュリオの灰を取り出す。
取り出した瞬間、激しい負の魔力が一気に部屋に広まる。
「こ……こ……この灰は……」
負の魔力にあてられたのかイワンが苦しげに声を絞り出す。
「『飛蝗公』ドラキュリオ・ヴィ・ヴァンピールの灰だ」
俺が最初に出会った魔族で最上級の力を持った男。
「と、とにかく……審査いたしますので、サンプルに少量いただけますか?」
その後灰を少しだけ分けて、冒険者ギルドを後にした。
◇◇◇◇
「あ、アルファのヤツ出てきたわよ!」
スミーアが手を振って自身の位置を知らせる。
俺もそれに応えて走り寄る。
「いやー、すまん、なんか意外と大変だったわ、なんでもランクが上がってたらしい」
俺が遅れた理由を話すとスミーアが興味津々で前に出てくる。
「冒険者ランク上がったの!?純銀級!?」
食い気味のスミーアにポケットから冒険者証を取り出して見せる……ちょっと誤魔化しとこう。
「純金級だって、やっぱ海水竜とか炎飛竜を仲間で囲んでボコボコにしたのがよかったらしい」
俺はただの純金級ですよ〜、このランクは俺1人の功績じゃなくてパーティ全体での結果ですよ〜、とアピールする。
「純金級!?嘘!?最高位じゃない!?」
スミーアのデカい声が響いて、一瞬周りが無音になる。
恥ずかしい。
「移動するぞ、詳しくはどっかでゆっくり話そう」
すぐさまスミーアの手を取って引っ張って行く。
ヤミ姫様はコロコロとした笑顔で、ミリルナは慌てた様子で付いてきた。
◇◇◇◇
「ごめんて」
スミーアが謝る、マジに思った事が全部口から出るタイプだ、警戒しなくてはならないかもしれない。
「お前、本当に思ったことを口に出す前に一呼吸置け、もしくは静かに話せ」
現在は王都のメインストリートの食堂……というより喫茶店のような店で4人で1つの丸テーブルを使っている。
「俺は1人なら何とかなっても、3人同時に護衛は出来ねーんだから、あんまり金持ちみたいなアピールはしたくないんだよ」
それこそ冒険者でも最上級ともなれば大富豪だろう、炎飛竜とか海水竜とか大鬼とかの素材などの売却費は信号機が俺の口座に適当に振り込んだらしいが、銀行にも行ってねぇな……
後マリーの情報とは別に長期間拘束される任務を果たしたので、その報酬も振り込んでおいたとか言ってたな。
「でも、すごいね、冒険者でも頂点の階級なんだっけ?」
ミリルナが控えめに話す。
ミリルナの発言に直ぐ様スミーアが口を開きそうになるが……「――フゥー」えらいぞ、俺の言ったことをすぐに実践している。
「純金級は本当にすごいの、伝説級の魔物の討伐とか、単身で何百人もいるような軍隊を押し返すとか……そんなクラスなのよ」
スミーアが疑念の目をこちらへ向けてくる。
そんなこと言ったって……似たような事はしたし……
「まぁまぁ良いじゃないですか、学院生同士、身分も肩書も無関係ですもの」
ヤミ姫様が助け舟を出してくれる。
流石だぜ!できる女!
「そーだよ、そんなことよりこのままお茶しておしゃべりもいいけど、俺って王都来たばっかりの田舎モンでさ、どこかオススメの観光地とかある?」
ヤミ姫様に乗っかって有耶無耶にしつつ、観光地を聞く。
何だかんだといって王都もじっくり回っていない。
「んー、じゃあオススメの場所教えて上げる!」
スミーアが元気よく宣言し、その日は観光地巡りをして過ごした。




