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第百二十話ヨイショはすればするほどよい

 ゴーン、ゴーン、ゴーン――騎士魔法学院に来て1週間目最後の鐘が鳴る。

 

「拙い、1週間が過ぎてしまった」

 口から魂でも吐き出しそうな思いで言葉にする。

 1週間、7日間、168時間……

 授業で得た物は何だっただろうか……


 そう思っていると、後頭部にポス、と弱いチョップが飛んできた。


「アンタ本当に大丈夫なの?」

 チョップの主を見ると、スミーアが心配そうというか呆れ気味というかよく分からないが絶妙な表情でこちらを見ていた。


「大丈夫じゃないかもしれない……俺なんかよりタコの方が賢いんだ……」

 正直滅茶苦茶に落ち込んでいる。

 全く授業について行けん、何だよこの者へ試練を与えた神々のご意思はどういったものか考えなさい――からの――神々は偉大なる方々なので我々矮小な人間にはとても分かることではない、故に議論することそのものが重要なのだ。


 魔法の授業では魔法が使えない俺へのありがたいアドバイスが『神を信じなさい』神がいるのは分かってるし信じているが魔法は出ない、そもそも魔力が無い。


「ねね、アンタ明日冒険者ギルドに行くんでしょ?私とミリルナもついて行っていい?」

 スミーアは俺が明日の休日に冒険者ギルドへ行くのを知っているので一緒構わない。


「別に構わないけど、冒険者ギルドなんて行っても楽しくないぜ」

 正直な感想を伝える。

 あそこは公的手続きするだけの役所みたいなもんだり


「アルファさん、当然私も一緒ですよね?」

 ヤミ姫様が確認してくるが重圧がすごい。


「当然ですよ……ミリルナも大丈夫か?」「は、はい!当然お供させてもらいます!」

 俺が話しかけると、ミリルナが食い気味に返事する。


 どうもミリルナはヤミ姫様と俺の身分を知っているらしく、かなり恭しく接してくる。


「お供って……友達なんだからそんな言い方すんなよぉ」

 これは本心である。

 というかそんな恭しく接したら身分を名乗らない学院の校則の意味がない。


「は、はいぃ……」

 ミリルナの前髪で目は見えない……実は1番何を考えているか分からないツワモノである。

 

◇◇◇◇


 次の日、王都へ向かうことになる。


 ブヒヒーンと鳴くアシヌスに跨り、2頭立ての立派な馬車に並ぶ。


「アンタ、()()で行くつもり?」

 アシヌスを指しながらスミーアが馬車の上から問う。

 ソレとは失礼なやつだな!


 「俺が冒険者になってから一緒に修羅場を潜り抜けた、俺よりもしっかりした名ロバだぜ」

 そう言い返す。

 ヤミ姫様、スミーア、ミリルナが乗った馬車の御者台には学院のメイドさんが座っている。

 なんでも学院に頼めば騎手を用意してくれるらしい。


 ……アシヌスに全幅の信頼を置いているのは事実なのだが、俺にアシヌスがいなければ馬車内に女子3人とおじさん1人になるので流石に避けたい。


「じゃあ行くか、スピードはこっちが身軽なので後ろからついていきますね!」

 御者台のメイドさんに大声で伝えて出発する。


 大体王都まで馬で1時間ほど、ゆっくり行くか。


◇◇◇◇

 

 王都に到着し、馬車のメイドさんに案内されて騎士魔法学院生専用の厩舎を教えてもらう、学院生は無料で休みの日は随分賑わうようだ。


 女子3人(ヤミスミーアミリルナ)が馬車から降りてくると、厩舎内にメイドさんが馬車で入って行ったのでついて行く。


 ちょっとした手続きをして割印(わりいん)を貰ったらアシヌスと馬車を預ける。


 厩舎の外に出ると、女子3人が待っていた。


「とりあえず冒険者ギルド行くかー、と思ったけど……御者してくれたメイドさんって俺たちが帰ってくるまでここで待つの?」

 ふと疑問に思ったことを口にする。


「はい、皆様の馬車とロバは私めが見張っておりますので、どうぞごゆっくり休日をお楽しみください」

 大変な仕事だ、俺なら10分で寝る。


「アルファさんの悪い癖がまた出た!かわいい女の子がいたらすぐ声かけるんですから!」

 ヤミ姫様がプリプリと怒る。


「否、アーシェスくんの事も考えると男にもそれなりに声かけてますよ……」

 話していると話題がアーシェスくんのことになる。

 最近俺の交友関係はヤミ姫様、スミーア、ミリルナ、アーシェスくん、レキ先生と親しくしている。

 

「そ、そういえば、最近アーシェスくんと仲、いいですよね?」

 ミリルナが控えめに発言する。

 模擬戦の後、真っ先にアーシェスくんの治療をしていたので、気になったのだろう。


「あぁ、最近一緒に朝と放課後の訓練をするようになってさ、やっぱ凄いよアーシェスくん、メキメキと腕を上げてて、今じゃもう模擬戦も勝てないんじゃないかな」

 そう!最近はアーシェスくんと2人でかなり実戦的な訓練をしている、彼は本当に物覚えが良くて、俺の銃からどうすれば射線が切れるか、ちゃんと考えて動く。


「それにレキ先生が、俺とアーシェスくんの朝の訓練を手伝ってくれたりしてるから、レキ先生とも結構仲がいいかも」

 前は見るだけだったが、現在は俺とアーシェスくんの訓練に色々な絡繰で手を出してくるようになった。


 1対1✕2だったり、2対2だったり、多対2だったりとかなり複雑な訓練をしている。


「ちょっと待って下さい、レキ先生って誰ですか?私はアーシェスさんと朝の訓練してるとしか聞いていませんが?」

 ヤミ姫様がレキ先生に関して詰め寄ってくる。


「俺の訓練って鉄砲撃つからうるさいでしょう?それで初日に見に来たのがレキ先生だったんですよ、絡繰人形使いで凄腕ですよ」

 レキ先生は、はっきり言って他の講師に比べて頭2つは抜けているくらい強い。

 何を考えているのか分からないが、人形との模擬戦時にはダメ出しもしてくれる。


「レキ先生……って、中々人前に出てこないので有名な先生だよ 、そんな人に訓練つけてもらってるんだ凄いね」

 ミリルナの発言に今度は俺が興味を惹かれる。


「あの先生、朝夕の訓練の時以外全然見かけないんだけど、有名な先生なんだ?」

 まぁ確かに彼女はすごい、見た目はか弱い少女に見えるが、操る人形はどれも何らかの固有の能力を持った絡繰を有しており、それを何体も彼女の背後が揺らいだと思ったら繰り出す。


「は、はい……なんでもエルフとのハーフで、年齢は200歳を超える人だとか言われてます」

 最早年寄り通り越してファンタジーの人だったか。


「そんなことより冒険者ギルド、見えてきたわよ」

 スミーアが剣と盾と槍のマークが描かれた建物を指差し、冒険者ギルドへ到着した。


◇◇◇◇


 冒険者ギルド内に入ると、なんだか随分久しぶりな感覚に襲われる。


「ちょっとここで待ってて、窓口に行ってくるから……遅くなったら3人で遊んどいて」

 中を見回して、空いている窓口へ冒険者証を出しながら近寄る。


「すみません、冒険者証を持っているのですが、全然更新していなくて……窓口はここで大丈夫ですか?」

 窓口の女性はすぐに営業スマイルをしてこちらを見る。


「承知いたしました、本日いらっしゃってるのは冒険者証の持ち主の方でしょうか?」

 その後、冒険者証に関する定型的な質問に答えて、冒険者証を渡す。


「これは……少々お待ちください」

 冒険者証を渡すと受付の人は難しい顔をして、奥へ引っ込んでいった。


 久しぶりだったからな〜、そう言えばヤミ姫様護衛任務も冒険者ギルドから出たものでは無いが、詳細は冒険者ギルドへ伝えておくと、ロミが言っていたなぁ。


 しばらく待つと、なんだか受付のお姉さんと一緒に奥から偉そう――これは制服の仕立てが豪華とかそういう見た目のことである――な人と窓口に来た。

 

「アルファ猊下、奥に部屋を用意しておりますのでこちらへどうぞ」

 俺より背は高いが、横幅は痩せている耽美な男性に耳打ちされる。

 一言でゾワッとする、否、怖いとかそういうのではなく、くすぐったいというかなんというか……


 と、とりあえず気を取り直して男性の後ろをついて行った。

 

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