第115話スミーアとミリルナの見立て
何故実戦で体を動かす系の授業は午後にするのだろう?
昼食後休みの後、暑苦しさに定評のあるデレク先生がグラウンドに集まった私たちの前で話す。
「初代勇者様はこう仰られたは戦うこと、冒険することを恐れてはならない!つまり!模擬戦こそ最も自身を高めることができる!」
デレク先生は戦闘魔法と剣術について一流の人ではあるのだが……変人でもある。
普段ならここから、2人組で剣術や魔法の形稽古が始まるのだが――
「デレク先生!是非模擬戦を行いたい相手がいます!」
アーシェスがデレク先生に大きな声で模擬戦を提案する。
うわ、アイツもしかしてアルファと模擬戦するつもり?
「げ、アンタやめといたほうがいいわよ」
私はアルファへ忠告する、しかし忠告された本人は分かっているのか分かっていないのか……
色々忠告するが――「それでいいっすよ、無作法者でどんな決闘方法があるかもわからなく――」「アンタはバカなの!?私が忠告してあげたでしょ!剣と魔法は現役の国王騎士団にも匹敵するって!それで模擬剣、魔法戦なんて自殺する気!?」
思わず食い気味に大声を出してしまった、コイツは全く私の話を聞いていない。
「フッ……スミーア嬢の言う通り、私は少しだけ剣と魔法には自信があってね、他のルールでもいいが、どうかな?」
自信満々にアーシェスが挑発する。
更にアルファに声をかけようとした私の腕を取って、止める人がいる。
私の隣のミリルナだ、ミリルナはこういう時弱い方を心配する娘だ、そんな娘が――「多分、アルファさんが勝つと思う……でもアーシェスさん、大丈夫かな……」
その前髪に隠された瞳はアルファが勝つことに何の心配もしておらず、むしろアーシェスを心配している。
“あ、はい、アルファといいます。バキバキに折られた肋骨と血反吐吐くくらいの内臓打撲を治療してくれた恩人がこの方のお姉様なんスよ〜“
アルファの言葉を思い出す、この話が本当だとして、ミリルナの姉に治療してもらったというのなら、もしかして本当に滅茶苦茶強い奴なのか……?
◆◆◆◆
闘技場での模擬戦は一瞬の内に勝負が付いた。
何が起こったかわからず、1つずつ思い出す。
アーシェスが試合開始と同時に火球の魔法を発動させた、それと同時にアルファが木で出来た模擬剣をぶん投げて火球へ命中させた。
それにより発生した火炎弾が拡散し、一瞬激しく光る。
その後はわからない……眩しくて瞬きして目を開けたら、アーシェスが四つん這いに倒れていた。
「奇襲はよかったけど、もっと短い呪文の魔法を選ぶべきだったね、ほら、まだ始まったばっかだろ?立ちなって」
「……ハ……ハヒ……ハ……ハッ……ハッ……」
否……どうみても呼吸するのも出来ない相手に追い打ちかとは意地の悪い……否、アイツの事だから多分正直に言っているのだろう。
アルファはしばらく油断なくアーシェスを見た後、立ち上がれない彼を見て駆け寄る。
「うわ!ごめん!やり過ぎた!大丈夫か!?呼吸できる!?」
ぶん殴った奴が優しく背中を擦る。
「この勝負アルファの勝ちだ!魔法を過信し過ぎたな!」
デレク先生が勝負の結果を高らかに告げる。
「そんなことよりデレク先生!医者か治癒術師の人必要ないです!?」
慌てた様子のアルファはデレク先生へ進言する。
「放っておけ、模擬戦だと言うのに相手の実力を測ろうとせず、奇襲を失敗したんだ……受けて当然の苦痛だ、実戦なら死んでるんだ、治療が必要なら1人で治癒術師の先生の所まで歩いていかせろ」
まぁデレク先生はこういう人だ、限りなく実戦に近い訓練こそ最上だというタイプ。
しかしその言葉を聞いた後、アルファはアーシェスに肩を貸して――殆どおんぶ状態――立ち上がった。
「おい!放っておけと言ったはずだぞ!成績に影響するぞ!」
デレク先生がアルファを叱りつける。
私も放っておけばいいのに、と思いながらアルファとアーシェスを見る。
「模擬戦に勝る学習方法がないなら!仲間の負傷兵を後送するのも立派な模擬訓練だろ!」
アルファはデレク先生にそう啖呵を切って闘技場からアーシェスと共に出て行った。




