第百十四話学院だから結構年齢層若いよ
俺の魔力ゼロの試験から次の日、朝から俺は大学の講堂のような教室にヤミ姫様と並んで1番前に立たされている。
講堂中の視線が俺とヤミ姫様に集中している。
「はい!今日から当学院に暮らす新しい生徒です!皆さん仲良くするように!」
ふくよかな中年くらい?の女性が声を張り上げる。
彼女はサーハ先生、一応クラス分けとして大体同じくらいの年代が集められるらしい。
そのクラス分けに身分は関係なく、貴族だけではなく才能のある庶民も数多くいるらしい。
「ヤミと申します、よろしくお願いしますわ」
ヤミ姫様の堂に入った所作に慌てる。
俺こんな畏まったこと殆どないよ!
「えー……アルファと申します……以後よろしく」
現在俺の格好は騎士魔法学院の男子制服で、ヤミ姫様は当然のように女子の制服を着ていらっしゃる。
ザワザワと囁く声が聞こえるが、サーハ先生の案内で1番空いている最前列にヤミ姫様と並んで座る。
「さぁ!では講義を始めますよ!」
講義が開始した――
◇◇◇◇
――ゴーン、ゴーンと大きな鐘楼の音が学院内に響く。
「今日の土の魔法学はここまでです、課題も頑張ってくださいね!」
サーハ先生が元気よく言葉を放って出て行く。
授業に関して言うなら……なんもわからん。
固有名詞も名詞も動詞も形容詞もなんもわからん。
四体液ってなんだよ、この液の多寡で得意な四元素の属性が決まるらしいけど……
そんなもんあるわけねーだろ……否、この世界の人にはあるのかもしれないが……
じゃあ何の魔力の反応が無い俺にはなんの四体液も無いのかよ……
初めての授業で心が折れかかっている。
授業が終わり、小休止の時間になるとヤミ姫様に人が声をかけ始めた――主に男子――が、俺の事は見事に無視されている。
当たり前か、片や可憐な少女、片や授業中船を漕いでいた男、しかも年齢層が明らかに上。
俺はきっとこれからずっとボッチ学院生活を続ける事になるのだろう。
そんなことを考えて席を立ち教室の隅で気配を消していると――「あ、あの……アルファ……様ですよね?」――んん?こんな教室の隅の観葉植物未満の俺に声をかける人がいる。
「あぁアルファだ、君は……申し訳ない、初対面ですよね?」
声をかけてくれた彼女の顔を見るが、暗い青色――藍色?紫?――の前髪で目が隠れている。
こんな人一目見たら忘れないんだけどな?でも誰かに似ている……?
「あの、姉がエレスティという神教会の治癒師で……」「あぁ!エレスティさんの妹さんか!お姉さんには滅茶苦茶世話になりました、ホント!お姉さんいなかったら今生きてるかわからないから!」
ペコリと頭を下げると「あ、姉に伝えておきます」俺よりも大げさに深々と頭を下げられてしまった。
「いやいやいや頭を上げてください、恩人の妹さんに頭下げさせたなんて知られたらヤミ様にぶん殴られる」
顔を上げてもらうと、なるほど確かに似ている……目が隠れているので口元とか輪郭しか分からないが……
「ミリルナ、何してんの?そっちのアンタは中途入学よね?」
明るい金髪のツインテールという、この世界の金髪はドリルとかあざとい髪型しかいないのか。
「あ、はい、アルファといいます。バキバキに折られた肋骨と血反吐吐くくらいの内臓打撲を治療してくれた恩人がこの方のお姉様なんスよ〜」
金髪ツインテールはその言葉に疑いの眼差しを向ける。
その目は本当にそんな大怪我してたのかと言っている。
「あ、私!ミリルナっていいます!治癒術専攻してます!」
何とか会話を続けようとミリルナ――エレスティの妹――が名乗りを上げる……が、急に大きな声を出したので視線が集まる。
「俺はアルファ!鉄砲使いではこの世界で3番目の腕前だ!」
対抗して大きな声を出す、ちなみに1番がエリックさんで2番はルミである。
さらに大きな声で上書きすると視線は俺に集中した。
「なによ3番目って、私はスミーア、まぁ戦闘魔法専攻よ」
スミーアが呆れたように言う。
ゴーン……ゴーン……ゴーンと鐘楼が鳴り響き、次の授業が始まるので先ほどの授業で座っていた席に行こうとすると、そこには既にイケメンが座っていた。
まぁ観葉植物未満の俺には最後尾で立ち見が丁度いいのだ。
観葉植物未満の俺がそんなことを考えていると――
「その席、今日は私のお友達の席なの、どいてくださる?」
ヤミ姫様がイケメンに言うと空気が凍る。
「ほら、アルファさんもボサッとせずにこちらにお座りなさいな」
お、おぉ……やっぱりヤミ姫様はパワハラ気質というかヤンキー気質というか……
すごすごとイケメンが後ろの席へ向かう。
すれ違う時に顔を見るが、いやいやいや!すんげぇイケメン!
銀髪というには少し暗い金の混ざったサラサラの髪は、先ほどヤミ姫様にフラれた事でしょんぼりしていたが、そこがまた陰のあるイケメンに仕上がっている。
「どうして離れたんですか?アルファさん?」ヤミ姫様がジトッとこちらへ視線を向ける。
「否、皆ヤミ様に話しかけて、なんか俺、邪魔者な気がして……」
だってそこをどけって圧力が凄かったもん、主に男子から。
「それで新しい女の子の物色ですか?」「人をロミみたいに言うなよ〜、療養中の知り合いの妹がいたんだよ」
ガラガラと講堂の扉が開き、講師が入ってくる。
四体液説に四元素説、天動説だし、授業も魔法の直接的な使い方とかよりも神学的な観点でどうして神はこの魔法を創ったのかを理解してからでなければ魔法は使えないという……冒険者のチンピラでも着火の魔法くらいは使える奴は結構な割合でいた。
アイツラそんな難しいこと考えて魔法使ってたんだなぁ。
地球とどっちが上ということではなく、この世界の常識に俺が適応出来ていない。
特に四元素説は魔法の理論には重要で、魔法を使うにあたって勉強しなくてはならないが――「神が何故このような難解な魔法を創ったのか?」――
どの授業でも全部出て来るであろうキーワードだ。
後、毎日神に祈る事で魔力は強力になるらしい。
レミの事見てから発言しろよ……と俺の知る最強の魔力と武力を併せ持つ女性を想い――否、アイツは別か、と思う。
奇声上げて棒を叩くのが神に祈るお作法なら構わないのだが……
何の話をしても神、神、聖剣、神、神。
ウンザリしてくる。
多分魔法のある世界なので神は本当にいるのだろうが、聖剣を創ったり、地球人を召喚したり、地球人のコピーを創る魔法を創ったり……
この世界の神様という存在に対して、敬意を払わないというわけではない。
元々あった技術的なものでは無い、超能力としての魔法をばら撒いておいて、魔族である極魔王に人間が駆逐されて、神界に攻め入りそうになった所で聖剣の創造と異世界勇者の召喚をさせる……
印象は良くない。
少なくとも神という名の生物的な思惑が見て取れる。
……だが1日目からこの調子ではいけない!俺は真面目に講義を受けて立派な貴人になるのだ!
今は治癒術に関する理論……四体液理論の瀉血とか、血液以外の体液は治癒術であれこれするらしい。
ちなみに使い魔を利用した空中からの観測で、星が丸い事はわかっているらしい。
しかしエレスティの治療は瀉血や四体液に基づいた治療では無かったように思う。
瀉血なんて1回もされてないし……
地球人基準で見ても食事も難しい俺の為に経口補水液を飲ませたり、アスピリンで痛みをコントロールして、肋骨が変形しないようにコルセットも使い少しずつ治癒魔法をかけるという高度な医療体制だった。
後は瘴気説、なんでもフェイ商会が近年魔力鏡という生物ごとに違う魔力の性質を見られる道具を開発し、その瘴気を可視化することに成功したという……ということを今まさに魔力鏡の使い方と共に説明が成されている。
神の次はフェイ商会かよ、リッカ会長天才過ぎだろ。




