第百十二話学園モノ〜?流石に需要なくない〜?
「ハァ、後アルファ猊下への最後の利点だがマリー嬢の捜索にも猊下が常に学院にいる方がいい、各地から情報が集まってくるんだ、特に多くの貴族が集まる学院なら伝書鳩から使い魔便、徒歩での普通郵便、なんでも受け取れるからな、窓口にするなら最善だ」ロミの言葉になるほど、と思う。
今でこそ王宮やロミの私邸に色々情報が集まるようだが、王宮もロミの私邸もそんなに暇な訳ではない。
それなら俺がどこかに拠点を作る必要があるが、それを学院にしようということか。
「最後にアルファ猊下が騎士魔法学院に行く利点として、『銃の勇者』はここにあり、というメッセージを大陸中に流せる……つまりマリー嬢がアルファを探している場合、向こうから見つけてくれる筈だ」
「おぉ!なるほど!」
ロミの言葉に目からウロコが落ちる気分だった。
そうだよマリー側も俺を探してくれてるんだよ、そんな視点は考えた事が無かった。
それなら学院もやぶさかではない、マリーは俺が銃の勇者なことを知っている、つまり目立てば目立つだけマリーの目に留まる可能性が高い。
……探してくれてるよな?会いたいと思ってくれてるよな?マリー。
「と、言う訳で諸々の事情を考慮した結果、アルファ猊下を騎士魔法学院に入れた方がいいという事になった……これでもかなり頑張ったんだぞ」「いよっ!流石ロミ団長!仕事できるいい女!」ロミが立ち上がり俺に近づいてきてボコっと肩パンする。いたーい!
「本当にお前を神教会の総本山に送るとか、色々あって大変だったんだぞ……」
「すまん、大変だったよな……ありがとう」
「あぁ……お前が……アルファ猊下が学院に言ったら今みたいに気楽に肩パンもできんな」
そうだな、お姫様に結局肩パン出来なかった。
「さて、団長との話が終わったら次はこっちですわ、アルファ……猊下から渡されている銃の取り扱いについて相談させてくださいまし」
なるべく空気だったルミが発言する。
渡した武器か……
「ネイビーピストルとM1894ライフルはルミが好きにしてくれ、コピーを作ったり再現するのに使ってもいい」「えぇ!?いいんですの!?」ルミが目ん玉飛び出すんじゃないかというくらい驚く。
「何なら構造解析の為に、予備を渡してもいい……そうじゃなければ恐らくフェイ商会が似たような武器を近いうちに作るだろう……もしくはルミに接触してくるかもしれない、接触された場合は俺に連絡を寄越してくれ」
まだフェイ商会会長のリッカ・フェイについて測りかねている、まだ雷管の開発までは行っていないようだが、アスピリンを合成したことから多少化学の知識があるだろう。
そうなれば連発式の銃を、1つの商会で独占する事になる。
タダでさえ株式会社方式で複雑な収益構造を持つのに、さらに軍事力の強さまで持てばどうなるか分からない。
その時の為に戦力的に均衡するようにしたい。
「お前は早速……」ロミが呆れたように頭を抱える。
「これはマジで必要な措置なんだよ、フェイ商会のリッカ会長は見方によっては危険だ……フェイ商会が雷管の開発をする前にルミの家で雷管の開発をして欲しい」
とりあえずフェイ商会への対抗策として雷管の製法は持っておきたい。
「……わかりましたわ、ワタクシの実家で解析いたします」ルミが頷く
ルミとの会話が終わると「あ、そうだ」とロミが手を打つ。
「ヤミ殿下も学院に通うぞ、アルファ猊下と同じ学年だ、学院内は権力は届かず全員平等という建前だからヤミ様に肩パン出来るチャンスはあるぞ」「マジっすか!?」ロミの話に食い気味に反応する。
「お前……そんなに肩パンしたかったのか……」
ロミがちょっとヒイている。
「肩パンがしたいんじゃなくてお互いに肩パンしあうのがいいの!」
なんか、友達って感じがする。
ヤミ姫様にはあらゆるボードゲームで負けて肩パンされまくったからな、いつか勝たなくては。
「それでは話は纏ったな、食事にしよう」
この3人で食事をするのも今後は難しくなるのだろうか、今日でさえレミは来ていない。
少し、寂しさを感じた。
◇◇◇◇
「アルファさん!お久しぶりです!」
今日は色々手続きがあるとのことで王宮へ来たが、ヤミ姫様が出迎えてくれる。
「お久しぶりです、ヤミ姫様も騎士魔法学院に入学されるんですよね、同級生らしいんでよろしくお願いします」右手を差し出すとヤミ姫様が両手で掴み上下にブンブン振り回す。
「私も突然言われて不安だったんですが、アルファさんがいるなら心強いです」
ちなみにヤミ姫様は女装を続けている……というより産まれた時から女性として育てられたので性自認が完全に女性なのだ。
それでも周りからは殿下と呼ばれ、影では軟弱者……なんて言われたりしているらしい。
それでもシャル王国第1王子で銃の勇者と懇意にしている、ということで表立っては嫌がらせなどは受けてないようだ。
「アルファ猊下、呼びつける形となってしまい誠に申し訳ございません、本日は騎士魔法学院への入学手続きをシャル王が行います」
ヤミ姫様と一緒に百合騎士団の副団長ルルがやって来て、丁寧に説明してくれる。
「普段はシャル王自らが入学証明書をお渡しすることはないのですが、お2人は特別ですので……」ルル副団長が俺とヤミ姫様にどう接すればいいのかわからず、声が控えめだ。
すぐに王城に入り、王様のいる部屋に入る直前「あ、アルファ猊下、私たちは王に頭を垂れますが、アルファ猊下は直立のままでお願いしますね、とロミ団長からの伝言です」今や俺も偉くなったもんだ。
大きな扉が開かれると、3人で国王様の前まで行き、ルルとヤミ姫様が膝を付いて頭を垂れるなか、俺は一応気をつけの姿勢でビシッと制止する。
「神勇者猊下、楽になされてください、ヤミ、面を上げなさい」
楽にしろと言われたので手を後ろ手に組んで股を開き、休めのポーズを取る。
ヤミ姫様は顔を上げ、真っ直ぐに父親……国王様を射抜いている。
「神勇者猊下とヤミを本日付けで騎士魔法学院への入学を許可する、近いうちに学院寮へ引っ越すように」「「はい、分かりました」」俺とヤミ姫様の声が重なる。
入学手続きと聞いて気合を入れてきたが、それだけ言われて王城から退場した。
……どうすんだよ?これから?そんなことを考えていると、ロミがこちらに向かってきた。
「よーし、出てきたな、引っ越し準備はもう済ませてある!さっさと学院へ行け!」
厄介払いが出来てよかったと顔に書いてあある。
まぁ迷惑かけたからなぁ……しかし聞かなければならない事がある。
「引っ越しの準備できたって、アシヌスはどうするんだ?」「……アシヌス……か……しばらく百合騎士団で預かる」ん?ん?今、目を逸らしましたよね?もしかしてアシヌスを忘れてたんですか?
「オイ!一応確認を取った時には、貴族が通うから立派な厩舎があるって話だったじゃねーか!アシヌスは連れて行くぞ!」これは譲れない、他のすべての荷物……青銅のナイフ以外は全部捨ててもアシヌスだけは連れて行く。
「貴人の通う学院だぞ!そんなところの立派な馬に紛れて、小さなロバが1頭居るのはおかしいだろう、だからこっそり厩舎へ連れて行く予定だ」
ロミの言葉に得心する。
そらそうか、立派な馬の列に背の低いロバが混ざってたら確かにヘンだ。
「……申し訳ございません、アルファ猊下がアシヌスを学院に連れて行くことにこれ程こだわりになっておられるとは、思っておりませんでした」
ロミが茶化すようによそよそしい態度を取る。
「お前らと同じくらい、大事なロバだからな……でもお前ら百合騎士団に何かあったら必ず助ける、それだけは忘れないでくれ」
……友人との別れは余り実感が沸かなかったが、今更ながらにセンチメンタルになる。
「……私達も同じだ、アルファに何かあれば必ず私達はお前の味方になる」
ロミが俺の言葉に応えてくれた。




