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第百五話やっぱ飲もうぜ!オイオイ酒だぜ

 イレイアさんに付いていくと、立派な扉の部屋の前で止まる。


 ――コンコンとイレイアさんが扉をノックする。


「ロミ団長、銃の勇者様とネリー様がお出でです」

 その言葉にロミのいるであろう部屋の中でガタガタガタと何か物を落とすような音が聞こえ、バタバタと走り回る音も聞こえてしばらく――


「大丈夫だ、入ってもらえ」

 本当に大丈夫なのだろうか……


 イレイアさんが扉を開き、恐らく落としたのを乱雑に拾ったのであろう書類の束などが積まれたテーブルにロミはいた。


「それでは、私はこれで」

 そう言うとイレイアは扉を閉めて外へ行った。


「お前達!貴族の女性の部屋へいきなり訪問する奴があるか!ネリーはまだいいとして、男のお前が来たらややこしいんだよ!」

 突然の訪問にロミはご立腹のようである。


 まぁはっきり言って今の俺がかなり非常識な行動を取っている自覚はある。


 しかしながら常識的な行動を取っていては、マジに()()()と会えなくなる。


 なので、しばらく非常識になろう。


「オメー、そんな事言ってアシヌスも旅の成功報酬も貰ってねぇーんだぞ!後!ヤミ姫様護衛成功祝いパーティとかお前とルミとレミの3人と……当然ヤミ姫様やネリーも入れてやろうぜ!」

 流石にヤミ姫様を誘うのは無理があるか……?


 しかし希望だけは出しても損はないだろう。

 

「お前なぁ……私達もヤミ殿下も、王宮貴族へのお披露目会だの正式な叙勲式だの……忙しいんだぞ」

 ロミが頭を抱えながら発言する。


 しかしこういう時のロミは割と何とかならないか考えてくれている。


 まぁロミにダメって言われたらそれまでなんだが……


 しばらくロミが検討していると。


 コンコン……ガチャ。


 ノックして返事も待たずに誰かが入ってくる。


 反射的に銃へ手が伸びそうになったが、見覚えのある金髪縦ロールだったので手を戻す。


「アルファ、来てましたのね、ちょうどそこでイレイアと会って聞きましたわ、事前に連絡を入れてくれれば時間くらい割きますのに」

 ルミが事前に連絡が無かったことに不満を漏らす。


 そして手に持った()を俺に見せてくる。


「ネイビーとかライフルをどうしようか悩んでましたのよ、団長の話の後でいいので相談させてくださる?」

 コルトネイビーが2丁付いたガンベルトを見せられて思い出す。


 そういや渡したまんまだったわ。


 どうしようか……?ルミの家は鉄砲鍛冶が盛んな領らしいので、もしかすると魔法も使えば再現されてしまうか……?


 特に雷管は発想さえあれば魔法ですぐ再現できそうだ。


「分かった、後で話そう、そんな事より!今ロミに話してたんだが、ヤミ姫様護衛成功記念パーティをお前ら3人とネリーも入れてやろうぜ!可能ならヤミ姫様も参加してもらおう!」

 その言葉に、何故ロミが頭を抱えているのかルミは理解したようだ。


「はぁ……貴方ねぇ、今の立場、分かって言ってますの?」

 今の立場か……


「分かってない!権力基盤がわちゃわちゃしてる隙に強硬しようぜって話!」

 俺の元気いっぱいの返答に、ルミまで頭を抱える。


 しかし神教会の勇者として本格的に祀り上げられれば、多分、もう皆と対等の付き合いはできない。


 なのでこのワガママは、()、通さなくてはならない。


「うーん……今ならヤミ殿下は王宮外の迎賓館にいらっしゃるのですわよね?」

 ルミがロミへ確認を取る。


「あぁ、初の第1王子のお披露目だからな、シャル王国中から貴族を呼んでいる、それまでは迎賓館で滞在されている……だが国王の懐刀の国王騎士団が護衛をしているので会うのは難しいぞ……」

 ロミは首肯を返しルミへ返答するが、既に護衛任務は別の騎士団に移ってしまっているらしい。


 国王騎士団は正真正銘、シャル王国最高の騎士団らしいので、正攻法での交渉は面倒そうだし、かと言ってこっそり会いに行けるような護衛はしてないだろう。


「そうかー、じゃあ俺1人で1回聞いてくるよ。あ!ルミの銃はしばらく持っとけ、ネイビーに関しては研究しても大丈夫だから、ライフルは多分難しいと思うし」

 そう言ってロミの部屋からタッタカター!と走って出ていく。


「おい!そんな友達の家に行く子供のようなこと――」


「1歳児だから間違ってませんー!バブー!後ロミはネリーの相手ちゃんとしてやれよー」

 ロミの引き止める声を後ろに聞きながら、そのまま百合騎士団の詰所から飛び出す。


◇◇◇◇


 王城に程近い、でっかい迎賓館に着くと何やらガタイのいい男性達が、窓の隙間から見える屋内や正面門から見える園庭をバタバタと走り回っているのが見えた。


「ごめんください、ヤミ姫様……ヤミ殿下か、いらっしゃいますか?」

 とりあえず2人いる門兵の片方に声をかける。


 門兵の人は滅茶苦茶面倒そうな顔を向けてくる。


「ここは貴様のような下賤な者が来る所ではない!さっさと帰れ!」

 門兵の人の最もなお叱りを受ける。


 普通事前に約束してから来るよな、こういうのって。


 ていうか、今の俺ってヘルメットにプレートキャリアにライフルに……とカチコミに来たと思われても仕方が無い格好だ、問答無用でぶん殴られないだけ丁寧な対応だ。


 俺が話しかけた方とは別の門兵さんが訝しげな顔をして、俺の事をしげしげと眺めている。


 うーん、どうしようか、と百合騎士団から走ってきたので蒸れてきたヘルメットを外して考える。


 黒い髪が露出した瞬間、訝しげに俺を見ていた門兵さんが物凄い驚いた顔をした。


「し……神勇者猊下(しんゆうしゃげいか)!?どうしてこんな所に!?」

 ドドドッとこちらへ走ってきて片膝を付いて頭を下げる。


「おい!お前も早く礼の姿勢を取れ!俺は裁判の人払いに参加してたんだ!神勇者猊下に間違いない!勇勇者聖下(ゆうゆうしゃせいか)と同格の神教会の勇者様だぞ!?」

 その言葉に慌てて俺を叱っていた門兵さんが膝を付く。


「も!申し訳ございません!まさか神勇者猊下とは思いもよらず……」

 声は震え、顔は真っ青になってしまった。


 流石にこちらも焦る。

 

「いやいやいや、そこまでしなくていいよ!何の連絡も寄越さずに来た俺が悪いんだし!」

 膝を付いた2人に慌てて立つように促す。


 当たり前だよ今の俺は非常識なのだ。


 立ち上がった2人の門兵さんに改めて話を聞く。


「ヤミ殿下にお会いしたいんだけど、取り次いで貰えますかね?」

 そう言うと、2人の門兵は顔を見合わせて何とも言い難い表情を作る。


「……じょ、上位の者に取り次ぎます、少々お待ちください」

 そう言って片方が迎賓館の中へ走っていった。


「門兵さん、お1人なんですから俺のことなんか気にせず仕事を続けてください」

 片膝を付いたままのもう1人に仕事に戻るように言う。


 別に業務妨害をしに来たわけではないのだ。


 恐る恐るといった感じで、持ち場であろう正門前に立ち上がって、槍の穂先を立てる。


 手持ち無沙汰となり、彼と正門を挟んで並ぶ。


 HK416をロー・キャリー・ポジションで保持する。


 完全に銃口を真下の地面へ向け、スリングに荷重を持たせて力を抜く。


 端から見たら、俺も門番の1人のように見えるだろう。


 門兵が気にするようにチラチラ見ているが、声は掛けてこない。


 ボケーっと前方を警戒する……否、しなくてもいいんだけれども。


 しばらく待っていると、ドタドタと中から偉そうな人が出てくる。


「神勇者猊下!このような所で!なぜ門番をされているのですか!?」

 なんか派手な勲章を付けた、ガタイのいい老齢に差し掛かったナイスミドルに質問される。


「あー、そのー、門兵さんに取り次ぎをお願いして1人抜けちゃったので代わりでもと……」

 マジでそんな感じで暇つぶししていただけだ。


 特に理由も無ければ意味も無い。


 ナイスミドルは頭痛でもするように、コメカミを揉む。

 

「そのような事をなさらないで下さい、私たちは勇教徒ですが、その信仰対象にして教皇の勇勇者聖下と同格の神勇者!猊下の行動は勇教会をも貶める事になるのですぞ!」

 そこまでは頭が回ってなかった、そりゃ自分の所のトップと同じ役職の者が門番なんてしてたら、その程度の役職と思われてしまうか。


「申し訳ない、本当に戯れ以上の意味は無かった。ヤミ殿下へはお取次ぎ願えますか?」

 とりあえず謝って、ヤミ姫様に会えるか聞いてみる。


 するとナイスミドルから冷や汗が噴き出し、それが流れて顎からしたたる。


 あれ?もしかしてまた面倒事?

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