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第102話深謀遠慮の商人

「待ってくれ、ロミ嬢とエードル辺境伯は俺の口車に乗せられただけだ、捕まえて罪を問うなら俺だけにしろ」

 アルファさんから発された言葉は、私達全員へ火花が飛ばないようにする為の優しさだ。


 その言葉でロミさんはまだ何か言おうとしましたが、アルファさんが発言を遮ってアシヌスを任せる。


 私のせいだ、フェイ新聞の一面に『銃の勇者』という言葉をデカデカと出してしまった。


 アルファさんは何も悪くないのに、私達の為に大人しく縄をかけられる。


 私……ネリー・スーのいつもはよく回る舌は、どうすればいいのか分からなかった。


 王城への入城時に、私は馬の踵を返して百合騎士団と逆走する。


「ロミさ〜ん!私でも手を考えるので!アルファさんの弁護お願いします〜!」

 まずフェイ商会へ行かなくては、フェイ商会にはお抱えの法務集団がいる。


 シャル王都支部であれば、人員は揃っていることだろう。


 恐らく異端審問は数日以内に開催されるはずだ。


 裁判は民衆の娯楽の為に公開される、なので前触れが出される。


 娯楽の為に利用するならば、しばらく宣伝期間が設けられる。


 特に今回は炎飛竜を撃ち落とし、万を超えようかという魔物を蹴散らした『銃の勇者』の裁判!


 きっと見世物として最高の物になるだろう。


 フェイ商会シャル王都支部へ到着した私は、馬を降りて中へ入る。


「支部長はいますか!?リッカ会長から委任手形をいただいたネリー・スー記者です!急ぎでお話を!」

 私の名乗りと手形を見た店番がすぐに支部長を呼んできた。


「初めましてネリー・スー記者、シャル王都支部長のローラと申します……やはり来ましたか」

 奥から年嵩の女性が出てくる。


 ローラは落ち着いており、私がここへ来る事を事前に予想していたようだった。


「お話はリッカ会長から伺っております、既に会長は勇教会と神教会のどちらに対しても動き始めています」

 ローラ支部長の言葉に思わず演技ではない驚きをしてしまう。


 普段は絶対に見せない、声も出ない驚愕。


「恐らくフェイ新聞で『銃の勇者』を一面に掲載する前……いえ、恐らくネリー記者が彼と接触した時から既に『銃の勇者』を調査し始めていたようです」

 考えれば、そうだ、初めて報告した時から突然リッカ会長直々に指示が降りてきた。


 私は百合騎士団がお忍びで護衛している御人を王族と見抜いたからこそ、この手形を私に授けたのだと思っていた。


 それが、私の連絡……連発式の鉄砲を使う冒険者という情報の時点で、もし銃の勇者ことを知っていたとしたら?


「既にフェイ商会の預かり屋……安い紛失保証のない方ね、に預けられた資料からある勇教会の牧師の物を全て調べ上げるように言われているわ……『銃の勇者』を調べていた歴史家の物よ」

 そんな人物がいたのか!?


 だとすれば、知っていて当然。


「リッカ会長の深謀遠慮がどの程度なのか分からないけれど、3日後に()()ヴォーグ枢機卿(すうききょう)が王都へ訪れるわ」

 勇教会は聖剣の勇者のような、当時の神の奇跡を受け継いだ者がいるからこそ、勇者以外の役職は全て平等に『牧師』。


 しかし神教会は教皇を頂点として階級制度が存在する。


 そして『枢機卿』とは神教会に数人しかいない、教皇を決める選挙へ投票権を持ち、同時に自身も教皇となる可能性のある、神教会のNo.2の役職。


 そんな人物が偶然、アルファさんの裁判が行われるであろう日の直前に王都へやってくる?


 あまりにもうまく行き過ぎている。


「リッカ会長からの伝言よ、“ヴォーグ枢機卿は黄金色のお菓子が好きだからシャル王都支部の10%までのお菓子は使ってもいいよ、だから立ててもらうのに手を貸してもらって”」

 シャル王都支部の10%の金!?一体どのような大金なのか想像もつかず、頭が痺れる感覚までする。


「た……立ててもらうのに手を貸してもらってとは……何を――」


「神教会の勇者、神勇者の地位よ」

 なんということだろう……そう、神が与え給うた聖剣と同格の、神の奇跡。 


「勇教会も神教会も一枚岩じゃない、リッカ会長からの話では一部の上位の者……現在の聖剣の勇者様への権力の一極化に不満を持つ者や、神教会には無い人魔戦争時の神の奇跡の物証を欲している者が少なからずいるということよ……」

 もしこれでアルファさんが神勇者となれば、神教会と特に懇意にしているフェイ商会……否、リッカ会長の権力基盤は盤石等という話ではない。


 リッカ会長は一体どこまで見通しているのか。

リッカ会長「元々金と権力にガメつい奴らと付き合っててよかったー!それにしてもあぶねー!ヴォーグ枢機卿(あのデブ)が愛人の所に行ってなかったら詰んでた!まじヤバかったー!」

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