第百一話いいやつだったよ、挨拶もちゃんとするし
「彼が『銃の勇者』を名乗ったのは、城塞都市が落とされないようにエードル辺境伯と連携を取る為だったのです!その称号によってエードル辺境伯は百合騎士団との連携を決め、結果的に炎飛竜の討伐と10,000匹を超えようかという魔物の軍勢を退けることに成功したのです!」
ロミが冷静ながら力強い言葉で裁判官に説明する。
「黙れ!何が『銃の勇者』か!そんな者は歴史上おらんし、『勇者』を騙る罪がどれ程の大罪か貴族たる勇教徒が分からぬか!?」
俺は只今、絶賛異端審問裁判中です。
王都に堂々と凱旋した後、勇教徒の偉そうな人が来て、兵士へ俺を拘束するよう指示され、あれよあれよと言う間に公開裁判所で『勇者』を騙った罪とやらで見世物にされている。
弁護側はロミ達とエードル辺境伯、対する告訴人はシャル王国でかなり偉いらしい勇教会の人だ。
事は王都凱旋時まで時間を巻き戻す事になる。
■■■■
――シャル王国王都――
「なぁ……歓迎してくれるのは嬉しいんだけどさ……歓迎し過ぎじゃない?」
戦勝パーティの数日後、エードル辺境伯領から炎飛竜の首をデカい荷車で運ぶ準備が整ったということで、王都にやって来たのだが……
「すげえ!本当に炎飛竜の首だ!竜殺しの剣士は実在するのか!?」
「オイ!あの黒い髪!銃の勇者様じゃないか!?」
「あの馬車の中に第1王子がいるのか!?」
「百合騎士団も王子をよく守ったなぁ!」
ワイワイガヤガヤと物凄い数の人々が王城までの道で、俺達を見る為に所狭しと並んでいる。
「いや〜、フェイ新聞で一面に煽り記事をだしたんですが、まさかここまで大事になるなんて!やっぱり銃の勇者と女性だけの百合騎士団が任務を成し遂げたというのがウケたみたいですね!」
アシヌスに乗った俺の隣をユーリィ号――フェイ商会の馬――に乗ったネリーが話す。
コイツのせいかよ、新聞の宣伝効果すごすぎだろ。
兎にも角にも、ヤミ姫様の護衛任務も王城まで連れていけば、晴れて任務完了である。
そうなれば皆とも別れる事になる。
ロミ、ルミ、レミ、一応ネリーも……彼女等以外では達成できなかっただろう。
陽動部隊も傷だらけの鎧や汚れの落ちない服を着ている所から、修羅場をいくつもくぐり抜けてきたのだろう。
だが……うん、ヤミ姫様の護衛は誰一人欠けても失敗していた。
聞いている話ではこのまま王城まで行って、国王様に炎飛竜の首を献上するのだとか。
そしてそのまま感傷を抱きながら王城まで行き――
「止まれ!貴様等!」
凱旋した全員が王城の正門の所で止められる。
豪奢な飾り付けの帽子と金属のジャラジャラとついた服を着た、痩せぎすの男が兵士を引き連れて俺の所まで真っ直ぐ来た。
「貴様が『銃の勇者』か?」
有無を言わさぬ質問だった、答えて当然、命令に従って当然、といった態度で、文字通り偉そうな人だった。
「はい、そう名乗らせてもらってます」
首に手をやり、頭を下げて応える。
まぁその偽物の人造生命なのだが……
なんか言われるのだろうか?一応炎飛竜討伐の立て役者なので期待してもいいだろう。
「勇者を騙る不届き者を捕らえよ!」
ハァ!?と思う間に周りにいた兵士達に取り囲まれる。
「な!?何を言い出すのです!ラルフ牧師!?」
ロミが大きく声を出しながら、先頭を行っていたエードル辺境伯と共に、慌ててこちらに馬を向けて駆け付ける。
「何を言い出す?当然の措置だ、勇者とは聖剣に選ばれし者で、決してこのような薄汚い冒険者ではない」
あー、なんかキリスト教で『オレ、ナザレの某聖人です』なんて言ってる奴が新聞の一面を飾ったりしたら、地球でも時期によってはとっ捕まって火炙りだろう……
火炙り……あれ?これは逃げた方いいのでは?という考えが頭を過ぎるが――
「彼がその称号を名乗ったのは我々を護る為に致し方無かったのだ!実際彼の言葉と力が無ければ我が領は炎飛竜で突破されて王都までカリス王国の手が迫っていたのですぞ!?」
エードル辺境伯が庇ってくれる、確かに俺が『勇者』という肩書きを使わなければ、エードル辺境伯の協力を得られず、炎飛竜討伐も1万匹近い魔物を蹴散らすことも出来なかったはず。
「だからどうしたというのだ?『勇者』を騙る不届き者に違いはない、異端審問にかけてその者を罰するのは当然の措置だ」
話の通じないタイプだなぁ……でも遵法精神に忠実な人と見ることもできるかなぁ。
しかしその遵法精神の為にギロチンだの火炙りだのはごめんだ。
うーん、スモークグレネードを投げて逃げるか?否、だがそれではマリーの情報を得る為の旅が無駄になる。
とりあえず、出していた武器類をこっそりインベントリへ入れ、入り切らない物は購入画面で売却する。
青銅のナイフもちゃんとインベントリへしまう。
これで今の俺は迷彩服だけのコスプレ野郎になった。
「貴様等!勇教徒であるにも関わらず!勇者の称号を騙る者に与したこと!お前たちも異端審問にかけてもよいのだぞ!」
エードル辺境伯とロミはその言葉に怒りも露わに反論する。
「構わん!彼がいたから領を守れた!王都への壁となったのだ!彼がいたから炎飛竜討伐という偉業を成し遂げたのだ!」
「ここまでヤミ殿下の為、我々の為に身を粉にして働いてくれた冒険者だぞ!異端審問等!彼の働きを考えれば怖くもない!」
これは拙い、この2人が激怒してくれているのは嬉しいが、それで2人に火の粉がかかるのは避けたい。
「待ってくれ、ロミ嬢とエードル辺境伯は俺の口車に乗せられただけだ、捕まえて罪を問うなら俺だけにしろ」
面倒臭いが、捕まることにする。
「おい!アルファ!お前――」
「ロミ!アシヌスを頼むよ、俺とずっと旅してきた歴戦のロバだ」
ロミが何か言おうとしたのを止めて、アシヌスから降りて手綱を馬上のロミへ渡す。
そして偉そうな勇教会の人に向かう。
兵士が俺を取り囲み、縄をかける。
本当はもっと乱暴にしようとするつもりだったようだが、殴ったりした瞬間、ロミとエードル辺境伯がとんでもない形相で兵士へ抗議する。
縄をかけられた俺はそのまま兵士達に連行されることとなった。
◇◇◇◇
ロミとエードル辺境伯の目がなくなった瞬間、衛兵達は腹を殴ったり、背中を殴ったりと、まぁ縄をかけられて自由のきかない俺に対して乱雑に暴力を振るい、身ぐるみ全て剥がれて地下牢に乱暴に放り投げられた。
くっそー、痛ってーなー。
地下牢は薄暗く寒い、寒いのはパンツ一丁な為もあるが……
A3Wの装備は彼奴等が持って行った迷彩服のみなので、物騒な事にはならないだろう。
しかし中世?近世?の地下牢というだけあって、トイレなんて付いておらず、ネズミが以前ここに入れられていた人の物であろう黄色い液体を舐めていたり、ゴキブリがそこら中這い回っていたり、すんごい臭い、汚い。
どうするかなぁ、俺はただマリーを探したいだけなのに牢屋行きですよ。
選択肢はいくつかあるが……
1.ロミ達百合騎士団とエードル辺境伯が弁明してくれて、無罪放免になり堂々と日の下を歩く。
2.このヤクザな地下牢の扉の鍵をA3Wのキーピックツールで開けて、こっそり王都を去り、単独でマリーを探す。
3.このまま異端審問を受け、異端認定されて火炙りにされる。(異端認定されないかもしれないが、地球での異端審問の例を見ると希望は薄いだろう)
……実のところ、A3Wの重要な仕様がフェルセブスミーから城塞都市にかけて判明している。
それは、A3Wの武器によるキルポイントは誰が使っても俺に入る。
当然ゲーム中ではそんな仕様ではなく、武器を使った者にポイントが入っていた。
何が言いたいかというと、魔物10,000匹弱のポイントがゴッソリ俺に入っているのだ。
なので選択肢2で牢屋を出て、しばらく単独行動は可能だろう。
とはいえ、どの選択肢を実行するにも1番の選択肢の希望が無くなってからだな。
つまりしばらくはこの臭い牢屋にパンツ一丁なわけだ、ぴえん
そして数日後、冒頭へ戻る事となる。




