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第九十七話一見紙一重、実際イージー

「どうした!?発射できてないようだが!」

 ルミのスポッターをやめて壁上を駆けずり回る。


「す、すみません!弾が上手く装填できなくて!」

 ぶっつけ本番なのだ、しかも命のやり取り、慌てるのも仕方ない。


「まず、シリンダーを開けてゼンマイ回そう、回そうとしても回らなければもう巻かれているから、1発ずつゆっくり確実にしよう、敵は壁を登れないみたいだから焦らなくていい」

 困っている百合騎士団員のサポートをして回る。


「キャア!」

 ドンッドンッドンッと叫び声とショットガンを乱射する音が聞こえる。


 そちらを見れば、炎飛竜がいなくなったことでまた近付いてくるようになった鳥の魔物に襲われ、慌てて発砲していた。


 俺はAK-47を構えて、鳥を撃つ。


 鳥は即座に墜落した。


 鳥に襲われていた団員の所へ急行する。

 

「ケガは大丈夫か!?撃つ時は爪や(くちばし)が当たりそうな距離まで引き付けて落ち着いて撃つんだ」

 爪で引っかかれたのであろう腕の傷へ購入画面(ショップ)で購入した圧迫包帯を巻き付けて止血する。


「ちゃんとした処置は後でしよう!戦いが一段落したら必ずケガを申告しろよ!同じ班の2人も遠慮なく申告するよう言い聞かせてくれ!」

 そう言って他に困っていそうな班が無いか見渡す。


 そう思っていると、ズドーン!ズドーン!とグレネードランチャーの物ではない大砲の射撃音が響き始めた。


 なんだ!?と思ったら、エードル辺境伯の偵察隊の人が俺の所へ来る。


「アルファ殿!壁内の大砲を使用し始めました、炎飛竜がいると破壊されるので奥に納めていたのですが、炎飛竜が倒されたので大砲を撃ち始めています!」

 コレだけ立派な城塞都市の壁なら確かに大砲くらいあっても不思議ではなかった。

 

「助かる!これで更に数を減らせる!」

 偵察隊の人へ返事をする、恐らく今使うのが最も効果的だ、もはや全方位魔物の死体の山だ。


 しかし百合騎士団に配ったグレネードランチャーの榴弾ももうすぐ弾切れになる。


 だが、炎飛竜が陥落し、囲んでいた魔物達が見る見る内に砲撃で減っていく。


 もうすぐだ、自身の身を守るためか、城塞都市の門を破る為かは分からないが――魔物を1点に集める命令を出すはず。


◆◆◆◆


 ――ドゥーラ領主本陣――

 

「炎飛竜がやられました!魔物も門を破るには既に数が減りすぎています!」


「まるで火山でも爆発したようにそこかしこで爆発しています!爆発したら10匹単位で魔物が死んでいますぞ!」


「壁内の大型大砲も使ってきています!護衛のオーガも正確な攻撃で死亡して、邪魔で撤退も難しいです!」


 ……どいつもこいつも、慌てた様子でひっきりなしに報告を寄越してくる。


「何を慌てる、俺の覇王たる魔法があれば魔物等、また集めればいいだけだ、炎飛竜がやられたのは想定外だが……次はもっと大型の竜を使役すればいいだけだ……こちらの人間の被害は?」

 王とはどっしりと構える、別に今回撤退しても敗北ではない。


「た……確かに人的被害は0ですが……」

 臣下の報告に鷹揚に頷く。


 1度、領地に戻って只管魔物を送ってやるのもいいかもしれない。


 俺は立ち上がる。


「しかし!我が臣下達の不安を払うのも主の役目というモノ、魔物を集め、1度我が領へ戻る事としよう」

 天幕から出て状況を確認する。


 まさに死屍累々といった光景が広がっていたが、消耗したのは魔物のみ。


 今回は我が領の森の中に生息する比較的中型の魔物を地上に配したが、今度はもっと大型の魔物で奴等の城の門を一気に破ってしまおう。


 まぁ様子見には十分な成果か。


 魔物共を1度本陣に集め、防御をさせつつ我が領へ戻るとしよう。


 身体の中で支配者の王たる魔法の魔力が高まるのを感じる。


 砲弾の中を進むのだ、恐怖心の無い強力な命令を出すことにする。


 スゥーと息を深く吸う。

  

「全て()()()()()()()()()()()()()()

 その命令をした瞬間――胸が爆発したのでは無いかという衝撃を感じ……永遠に意識は闇に消えた。


◇◇◇◇


 ズドオォォン――ッ


 ルミのAWMから発射した.338ラプアマグナムの銃声が響き、そちらを見ると敵の豪奢な鎧を着た指揮官らしき男が胸に赤い花を咲かせて倒れていた。


 そして変化は突然だった。


 正門、裏門、側壁にいる、まだ大量の魔物が一心不乱に敵の本陣へ集まり始めた。


 命令を出した後に仕留めたか!流石ルミ!


 敵の本陣の者達は逃げようとするが、濁流と化した魔物達に押し戻され、魔物を殺して逃げようにもその圧倒的な物量で無理矢理1箇所に集められる。


 もはや密集しすぎて東京の電車の通勤ラッシュがガラガラに感じるほどの酷い押し合い圧し合いをしている。


 ここまで1点に敵が集中すれば――!


 俺は偵察隊の隊長と思しき人物の元へ走る。


「オイ!アンタ偵察隊の隊長さんだよな!?ここまで1箇所に集中すれば、騎馬隊で蹴散らせるか!?」

 俺の声に、偵察隊隊長はハッとした顔に戻る


「あぁ!これなら蹴散らしてやれる!すぐに騎馬突撃の準備をするよう連絡する!」

 偵察隊隊長の言葉に頷き、拡声器を取り出す。


「わかった!すぐに発砲を止めるよう言って回る!壁内の大砲へはそっちから連絡してくれ!」

 偵察隊隊長が頷いたのを見て、走り出す。


「発砲停止!発砲停止!騎馬突撃が始まる!発砲停止!」

 叫びながらロミの下へ行くと、ロミがフレアガンを上空に撃つ。

 

「総員!発砲停止!騎馬突撃が始まるぞ!」

 そしてロミも拡声器を手に持ち、指示を出すと爆発音が静かになっていく。


◆◆◆◆


 ――シャル王国エードル辺境伯領城塞都市正門前広場――


 

 ギイィイイイと軋む音を立てながら、正門が開く。


 先程まで激しい砲撃に晒されていたであろう道は、死屍累々でむせ返る程の血の匂いが充満していた。


 残った少数の魔物は何故か敵の本陣の1箇所へ猛烈に集まっており、こちらには目も向けない。

 

「凄まじいな……昨日は飢え死にまで何日か数えていたのが嘘のようだ」

 銃の勇者、疑う要素はもう無くなった。


 彼の奇跡は勇教会の勇者の聖剣に匹敵する物ではないのか……


「坊ちゃま、彼等は言った通りの事をしました、最後の一手をお願い致します」

 隣のクリントが自身の騎馬上から声を掛ける。


 頭に血が上りすぎるのが難点だが、その代わり老いて尚、勇猛果敢に最前線に立つ。


「皆の者!炎飛竜を斬る剣士!万を超えようかという魔物を蹴散らした銃の勇者の奇跡を使い、百合騎士団が拓いた道だ!ここまでしてもらって!我々が怯える訳にはいかんよなぁ!!」

 私の言葉に騎士達がざわつく。

 

「我々騎馬隊はシャル王国最強!突撃いぃぃぃ!」

 ――ウオオオオオ!


 凄まじい量の喊声が上がり騎馬突撃が開始される。


「我等騎手にして馬也!我等全て1つの騎馬也!」

 騎馬突撃の魔法を唱える。


「「「「我等全て我なり!」」」」


 300騎による騎馬隊が1つの魔法を唱え、発動させる。


◇◇◇◇


「すげぇな、300人で1つの魔法を使うとこんなに強力になるのか」

 エードルさんの騎馬突撃は大きな青い炎の1頭の馬となり、超密集状態の魔物達を灰に変えていく。


「アルファ、アレは特別だ、このエードル辺境伯の直参の騎士たちが連綿と鍛え続けて来た結果、完成させられた戦略魔法だ」

 ロミがデカい炎の馬を見ながら教えてくれる。


 魔物も人間も分別なく灰に変えていく。


 本陣にいたであろう人間達は逃げ出そうと必死に周りの魔物を斬り殺したりしているが、如何せん魔物の数が多くて誰一人逃げられず、エードル達の炎の馬に灰に変えられていく。


「……そういえば、レミはどうした?アルファと一緒じゃないのか?」

 ん?レミ?


「否、俺も見てないけどロミの所に戻ってないのか?」

 俺のその言葉にロミの顔色が青くなり、その顔色をみて俺も青くなる。


「「炎飛竜の所!」」

 慌てて炎飛竜の死骸の所まで駆けていく。


 もう壁際には魔物は1匹もいない。


 ――レミは炎飛竜の死骸の傍で立ったまま気絶していた。

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