第九十五話テメェなんてこわくねえ!
「では、作戦の概要を説明します」
エードル側のメンバー5人と百合騎士団側のメンバー4人へ作戦を伝える。
特に今回の作戦はレミがキモなのでレミにも本陣へ来てもらった。
百合騎士団側は信号機とピンク髪のルルである。
エードル側は騎馬隊の副長や歩兵の位の高い者が参加している。
「まず、壁上から百合騎士団が俺の出した武器で魔物共の数を減らしていきます、そうすれば鬱陶しくなった操っている奴は炎飛竜を投入してくる……勿論レミの剣が届かない場所からの火炎放射で威嚇してくる可能性が高いです、炎飛竜が来なければそのまま魔物の軍勢の数を削り続ければいい」
そしてここからが、レミがいることが前提になる。
「レミ、俺が炎飛竜を空から落とせば首を斬り飛ばせるか?」
俺の質問にレミは顔を上げて、回答する。
「前肢を斬った感じ、斬れる、これは斬れるかもじゃない、確実に斬れる」
レミの言葉は自信満々というわけではなく、ただ斬れたから斬れるだろうという事実を伝えただけだ。
その言葉は頼もしい。
「じゃあ後は簡単だ、俺が落としてレミが斬る、そして百合騎士団の攻撃……砲撃をそのまま続ける、そうすれば炎飛竜や魔物を操っている奴は必ず出てくる、そして人間を退却させる壁にするか、一気に門を破るかする為に魔物を集める命令を出す筈だ」
次はルミの方を見る。
「前に魔法の残滓もわかると言っていたが、ルミの使い魔で支配の魔法を使おうとしている奴はわかるか?」
俺の言葉に頷き、カウボーイハットと金髪ドリルが揺れる。
「可能ですわ、ワタクシが支配の魔法が使われる瞬間に撃つということですわね」
ルミは作戦の内容を早くも理解し始めたようだ。
「その通り、砲撃にもビビらないような強力な命令が発される……その瞬間に魔物使いを射殺する」
恐らく強力な命令は命令者の死後も残ろうが、残らなかろうが後は簡単。
命令ができなくなった魔物を百合騎士団が迫撃砲等で削れるだけ削り、最後には――
「魔物使いを倒したら、後はもう烏合の衆――何の作戦行動も取れなくなった魔物を百合騎士団の砲撃で可能な限り減らす、その後エードル辺境伯の騎兵隊で人間のいる本陣を蹴散らしてほしい」
騎兵の突破力による反撃、これで人間である相手の心を完全に圧し折る。
魔物の種類は多種多様だ、騎兵による突貫攻撃を受ければ勝手に逃げていくか勝手に争うだろう。
「なるほど……魔物の量は想像を絶するぞ、1万はいるかもしれない、銃の勇者殿の宝具を百合騎士団が使えば全滅させることも可能だと?」
その言葉に首を横に振る。
「精密に狙って攻撃できる数は少ないです、全滅させる為には時間も弾も消費し過ぎます、エードル辺境伯の騎馬隊ならその問題を解決できます」
真っ直ぐエードル辺境伯を見ながら応える。
エードルは俺の言葉に目を閉じてしばし考える。
「わかった!そちらの作戦に乗ろう!ただし、私の偵察隊も壁上から騎馬突撃可能か監視させてもらう」
力強い返事に安堵する。
これからほんの数時間で百合騎士団に軽迫撃砲の使い方と銃の使い方を教えなければならないのだ、エードルと揉めることなく決まったのは僥倖だった。
「ありがとう、偵察隊に関してはむしろお願いしたい、騎馬隊は1番効果的な時に出て欲しいから、偵察隊とも連携して飛び出して欲しい」
騎馬隊の突撃は強力とよく聞くので、魔物を露払いして人間の陣地を蹂躙してほしかったのだが、どうなったら騎馬隊が有利なのかなんてよく判らなかった、偵察隊の話は渡りに船だ。
そこからそれぞれがやるべき事を始めた。
◇◇◇◇
「百合騎士団!21名7班!全員集まりました!」
炎飛竜が去ってしばらく、消火活動が一段落した所でロミが百合騎士団を招集し、全員が揃った。
今、俺達がいるのは裏門の直ぐ側の広場だ、城塞都市というだけあって門へ入ると何の障害物もない……恐らくここで兵士を集めたり、門が突破された時もこの広場で迎撃するのだろう。
集められた百合騎士たちは皆、泥や煤、消火剤等で汚れており、百合とは程遠いが全員勇ましい顔をしていた。
「これより!ここにいる銃の勇者!アルファ・ワンより全員に宝具を貸し出す!この宝具の使い方でこの都市の生死が決まるぞ!総員しっかり覚えろ!」
ロミが号令をかけると全員の視線が俺に集まる。
「……えー、只今ご紹介に預かりましたアルファ・ワンです……」
なんだか気まずくなってどう返事したらいいのか悩みながら声を発すると、肩に激しい衝撃を感じた。
「痛い!!」
ロミの全力の肩パンによって、バランスを崩しそうになる。
「アルファ!貴様の一言で戦場の勝敗が決まる!情けない声を出すな!」
その声と言葉は戦場の指揮官として、しっかりしたものだった。
確かに、責任重大なのだ、しかも今回は俺も多数へ指示を出す指揮官なのだ。
「申し訳ない、取り乱した、これより!俺が2種類の武器を召喚する!3人1組で運用する!1つは大砲を2人に!もう1つは大砲を撃つ2人を護る銃だ!」
気合を入れて声を張る。
ここで出す武器は2種類、グレネードランチャーとショットガン。
RG-6――ロシア製の6連発のグレネードランチャーで40mmケースレス弾薬を使用する。
6連発のグレネードランチャーというと西側のダネルMGLが有名だがあちらは後装式の薬莢を使う為、前装式のケースレス弾薬は薬莢の処理が必要無いので少しでも操作を少なくできると思い選択する。
もう1つはイズマッシュ・サイガ12という半自動ショットガンを選択する。
イズマッシュ・サイガ12――その名の通りロシアのイズマッシュ社が開発した12ゲージの弾丸を発射する。
ショットシェルには00バックの鹿撃ち用のものを準備する。
操作系統もAK系統と似ており、更にボックスマガジンなのですぐにリロードが可能だ。
3人1組の2人がRG-6のグレネードランチャー部隊が兎に角撃ちまくり、残りの1人が空を飛ぶ魔物や壁にへばり付いて越えてくるような魔物をサイガ S12の人員が迎撃する。
俺は説明を続け、使い方をレクチャーしていく。
大前提として銃口を人に向けることは絶対にしてはいけないこと、必ず落ち着いて発砲すること――
リロード方法、射程距離、安全装置の外し方。
1人ずつ教える時間は無い、分からない者は必ず即座に俺の所へ来るように言い含める。
配置と発射の合図を決めると、百合騎士団と共に壁上へ移動し、俺が購入した武器と、大量の予備の弾薬をそれぞれの配置まで持っていかせる。
はっきり言ってA3Wのポイントがかなりキツイ……が後方支援を使うよりかはマシだろう。
1組当たり120発の榴弾と24発の12ゲージ弾、これでギリギリだ。
なにせこの後にも強力な武器を1つ出さなければならない。
城壁上で準備する間、レミが正門側の壁の上へ立っている……これだけで炎飛竜は城壁上へ近付く事を躊躇い、準備はつつが無く進んだ。
「ルミ、俺は全体を見て回る……お前は敵の本陣を守っているデカい魔物を撃ってほしい、それと――」
ルミとは密に打ち合わせる、何せ彼女が魔物使いを撃つタイミングで全く作戦が変わる。
「分かってますわ、レミが炎飛竜を斬った後、ワタクシは使い魔を飛ばしますわ……左目で使い魔の視界と情報を、右目でスコープを覗きますわ」
やはりルミ自身も気付いていたか、彼女の狙撃技術……その先。
――アイツの使い魔は特殊な金属製で完全に五感がルミと繋がっている、それどころか目にも見えない魔力の痕跡までルミへ伝えるんだ――
いつかにロミが言っていたことを思い出す。
俺が炎飛竜を叩き落とし、レミが斬る、魔物使いをルミが撃ち、百合騎士団のグレネードランチャーとエードル辺境伯の騎馬隊で残りを蹴散らす。
言うなればそれだけの作戦。




