第九十二話交渉と実戦と
「ロミ!今の声聞いたか!ここの領主と話したい、具体的に言うと俺達と百合騎士団と領主の三者で協力して行動したい」
ロミへここの領主……カトラル家の人へ連携できないか聞いてみる。
「確かに、消火活動については既に目に見えて効果が出始めている、今なら話くらいは聞いてくれるかもしれん、ルル!領主様の住居は知っているか?」
ロミは顎に手を当てて考え、桃色の髪の副団長へ確認する。
「はい、すぐに案内できます!」
ルルはハキハキと返事する。
「よし!お嬢様の護衛にレミとルミを置いていく、ルルを除く第7組はここでアルファの出した消火器の管理を頼む」
俺は大量に出した消火器を置いていく。
そして領主の邸宅へ向かおうとした時、空から今度は大きな鳥が襲いかかってきた。
「っく!鳥の魔物ですわ!ワタクシの使い魔が襲われてしまって偵察ができませんわ!」
数は少ないが鳥の魔物がいるせいでルミは使い魔を飛ばせないようだ。
領主の所へ行く前にルミへ武器を渡すことにする。
「おい!ルミ!これを使え!」
そう言ってウインチェスターModel 1901を渡す。
ウインチェスターM1901――レバーアクションのショットガン、10ゲージの大きな弾薬を使う武器で元となったM1887とは違い、無煙火薬に対応しており強力な弾が使える。
使う散弾は10ゲージの七面鳥撃ち用の4号サイズの鉄球が入ったバードショット弾を装填し、弾丸も大量に出す。
「操作方法は今使ってるレバーアクションと同じだ!弾丸のケース1つに金属の小さな弾が大量に入ってる!鳥を撃ち落としてくれ」
俺からウィンチェスターM1901を受け取ったルミは直ぐ様構えたり、レバーアクションの動作を試す。
「分かりましたわ!領主様の所へはお願いしますわ!」
カウボーイハットにレバーアクションを使うその姿はすっかりサマになっていた。
ドンッドンッとルミが空へ向けて射撃すると、バタバタと空を覆っていた鳥の魔物が落ちてくる。
その姿を見た後、ルルの案内で領主の元へ行く。
◇◇◇◇
「ここです!」
ルルに案内された場所立派な館だったが、外にテント……恐らく本陣とでも言うべき物が出来ており、忙しなく人々が行ったり来たりしている。
「百合騎士団団長のロミ・ヴィエント・メ・セブ・シャルと申す!カトラル辺境伯へ取り次ぎを頼みたい!」
本陣中に響き渡る大声でロミが言葉を発する。
その声で恐らく1番偉そうな人の近くにいた人が面倒くさそうにこちらへ向かってきた。
「ええい!百合騎士団が何の用だ!貴様らの遊びに付き合っている暇はない!」
年嵩の男が頭ごなしに怒鳴ってくる。
まぁ他ならぬ団長のロミが百合騎士団って貴族の子女がお遊びでやってるのが殆どとか言ってたもんな。
そらこんな状況では仕方のない反応だ。
「現在百合騎士団総勢24名!消火活動と鳥の魔物への対処を行なっています!どうか連携の為、話し合いの場を設けて頂きたい!」
ロミが堂々と用件を告げる。
「なにが連携か!女子供の遊びではないのだぞ――」
対応した年嵩の男が更に何か言おうとした時、本陣から1番偉そうな人がこちらへやって来た。
「クリント、落ち着け、部下が失礼をした、当たると即座に火が消える不思議な白い粉を撒いて消火活動をしているのは貴殿らか?」
恐らく30代前後の指揮官として頼りになりそうなよく通る声と、鍛えられたガッチリとした体格の男性がロミへ話しかける。
「はい、私の仲間の魔法で出した消火の秘薬です」
ロミは簡潔に応える。
男性がロミを足元から頭の先まで見る。
「今、鳥の魔物をバタバタと落としている魔法を使っているのも貴殿らの仲間か?ここからでもよく見える」
ルミが奮戦しているのであろう、バードショットを連射して鋭い爪と嘴を持っていたり、火を吹いたりしている鳥の魔物を撃ち落としている。
「はい、そちらもその通りです、ですが1人ですので限界があります」
男性は1人で鳥の魔物を落としているということに驚いた様子を見せた。
「ならば、最後の質問だ、その眼帯はただの飾りか?」
鋭い目でロミの右目を見る。
迷うことなく眼帯を外し、視力がなく焦点の合っていない黄金に黒い縦の瞳孔が付いた目を見せる。
黄金の瞳以外は深い傷後が残っており、激しい外傷を負ったことが容易にわかった。
「いいえ、自身の呪いによって眼球はありますが、全く見えておりません、護衛任務中に負った名誉の負傷です」
ロミの回答に、男性の表情が変わる。
「よしっ!司令隊は集まれ!これより百合騎士団と連携して事にあたるぞ!」
男性の力強い発言に、男性の部下であろう人達が敬礼する。
「俺はここを任されている、エードル・カトラルだ!共に戦おう!」
エードルはそう言うと天幕の張られた本陣内にロミとルルと俺を入れてくれた。
ロミは眼帯を直してから、エードルに説明を求める。
「現状はどうなっていますか?城壁の外も魔物だらけなのですか?」
エードルはその質問に少し考え。
「最悪の状況だ、どうやら隣国のドゥーラ辺境伯が攻めてきたらしいのだが……城壁全面を覆うように何千……もしかすると何万という魔物が包囲している。そして砲弾すら跳ね返す食料保存倉庫が炎飛竜の強力な火炎弾の連射で大火事状態だ、貴殿らの消火活動で街一面が火の海になるのは避けられたが、食糧庫をやられた以上、そう長く立て籠もれない上に王都への援軍の伝令も使い魔も、魔物の量が多すぎてとても出せたものではない……炎飛竜に至っては討伐する手段すらない」
エードルが整理して状況説明をする。
かなり切羽詰まった状況のようだ、城壁に昇れば外の魔物の編成が見られるかもしれないが……今、城壁に昇れば炎飛竜が飛んできて火炎弾を放ってくるのは想像に難くなかった。
鳥の魔物の方は恐らくショットガンがあればすぐに蹴散らせるだろう。
「城壁上に兵士や偵察はいますか?壁外の様子が知りたい、城塞都市の戦力で打って出れば何とかなるのか、詳細な魔物の量と質が知りたいです」
俺はエードルへ問う、恐らくこういう城塞都市なら壁外へ攻撃できる城壁内の設備があるはず、それと同時に偵察もできるだろう。
「城壁内に見張り室がある、そこからの報告では小型のホーンラビットから大型の地竜までひしめき合っている」
彼の言葉に考える。
鳥類の魔物は地上の魔物に対して極端に数が少ない、恐らく偵察用に飛ばしているのが主な理由だろう。
「我々の仲間かバタバタ落としているように鳥の魔物は大した問題じゃないです、問題は炎飛竜と地上の魔物の量ですね……こちらの地上戦力は?」
恐らくちゃんと動員していればかなりの量がいるのだろうが、今回は完全な不意打ち、城塞都市内だけの戦力で何とかしなくてはならない。
「城壁内の騎兵が300騎、後は歩兵が500名だ、だが歩兵は城壁内の避難誘導等で手が回らん」
騎兵がいるのか!それなら援護すれば包囲網を抜けて援軍を呼べるかもしれない。
しかし――
ギュオオオオオオン
炎飛竜が再び嘶き、火炎弾を連射する。
被弾した場所が爆発して火の手が上がる。
「炎飛竜を何とかしなくてはならんが……手がない」
悔しそうにエードルが呟く。
自由に空を舞い、一方的に強力な火炎弾を発射して回る。
鱗は強固そうで、どんな攻撃も弾きそうだ。
『ほー!消火活動ご苦労さま!私の覇王たる道の石ころ共よ、鳥を落とした所で炎飛竜と地上の魔物が貴様らを皆殺しにする!』
また炎飛竜を通して厭味ったらしい大きな声が響く。
「ドゥーラめ……一体どうやって魔物や竜を操っているのだ」
あの声が隣国のドゥーラ辺境伯らしい。
……魔物を支配する魔法。
――オホホホ!皆さん、『こちらを見て一度落ち着きましょう!』――
海水竜を操っていた魔技という男を思い出す。
アイツが関係しているのか?
ギュオオオオオオン!
……炎飛竜の鳴き声がいい加減鬱陶しいので、撃ち落としてやろう。
自分は自由に一方的に空から攻撃できると勘違いしているなら、目にモノを見せてやろう。
「炎飛竜なら俺が撃ち落とします」




