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第九十一話でっけぇ爬虫類多いな……

 ギュウウオオオオオオオン!!


 激しい咆哮と大量の獣が走る地響き。


「おい!なんか()()だぞ!俺が様子を見てくる!ルミ!トランシーバで連絡するからな!ロミ!お姫様を頼むぞ!」

 ルミへフェフセブスミーで渡しておいたトランシーバを使うことを伝える。


 大急ぎで防弾ヘルメットを被り、AK-47を手に取って外へ走り出る。


 街中はパニック状態で、皆が屋内へ逃げようとしている。


 空を見ると――


 ギュウウオオオオオオオン!!ボンッボンッボンッ


 と漆黒の鱗に全身を身に包んだ如何にも強いですよというドラゴンが、空から火球を何発も撃ち出していた。


 放たれた火球は木造の建物を燃やし、連射によって火勢が上がる。


 トランシーバで直ぐ様ルミへ状況を伝える。

 

「アルファよりイエローへ!なんか黒い鱗で覆われた火を吹く竜が上空から攻撃してるんだが!?送れ!」

 こんな報告をしている間にも目まぐるしく状況は変わり、大量の魔獣を思わせる地響きが、隣国と国境線となっている森の方から聞こえる。


 ただ走るだけではなく、固く閉ざされた裏門を突き破ろうと体当りしてきているらしい。


 城塞都市はその名の通り、あらゆる壁への門を閉鎖して防御体制を取るようだ。


「――ザッ――イエローからアルファへ!その竜には翼の他に腕が生えてます!?送れ!――ザッ――」

 その言葉に空を舞う黒い竜を見る。


 翼以外の手足は4本、腕には凶悪な爪が付いており、アレに捕まったらバラバラにされるだろう。


「アルファからイエローへ、腕2本足2本翼2枚の竜だ!送れ!」

 何か考えているのか、応答までに少し時間が空く。


「――ザッ――イエローよりアルファへ、炎飛竜(えんひりゅう)ですわ!人間では勝ち目はありませんわよ!他の地響きの原因はわかりますこと!?送れ――ザッ――」

 さっきから周りの人々のを見ているが……


 ――裏門の森から大量の魔物だ!――

 ――裏門は閉じたが正面門へ大量に迂回して侵入しようとしているらしい、門番が既に正面門も閉じた――


 ――しかし炎飛竜の火炎弾は防げないぞ!――


 慌ただしく行き来する兵隊さんの会話を盗み聞き報告する。


「アルファからイエローへ、恐らく森から魔物の軍勢が城塞都市に攻め込んでるらしい、裏門も正面門も閉じたらしいが、炎飛竜が火を吹きまくってそこら中火事だ!送れ!」

 ルミと無線でやり取りして、裏門へ様子を見に行く。


 しかしその途中――


「今魔物の軍勢に襲われて緊急事態だ!皆、建物の中へ避難しろ!」

 衛兵さんが表へ様子を見に出てきた人々に叫んで回っている。


 建物の中へ入っても炎飛竜に火事にされるだけでないかと思ったが、じゃあ他にどうすればいいのかと言われると何も返せない。


「おい!魔物の軍勢ってどんな規模だ!?」

 衛兵からもっと情報を得ようと、裏門近くにいた衛兵へ声をかける。


「貴様には関係ない!さっさと建物の中で身を隠せ!竜が来るぞ!」

 避難誘導に一杯一杯のようで、取り付く島もない。


「俺は冒険者だ!銀級(シルバークラス)で火地竜殺しの称号持ちで海水竜も討伐したこともある!何か手伝えることはないか!?」

 なんだか初めてかもしれない、自分から称号のことを話すのは。


 俺の言葉に一考した様子をみせたが、やはり指示は変わらず建物の中へ入れというものだった。


「火地竜殺しかなにか関係ない!領主軍で対応する!から建物の中へ避難しろ!」

 多分お互い状況を十分に理解していないので、話は平行線にしかならないだろう。


「わかった!じゃあ火事になってる建物の消火の手伝いくらいはしてもいいよな!?」

 自分でできることを考えて伝えて、A3Wで消火に使えそうな装備を考える。


「勝手にしろ!」

 衛兵もいつまでも俺に時間を取られるわけにはいかないので、一言そういうと走っていってしまった。

 

「アルファからイエローへ、そこら中火事だ!『旅人と馬の宿』亭へ燃え移らないように街の消火活動を手伝う、送れ!」

 購入画面(ショップ)を開いて消火器を購入する。


 消火器――万国共通のピンを抜いて火に向けて使う赤い金属製の物だ、日本製の物は黄色いピンでお馴染みだがアメリカなどでは簡素な金属製のピンなことが多く、残量の表示機能が付いているものもある。


 A3Wでは隠れた強武器として有名で近接攻撃力が高く、射撃ボタンで消火剤を噴射するが、瞬間的にはスモークグレネードを超える隠蔽効果がある為、不意打ちでぶん殴り、噴射して逃げるという普通に厄介な装備なのだ。


 インベントリから取り出そうとしたところで――


「――ザッ――ネガティブ!イエローからアルファへ1度宿に戻りなさいな!貴方のことだから消火用の装備もあるのでしょう?百合騎士団……少なくともワタクシも手伝いますわ!送れ!――ザッ――」

 ルミの言葉に消火ばかりに気が行っていたことを自覚して冷静になる。


 そうだよ、消火器ならそんな難しい使い方ではないのだから人数を揃えたほうがいい。


「アルファよりイエローへ、ロジャー、1度そちらに戻るから百合騎士団の団員を集めてくれ、送れ」

 その後、消火器の使い方をどう教えるか考えながら走る。


 宿へ戻ると、レミ以外の百合騎士団全員が外で整列していた。


 ルミは既に使い魔を放ち、状況を確認しているようだった。

 

「アルファ!戻ったか!火事をなんとかする道具があるのだろう!皆にも使わせてくれ!頼む!」

 ロミが焦った様子で頼んで来るが、既にそのつもりで消火器をインベントリへ入れている。


「あぁ、大丈夫だ!比較的簡単に使える筈だ」

 消火器なんてピン抜いてホースを炎に向けてレバー握るだけだ。

 

「全員傾注!これより冒険者であるアルファの魔法で消火用の道具を召喚する!その道具を使って街中の火事を消すぞ!」

 ロミが力強く号令をかける。


「「「了解!」」」

 ロミの言葉に百合騎士団が一糸乱れぬ返事が返される。

 

 こんなことをしている間にも炎飛竜は火炎弾の雨を降らせてそこら中が火事だ。


 インベントリから消火器を取り出し、使い方をレクチャーする。


 ピンを抜くこと、しっかり炎の根元を狙うこと、レバーを力強く握ること等をレクチャー付きで説明した。


「俺が今から消火器を出しまくるから各自取って行ってくれ!中身が無くなったらここに新しいのを準備しておく!」

 消火器召喚工場となった俺は次々に消火器を出して、百合騎士団員へ渡していく。


 ロミが騎士団として任務が遂行できると判断した人員ばかりなので、整然と並んで消火器を受け取る。


「南側が酷いですわ、西も何件か火が付いています、延焼を防ぐ必要がありますわ!」

 ルミが索敵の内容をロミへ伝える。

  

「お前達第1〜4組は特に酷い南に行け!西は第5、6組が行け!第7組はこの近辺にも炎飛竜の炎が来た時の備えを頼む!」

 ロミがテキパキとルミからの情報を元に部隊を展開させる。


 全員が訓練された所作で一斉に動き出す。


 しばらくするとそこら中で白い粉が巻き上がり始めた。


 街中が消火剤塗れになるにつれて、炎が消火されていく。


 しかし――


 ギュオオオオオオン!!ボンッボンッ!


 懸命な消火活動も虚しく、空から炎の雨が降る。


 そして、炎飛竜越しに城塞都市全域に聞こえるであろう大音量で声が聞こえ出す。


『カトラル家の者共!そして城塞都市にいる者共!貴様らに地獄を見せてやるぞ!1人残らず魔物の餌だ!』

 どうやら炎飛竜だけではなく、城塞都市の壁の外は魔物の軍勢が取り囲んでいるらしい。


 そんな大量の魔物をどうやって支配下にしてるんだ?


 城壁の外を見たい、建造物のせいで炎飛竜が見えない。


 このままでは街が全部灰になるぞ。

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