吾輩はぬいぐるみである!⑤
「さあ着いたわよ!」
ここまで幾度となく鉄のクジラを乗り換え、移動すること十数時間。
飼い猫である程度事情が呑み込めるとはいえ、ホトホト疲れたわ。
もしかして一生分ジッと大人しくしいてたのと違うか?
それにしてもここは何だ?
同じ鉄のクジラ発着施設でもやけに騒がしいではないか。
至る場所でチカチカチカチカ光っているし。
ムム?
嗅覚が戻ったのか?
なにやら肉の臭いが・・・。
「ここはねニャゴロー、アナタ達の大好きな肉が主食の国なのよ。そのうち一杯食べさせてあげるね。」
すると突然けたたましい音が!
チカチカマシンからだ!
{ビロロロロロロロロ!!!!}
「ワァーオ!!!!」
よく分からないが、そのマシンに人だかりが出来た。
操作していた金髪の丸太はこの上ない笑顔をしている。
なにかいいことがあったのだろうか?
まあ、我輩には関係のない事だが。
その後、大きなベルトコンベアからチェリーピンクのケースを手にした小織殿。
ゴロゴロと引きずりながら表へ。
それにしても何にもかもがデカいな。
人間ののみならず、何から何までもがだ。
ここにも我輩と同じ猫はいるのだろうか?
間違いなく他の動物は生息していると思うが・・・。
小織殿は迎えに来ていた日焼けで真っ黒のパンチパーマの丸太となにやら話を。
それも我が地元では聞き慣れぬ言葉で。
これは以前美也殿が借りて来たレンタルDVDの中で出てきた言語と同じか?
確かターナ&フーチーだっけな?
それならばなんとな~く理解できるかも。
ゆっくりと話してくれるのならだが。
こうして我輩達を載せたジンベイザメのような車は何処かへ向けて走り出す。
とっても広い車内に小織殿一人・・あと我輩を乗せて。
途中、外を走る他の車を見て思ったのだが、今乗っているヤツは普通と違うな。
一般の車と比べたらどう見ても二倍以上はあるぞ。
仁義ものの映画でこれとよく似た車へ親分が乗っていたのを見たことがある。
それでもコイツに比べると遥かに小さい。
全くこの国はどうなっているのだ?
そして我輩は人種の坩堝へと足を踏み入れる事となる。
・・・最近は仕事どころじゃないニャ。




