吾輩は台風になればテンションがあがるのである。
我輩は今、御子息にベタ惚れな娘のいるパン屋で寛いでいる。
ほんの数時間前、商店街の八百屋へ営業の挨拶で訪れた我輩。
外は雨が降っていたから雨宿り序にと。
しかしバリバリと孫が働いているせいで、店先の物へ手を出すことが出来ない。
取りあえずは縁の下へ待機。
通気口の一部が壊れていたのでそこから中へと入り、様子を伺っていた。
ところが!
外の雨がどんどん激しさを増してくるではないか!
雨宿りどころか、我輩家へと帰ることもままならなくなってきたのだ!
目の前にある通路はアーケードで覆われており、基本的には濡れない。
そこすら水が薄っすらと侵略してきたのだ!
このままでは我輩も巻き込まれると思い、パン屋へ大至急移動!
オートマティックドアーをニョキっと出したネイルでソフトタッチ!
更にはマイヴォイスを織り交ぜる!
「ニャ~・・ニャ~・・・」
{カリカリカリ・・}
「あっ!アンタ三河君とこのネコちゃんじゃないの!?」
ナイス!
御子息の妖術にきりきり舞いであるパン屋の娘の目に留まった!
この際この娘が色ボケなのは置いておこう。
「ちょっとちょっと!台風なのにこんな場所でなにしてんの?・・・確かニャゴローだっけ??台風なんて数時間もすれば行っちゃうから、それまでこの中にいなさいね!!」
どうやらパン屋は今日の営業を取りやめたみたいである。
いつもなら決して入れてくれない店舗で匿われることに。
普段から清潔にしているとはいえ、我輩は所詮猫。
ばっちいもんね・・・。
幸いにしてこのアーケードは地べたから少し高いところに作られている。
そこへ薄っすらと水が上がって来たという事は・・・
そう、道路は既に川の状態。
この場所から見える店舗と店舗の間にある路地すら水浸し。
その向こうは道路の色さえも見えなくなっている。
あっ!
あれはニャン吉ではないか!
ヤツは今、商店街横にある小汚いスナックのチカチカする看板に乗っている!
下が濁流になっており、にっちもさっちもいかない状態!
だから早めの対策をしなければならないのに!
とりあえずあの上ならば水が来ることも・・
あぁっ!?
{バッシャーン!!}
「ニギャァッ!」
看板が水流で倒れてしまった!
ニャン吉が下へ!
{ゴッチン!}
「ギニャ・・・」
しかもその看板が頭へ!
早く助けなければ!!
{ジイィーーーーーッビリリリ!!!}
「ニギャアァァァァァァッ!!!」」
うぉっ!
チカチカ看板が火花を散らしたぞ!?
一瞬ではあるが痺れるニャン吉の骨が見えた気が!
こうなると最早我輩ではどうすることもできまいて。
まあ、あいつのことだ。
そのうちまた、ひょっこりと何処かで出くわすだろう。
そう言えばお腹が空いたな。
娘に媚び売ってチーズの一かけらでももらうとするか。
こうしてパン屋で暖かいミルクと様々な食べ物を提供される我輩。
波に揉まれるニャン吉を見ながら、偶には大雨もありだなと思うのであった。




