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第二十章 やっと大団円! だけど……

 全ての戦いを終えた俺は、いつの間にやら魔王が消え去り禍々しさが薄れた城の前に導かれていた。

「あれ? 俺、どうしてここに」

「よくやった、タカシよ」

「おっ」

 どこからともなく、神の声が聞こえてくる。しかし、おそらくこれで最後だろうというのに、相も変わらずその姿を見せてはくれないようだ。

「どっかにいるのか? ま、俺にはあんたの姿は見えないけどさ。それにしても、よくあんなヒントを最後に与えてくれたな。お陰で俺、魔王を完全に滅ぼすことができたぜ」

 思えば自分でも、本当によくやったよなあって思う。だって俺、何の取り得もないただの凡人なんだぜ? そんな奴が世界を救ったとなると、他に前例はないんじゃないかなあ。

「私は正直、お前を勇者として呼び出したのは間違いだったかなと思ったこともあった。しかし、よくぞ! よくぞ勇者としての使命を果たしてくれた!」

 あれ? 何かいつもと雰囲気が違うような。気のせいかな。

「これからは国に帰り、王として平和な世界を築いていってくれ。神であるこの私も、お前とその一族を永久に見守り続けようぞ!」

 ……?

「勇者タカシに、栄光あれ!」

「はあ?」

 ちょ、ちょっと待ておっさん。何か急に、めっちゃキャラが変わり過ぎなんですけど! え? 俺が王様とか、全然わけわかんないし。話が飛躍し過ぎだぞ。

「ど、どうしたんだよ。いつものおふざけは? 全然笑えねえボケはかまさねえのかよ。おい!」

 いくら問いかけてみても、神からの返事はない。広い森の中に、俺の戸惑いの色がにじんだ声が響くばかりだ。

 俺は神を名乗る声から突然勇者として呼び出されたとはいえ、所詮はただの一般人。そんな俺が、何で王になるとか急展開中の急展開を迎えるはめになっちまうわけ? そんなわけのわからないことを言ってないで、早く元いた場所に俺を返してくれよ。早く……ん?

「あれ?」

 ちょっと待て。俺は前々から早く帰りたいだとか、そんな感じの類のことをさんざんほざいてきたが、一体どこに帰るっていうんだ。改めて考えてみると、心当たりというものがない。

 ……いや、疑問はそれだけじゃない。そもそも、俺は一体どこから来て、どういう経緯でこんなところに呼び出されることになったんだ。そして、俺は一体何者なんだ?

 わからない。何もかも、全然わからない。そう思ったのも束の間、俺の頭にビビッと何かが降りてきた。

「……そうか。そうだったんだ」

 思い出した、何もかも。そうか、そうだったんだ。は、は、はははは。俺は、俺という存在は……。

「わかった。全部思い出した。俺は……このゲームの主人公だったんだ」


「勇者タカシ、ばんざい!」

「勇者タカシ、ばんざーい!」

 どういう流れでこうなったのかはよくわからないが、俺は豪勢なパレードでもてはやされながら町の人々に感謝の言葉を述べられていた。気の抜けてぽけーっとしている俺の隣りには、上品でしとやかそうなお姫様。何でも、魔王を倒した勇者である俺に惚れ、何としてでも婿に迎えたいとのことである。

「喜ぶべき、なのかなあ」

 俺……タカシは、ゲーム『ダークキャッスル』でプレイヤーだとかいう神みたいな存在に生み出された主人公であり、どういうわけか自我を持って魔王城を探索していた……らしい。

 まあ、自分でも「こんな冒険おかしいよなあ」と思ったことは死ぬほどある。でも、これが全てゲームの中のシナリオであったのなら全部納得だ。これがゲームなのだったら、何度勇者が蘇らせられようが、魔王城の中に都合よく最強の武器を作るアイテムがそろっていようが、魔王が甘納豆なんかで倒されようが何にもおかしくないもんな。

 きっと今は、このゲームの主人公としてエンディングを満喫しておくべきなのだろう。しかし、俺はいまいちこのシンデレラストーリー的な展開を素直に受け止めるができない。だって、これはゲームの中での話だし、所詮は虚栄にすぎないというかねえ……。

「うおっ! どっからかでっかい字が流れてきやがった」

「どうかしたのですか、勇者様。わたくしには、何も見えませぬが」

「え、あ、いや。な、何でもない」

 おおー。目の前にエンディングロールだとかいうでっかい字が通っていくぞ。これはどうやら、自分がゲームの登場人物であると自覚してしまった奴にしか見えていないらしい。ま、こんなものを見られるのも貴重な体験の一つなのかな?

 でも、それでも俺は素直にこの状況に心を躍らすことができない。どこからともなく聞こえてくる音楽も楽しげで文句のつけようもないし、人々が笑顔を絶やさずに続いているパレードも、今後の世界の平和を予兆しているようでいいことだとは思う。それに、いくらゲームの中の出来事とはいえ、俺が魔王を倒したというのも変えがたい事実。それを称えられるっていうのも、全然悪い気はしない。だけど、どうしても明るい気持ちになることはできない。

 え? それは何故かって? だって、ゲームっていうのは何度も繰り返し遊ばれるもの。と、いうことは。このパレードが終わった後、きっと俺は……。

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