第51話:第6世代の特徴
ファイは2人が作った朝食を平らげると、コップに入った牛乳を飲んでいた。
「カイ」
「どうした、ファイ」
彼はトーストにマーガリンを塗りながら返した。ファイはコップを眺めながら続ける。
「この飲み物、美味しい」
「そうか。そいつは、牛乳だ」
「ぎゅうにゅう?」
ファイは首を傾げる。どうも彼女の星には、その概念が存在しないらしい。界はトーストの焦げ目を見ながら考えた。
(...これって、牛乳の定義から説明しなければならないのか? でも哺乳類と云う概念は地球だけかもしれないし...)
「カイ様。どうなさいましたか?」
ヨーグルトを食べていたルクスは、首を傾げる。界は言葉を選びながら口を開いた。
「ファイ、ルクス。一つ良いか?」
2人の少女は頷いた。界はこめかみを掻く。
「...お前らって、生物としての分類上はどういう感じになるんだ?」
2人は顔を見合わせた。彼の質問の意図が分からなかったらしい。
「カイ、それってどういう意味?」
「カイ様。よく分からないのですが...」
界は少し早口になりながらも、説明を始める。
「いや、つまり。お前らって宇宙の果てから来たんだろ?」
「うん」とファイ。
「俺らみたいな『地球人』とは全然違うだろうし、一度お前らの種族について知りたいんだ」
ルクスは少し考えていたが、エプロンのポケットから小さな端末を取り出すと、何やら調べ始めた。
「...ルクス。何してるんだ?」
彼女は顔を上げると、小さな端末(なんか電子辞書みたいだ)を操作する手を止めた。
「カイ様。つまり私たちの種族のお話をすれば良いんですか?」
「...そういうことだ」
ルクスは「はい」と頷くと、灰色の端末の画面を眺めながらその内容を読み上げる。
「...私たちは帝国の分類上では、『第6世代』に該当するみたいです。主な特徴は、頭頂部に角があることと、身長が比較的高いことです」
界は2人の頭頂部を交互に眺める。この数日で見慣れてしまったが、確かに少女の頭に角が生えていると云う光景は、地球では稀有なものだ。
「他にも、何か特徴はあるのか?」
界は首を傾げる。ファイはルクスの横から割り込むと、画面に書かれた内容を口にした。
「...体温は31〜33℃。放射線や紫外線への耐性も持っており寿命はおよそ100年」
「...体温、低いんだな」
彼はファイを拾った時のことを思い出す。確かにあの時、あいつは分厚い外套に身を包んでいた。あれはもしかしたら、体温を維持する為の装備なのかもしれない。
「カイ様。他に知りたい内容はございますか?」
ルクスの問いに、界はしばし考え込む。ここは、少し違った方向から攻めた方が良いかもしれない。それに、知っておいて損は無いだろう。
「なあ、ルクス」
「はい」
「...お前らって、クローンみたいに分裂して増えるのか? やっぱり帝国の技術だと、そのくらいはできそうなんだが...」
ルクスは意外そうに目をしばたいた。
「いえ、そんなことはありません。私たちの殖え方は、基本的にチキュウ人と同じで——」
真顔でとんでもないことを口走りそうになった彼女を、界は慌てて制止する。
「分かった! 分かったから! 話題を変えよう!」
突然慌て出した彼の様子を不思議に思ったのか、ルクスはしげしげとこちらを見ていた。
「カイ様、何故でございますか?」
彼女の様子を見る限り、本当に悪気は無かったらしい。彼はクローンの話題を振ってしまったことを後悔していた。
「いや、何となくだ」
ファイは頬杖をつきながら一部始終を眺めていたが、界の表情を見て微笑んだ。
「カイ、顔が赤いよ」
「そ、それは気の所為だ!」
界がますます顔を赤くして喚いているうちに、朝の時間は流れていくのであった。




