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第52話:可視光線遮蔽シールド

「...さて、と」

 朝食の片付けを終えた界は、部屋を見回す。今日は仕事が休みなので、如何(いかん)せんすることが無かった。

 彼は辞書を読んでいるファイと、窓を拭いているルクスを交互に眺めた。2人が忙しそうにしているのを見ると、自分も何かしなければ、と云う気持ちになってしまう。彼はキッチンへと向かうと、冷蔵庫の扉を勢い良く開けた。

「あ」

 彼はあ然とする。何故ならその中身は、殆(ほとん)どが空気だったからだ。昨晩はアジフライの弁当を食べた所為ですっかり忘れていたが、冷蔵庫の中身はこの数日補充されていなかった。

「...流石に買い出し、行かないとなあ...」

 彼は冷蔵庫の前で腕を組む。ここは一人で買い出しに行くべきだろうか。しかし、宇宙人の少女2人を部屋に残して出かけるのは、いささか気が引けた。

「ファイ、ルクス。ちょっと良いか?」

 界の言葉に、2人は顔を上げた。

「...これから食料の買い出しに行こうと思うんだが、付いていきたいか?」

 ルクスは「はい! ぜひ行きたいです!」と即答した。少しでも役に立ちたいらしい。

「ファイはどうだ? 行きたいか?」

 界の問いに、彼女も「うん」と頷いた。彼は部屋を見渡すと、顎に手を当てて考えた。

「じゃあ、買い出しに行くか」

「はい」

「うん」

 2人の少女は軽く頷くと、立ち上がって部屋の片付けを始めた。


「で、だ」

 界はシャツとジーンズに身を包むと、地球人の格好に着替えたファイとルクスを眺めた。すっかり地球の雰囲気を身にまとっている。

「その角、どうする?」

 ファイは頭に手を伸ばし、自らの角を優しく撫でた。

「これ、隠さなきゃ駄目?」

 界は首を縦に振る。

「勿論だ。流石にその角は、地球では目立ち過ぎる」

「そうでございますか?」

 ルクスも自らの頭頂部に視線を向ける。そこには群青色の角が鈍く光っていた。

「...地球人には角は無い」

 界は考え込む。はてさて、どうしたものか。買い出しに連れて行くのは良いが、その角だけはどうにかしなければ。帽子で何とかなるだろうか?

 彼はクローゼットから野球帽を持って来ると、試しにファイの頭に乗っけてみた。だが微妙に大きさが足りなく、角の輪郭が見えてしまう。

「...やっぱり駄目か」

 彼は野球帽を外した。ファイは薄紫の髪を撫でながら呟く。

「ねえ、カイ」

「どうした」

「...可視光線遮蔽シールド、使えるよ」

 彼は首を傾げる。そう言えば、帝国宙軍の装備でそんなものがあると聞いたような...

「どういうやつなんだ?」

 ファイは「ちょっと待ってて」と告げると、クローゼットの中にある、彼女の軍服のポケットを探った。程なくして、彼女は新聞紙1枚分くらいの大きさの黒い布を持って来た。

「これ」

 彼女は試しに、黒い布を頭から被り「フォーモート」と唱えてみる。すると、彼女の姿がすっかり見えなくなった。界とルクスは目を丸くする。

「帝国、凄え...」

「実物を見るのは、初めてです...」

 ファイが「アスペクト」と唱えると、部屋の真ん中に再び彼女の姿が現れた。彼女は「むふ〜」と得意げな表情を浮かべる。

「ね、凄いでしょ」

「確かにそれがあれば、角を隠せるな」

「うん」

 彼女は界の鋏(はさみ)を借りると、黒い布をハンカチくらいの大きさに切り取った。そして同じ物をもう一つ作り、ルクスにも手渡す。

 2人が角を布で覆い、同時に「フォーモート」と唱えると、2人の頭の上から角だけが消えた。

「おお〜」

 界は満足そうに頷く。これなら買い出しに行っても大丈夫であろう。

「じゃあ、買い出しに行くとするか」

「うん」

「はい、カイ様」

 界はトートバッグを抱えると、玄関へと向かう。ファイとルクスも、その後ろに続いて歩いて行った。

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