第4話:宇宙人隠匿作戦
で、ここで新たな問題が浮上してきた。この少女をどうするか、という問題である。相変わらず少女は外套を着込んで(なんか昔のヨーロッパの軍人が着てそうなやつだ)、界の左腕にしがみついていた。重たいし暑苦しいから、そろそろ離れて欲しいのだが。取りあえず警察に連絡して、この少女の親か保護者に引き取って貰うか。流石に独りで日本に来ている訳は無いだろう。それにその方が、この少女も安心するだろうし。
彼はポケットからスマホを取り出すと、110番に電話をかけようとする。しかし、ここで手が止まった。待てよ。この少女からして見れば、警察は未知な存在だろう。エレベーターすら知らず、界がちょっと話しかけただけで縮こまっていた。もしも警察に連れて行ったら、彼女は一体どうなってしまう? 警察は家出した少女に対して、根掘り葉掘り尋ねるだろう。どこから来たのか。保護者はどこに居るのか。お金はどのくらい持っているのか。その質問攻めに、少女が耐えられるようには思えなかった。
それに、もし少女を警察へと連れて行ったら、十中八九自分も巻き込まれる。少女が泣き出したり暴れたりしたら、自分に責任が擦り付けられる可能性もあるし。それに今日は帰って、アパートのせんべい布団に横になりたかった。少女が自分から離れる気配は見えない。ならば、やむを得ないな。
界は少女がしがみつく左腕を引き摺りながら、アパートへの道を歩いた。なんか少女(多分未成年)を家に上げるのは気が引けるが、仕方あるまい。それにここに置いて帰ったら、泣き喚いて近所迷惑になりかねない。彼は溜め息をつきながら暗い夜道を歩く。幸いにも、こんな丑三つ時の手前の時間に出歩く者は居なかった。この街が住宅街で良かったな、と界は思う。
駅から歩くこと15分。朱色の看板を掲げたコンビニの隣に、界の住処であるアパートはあった。勿論ボロボロで、一度地震が襲ったらすぐに壊れそうな外観だが、実はもの凄く頑丈であることを界は知っている。以前ゴキブリが出た時、深夜に思い切り暴れたが全く壊れなかった。また防音性にも優れているようであり、界は個人的には当たりだと思っている。
さて、このアパートの住人は数世帯しか無く、隣人は高齢の夫婦や一人暮らしのお年寄りである。若者は恐らく界だけで、その所為かよく差し入れを貰う。おかげで何故か昔の話に詳しくなった。つまり、この時間は全員が眠っている。だから少女を部屋に上げても全然バレない。
彼は2階へと錆びついた階段を上がると、一番奥の扉へと向かった。少女は左右を忙しなく眺めながら、界の後ろをふらふらと歩いていた。あまり見慣れない光景なのかもしれない。そりゃ、異国だからしょうがないか。しかしどこの国なんだろうか? 後でスマホで調べてみるか。
彼は鍵を差し込むと、扉を開いた。散らかった部屋が覗く。少女は扉の陰に隠れている。見かねた界は声をかける。
「...どうぞ、上がってくれ」




