第45話:ルクスの提案
夕食後、界は机の上の弁当箱を片付けていた。それを見ていたルクスも、「私も手伝います」と言って机を布巾で拭いていた。
「...ルクス」
「はい、カイ様」
彼女は背筋をぴんと伸ばす。
「手伝って貰って、良いのか? 一応お前も、俺にとっては客人なんだが」
「どういう意味でございますか?」
ルクスは首を傾げる。
「...いや、そんなに大した話では無いんだが。なんか手伝わせてしまって、悪いなと」
界は弁当箱を潰すと、ビニール袋に入れてその口を結ぶ。ルクスは両手を頬に当てた。
「もしかして、私のお手伝いが迷惑でしたか...!?」
彼女の大袈裟なリアクションに、界は慌てて否定する。
「...いや、そういう訳じゃない」
ルクスは胸を撫で下ろす。自分の行動が迷惑ではないか、余程心配していたらしい。
「ではカイ様。それでしたら私、できることなら何でも致します」
界は顎に手を当てる。そこまで言われると、逆に頼みたいことが浮かばなくなってしまう。
「...別に、そんなに困っては無いんだけどな」
「いえいえ。カイ様の表情には、明らかに疲れが浮かんでおられます。つきましては、家事の手伝いや部屋の整頓、ファイ様のお世話なども...」
界は椅子でまどろんでいるファイの方に視線を向ける。確かに、こいつの世話を分担できるようになるのは非常にありがたい。これまで一人で面倒を見ていたので、正直言って疲れていた。
「それはありがたいな。ぜひ、ファイの世話を頼む。お前なら故郷でも仕えていた訳だし、色々とやりやすいだろ」
ルクスは自らの胸をポンと叩く。任せてください、とでも言いたげだ。
「さらにカイ様のご要望がありましたら、睡眠時のサポートも可能でございます」
界は眉をひそめる。彼女は一体何を言おうとしているんだ?
「ルクス。睡眠時のサポートって何だ? ファイが俺を蹴ってきた時に防いでくれんのか?」
「いえ。子守唄、膝枕に添い寝も...」
真顔でそう列挙する彼女を見て、界は思わず大声を出してしまった。
「おい! 俺はガキじゃねえよ!」
「そうでございますか?」
ルクスは尚も真顔のまま、首を傾げる。どうやら悪気は無かったらしい。界は頭を抱える。
「ルクス。そういうことは、頼むからファイにやってくれ。俺は一人でも平気だ」
「しかしカイ様。目の下に隈が...」
「これは違うって!」
「いえ。ご遠慮なさらずに...」
「いや大丈夫だ! それに色々な意味でまずいだろ!」
「まずい、でございますか?」
ルクスは頭をひねる。頭頂部の青い角が傾いた。
「...ああ。説明が面倒くさくなるから端折るが、こっちの社会的立場が大変なことになる」
「はあ」
ルクスは適当に頷く。多分どういう意味か分かっていないだろうが、界が嫌がっていることに気付いてくれればそれだけで十分だった。
「とにかく、ルクス。その気持ちはありがたいが、添い寝とかは断らせてくれ」
「承知しました、カイ様」
話が一段落したので、界は両手をパンと叩いた。
「さて」
彼はファイとルクスの顔を見比べる。
「...お前らには、風呂に入って貰うか」




