第43話:ルクスは物知り...?
「...ただいま」
界はコンビニで弁当を3つ買い、数分後に部屋に戻った。彼が玄関の扉を開けると、ファイがルクスに部屋の説明をしていた。
「ルクス、ここがお風呂だよ」
「ファイ様、この筒は何でしょうか?」
「これは、シャワーって云うの。水が出てきて、それで身体を洗える」
「それは、本当でございますか!?」
「うん。カイにも聞いてみて」
2人はそこまで話すと、界の帰宅に気付いた。
「おかえり、カイ」
「おかえりなさいませ、カイ様」
「...ああ」
界は2人が楽しそうに話している姿を見て、これからの生活が前途多難であることをひしひしと実感した。
「弁当買ってきたが、食うか?」
「ベントウ?」
首を傾げるファイに、ルクスは人差し指を立てて説明する。
「チキュウの携帯食です。栄養価が緻密に計算されていまして、なおかつ美味しさも兼ね備えています」
ファイは曖昧に頷く。界はレジ袋を開けながらルクスに尋ねた。
「ルクス、地球に住んだことがあるのか?」
「いえ、そうではありません」
「じゃあ、何故『弁当』を知っているんだ?」
「私は侍女ですから。知らないことは何一つございません」
ルクスはそう言うと、両手を腰に当てて得意げな表情を浮かべた。界は疑いの視線を向ける。
「...本当か?」
「本当でございます! よろしければカイ様も、私に遠慮なくお聞きください」
界は弁当を机に並べながら、ルクスが知らなさそうな質問を考える。
「ルクス」
「はい、カイ様」
「地球の首都はどこだ?」
ルクスは首を傾げながら考える。
「...少々お待ちくださいませ」
「ああ。ゆっくりで良いぞ」
界は割り箸を並べ、ペットボトルのお茶も机の上に置いていく。ファイは洗面所で手を洗った。
「カイ、手洗い終わった」
ファイがそう言って椅子に座った頃、ようやくルクスは答えに気付いた。
「カイ様」
「じゃあ教えてくれ」
「...チキュウの首都は、トウキョウでございます」
界はにやりと笑う。
「...不正解だ」
ルクスはあからさまに動揺した。
「え、違うのですか!?」
「地球に首都なんて無い。だって俺らは、宇宙と貿易するだけの技術が無いからな」
「...騙されました」
ルクスは意気消沈する。ファイは彼女の肩をポンと叩いた。
「ルクス、ドンマイ」
「申し訳ありません、カイ様...大口を叩いてしまいました」
界は微笑むと、しょげているルクスにコンビニ弁当を見せた。
「全然、大丈夫だ。ルクスも弁当、食うか?」
界の言葉に、ルクスは目を見開く。
「...良いのですか? 私のような侍女が、ファイ様やカイ様と同じ物を食べてしまっても」
界は腕を組む。どうやらこの少女は、長年侍女として働いてきた影響で自らを卑下する癖ができてしまったようだ。
「別に、良いだろ。それに俺から見れば、ファイもルクスも同じガキだ」
「私、ルクスと一緒に食事したい」
ファイはルクスの手を引く。彼女はもう一度瞬きをすると、ハンカチで目元を拭った。
「ファイ様...カイ様...」
界は少し困った表情を浮かべてから、ファイの方に視線を向ける。
「ファイ」
「ん」
「ルクスに、手の洗い方を教えてやれ。俺は弁当を温めている」
「承知、カイ」
ファイはルクスの手を取ると、洗面所へと連れて行った。ルクスは戸惑いながらも、ファイに倣って蛇口を使う。ファイの侍女だったこともあり、その手付きは滑らかだった。
「ルクス、凄い上手」
「ありがとうございます、ファイ様」
「いつも下手なカイより上手」
「...おい、何か言ったか」
ファイの言葉を耳で拾った界は、電子レンジの番をしながら言い返す。
「何も言ってない」
「...本当か?」
「カイの空耳だと思う」
「...お前、また語彙が増えたな」
ファイは瞳を輝かせながら、食卓へと向かう。
「私、元軍人だから」
「関係あるかなあ...」
界は頭を捻る。




