第40話:ルクスの忠誠
「え...まさか...そんな」
界はその場で崩れ落ちそうになる。ルクスが慌てて彼を支えた。
「カイ様」
「...すまない。まさかファイが——」
界は何度も思い違いではないことを確かめてから、その続きを口にした。
「——流刑囚だったなんて」
彼は目の前が真っ暗になった気分だった。異銀河送致刑がどのくらい重い刑罰かは分からないが、わざわざ数億光年も先からこんな辺境にまで飛ばされてきたのは事実だ。にわかには信じられないが、妙に辻褄が合うような気がした。確かに彼女を拾った日の翌日、彼がカフェから帰って来た時にファイは泣いていた。あれは、刑罰が原因だったのかもしれない。
「...あいつは、どんな犯罪でそうなったんだ?」
ルクスはハンカチで目頭を拭いながら、鼻声で答えた。
「...大逆罪、です」
「大逆罪?」
界にとっては聞き慣れない言葉だった。だが、どうやら重い犯罪らしいことは分かった。
彼はブロック塀の側で、唇を噛んだ。到底信じられない。だが既に彼女が宇宙人であることを知ってしまった以上、そこに「大逆罪人」というレッテルが加わってもどうでも良い気がした。それにあの表情が作り物とは思えない。
「...ルクス」
彼はルクスに声をかけた。彼女は電柱の陰で必死に涙を堪えている。遥か遠くから地球まで来たのは良いものの、限界に達してしまったのかもしれない。
「ファイが大逆罪人だってことは、お前の説明でよく分かった」
ルクスは握った右手で目を擦る。界は声が震えるのを抑えながら続ける。
「...俺は、何をすれば良い」
ルクスは口を半開きにする。てっきり界がファイを拒絶するものだと思っていたらしい。
「...カイ、様?」
「確かにあいつは罪人かもしれない。でも俺の目には、あいつは16歳のガキにしか見えなかった」
界はブロック塀の側に立ったまま、ルクスの方を見る。
「俺が関わってしまった以上、最後まで責任を負うのは最低限の礼儀だろ」
ルクスは涙を零しながら、首を縦に振った。
「...カイ様は、何故そんなに優しいのですか」
界はこめかみを掻く。幾らファイを見捨てられないからとはいえ、格好良いことを言い過ぎたようだ。
「いや、特に深い意図は無いんだけど...?」
ルクスは涙を強引に拭うと、祈るような仕草で界に向き合った。
「ああ、カイ様。私は一生、貴方について行きます」
「...祈る相手、間違えてないか?」
「いえいえ! ファイ様を受け入れてくださったカイ様は、私にとって神同然でございます!」
ルクスはなおも声を張り上げる。そろそろ界の方が不審者扱いされそうだ。
「...近所迷惑になるんで、ちょっと落ち着いて欲しいな」
界は胃の辺りがキリキリと痛むのを感じながら、ルクスと共にアスファルトの路面を歩いた。ますます面倒になりそうだ、と思いながら。




