第28話:ワイオミング州***市
アメリカ合衆国・ワイオミング州***市の地下。そこにNASAの軍事衛星管制所が存在していた。
「...異常が発生しました」
画面が3つ設置されたデスクトップPCに向き合った管制官が、右手を挙げて上官を呼んだ。上官は管制官の隣に立つ。
「何があった」
「...先ほどまで交信を行っていた軍事衛星『アースボーダー27号機』との交信が途切れました」
「何だと!?」
上官と管制官は、直ちにデータを確認する。確かに、32分前の交信を最後にして情報が届かなくなっていた。さらに直近数日の航空写真のデータにノイズが確認された。また赤外線センサやサーモグラフィが損傷しており、ガイガーカウンター(放射線測定器)の計測結果が振り切れていた。
「ガイガーカウンター? 太陽フレアか?」
「いえ、そのような結果は報告されていません」
「すると、太陽風か...あるいは...」
「この数日間、太陽の活発な動きは見られませんでした」
「では機材トラブルか...?」
「いえ、そのいずれも確認されていません」
「...どういうことだ」
上官は考え込む。すると、別のデスクの管制官も右手を挙げた。
「偵察衛星『ユナイテッドアイ16号機』との交信が断絶」
「宇宙太陽光発電実証衛星『ソーラーイーグル2号機』との交信が断絶」
「スペースデブリ回収衛星『フレア30号機』との交信が断絶」
上官は耳を疑う。似たような事案が、4件も発生したのか!? しかも、この数分の間に!?
「...管制所の総員に告ぐ。他にも交信が断絶した機体は見当たらないか、全力で探せ。さらに断絶の原因を特定し、直ちに交信を復活させるのだ。軍事大国・米国の威信を懸けて、任務に当たれ」
「了解」
上官はデスクに戻り、頭を抱えた。こんなことはこの管制所の長い歴史の中でも初めてだ。とにかく、このミスが外部に漏れ出すような事態だけは避けなければ。米国の信頼に関わる事項であるし、特に「ソーラーイーグル」の技術が漏洩すれば莫大な損失に繋がる。何としてでも阻止しなければ。
この一連の衛星トラブルの遠因にファイが流刑された時の電波ノイズが含まれていることを、彼は知る由も無かった。




