第25話:火星の偵察
「これは、火星だな」
「Kreado-5e」
「いちいち訂正しないでくれ...」
「ここは、偵察で行ったことがある」
「え、でもさっきは凄い遠くの銀河から来たって言ってたじゃないか」
「第37管区から遠征したの」
「遠征って、ここが田舎ってことを証明しているみたいで嫌だな」
界はブツブツ文句を言う。ファイは図鑑の火星の頁を見ながら、遠征の思い出を語った。
「この星に降りた時、凄い砂嵐が起きてたの」
「まあ、火星だからな...」
「チキュウの探査機も、沢山居た」
「え、見たのか!?」
「うん。稼働中のやつとか、残骸になったやつとか」
彼女はそう言いながら、探査機「オポチュニティ」の写真を指でなぞる。
「これ、近くで見た」
「...NASAは何か言ってたかな」
界は首を傾げる。確か「オポチュニティ」は通信が途切れていたはずだが、他の探査機にファイ達が撮影されている可能性もあるのでは?
「でも、俺らは何のニュースも聞いていないけどな」
ファイは得意そうに笑う。
「チキュウの技術で観測できる訳無いじゃん」
「...そうだった」
「それに、私たちの宇宙服は可視光線遮蔽シールドが付いているから無理」
「そういう対策はやっているんだな」
「見つかったら面倒くさいし」
「そうだな。他に、火星で聞いた話はあるか?」
ファイはこめかみを掻いて考え込む。
「えっと...確か二等兵から、自慢話を聞いた」
「どんな話だ?」
「10年前、この辺でチキュウの探査機を拿捕したって」
「え?」
界は耳を疑う。探査機が帝国に捕らえられていたのか!?
「めちゃくちゃボロボロだったんだって」
「...どんな探査機だったんだ?」
「んー、それは言えないかな」
「おい! 気になるだろ!」
「軍事機密だし」
「まあそれもそうか」
「でも、チキュウが打ち上げた探査機なんてそんなに無いだろうし、そっちで音信不通になったやつがそれなんだと思う」
「...むむ」
ファイの言い回しに腹が立ったが、確かにそれで絞られるのは事実だった。彼の脳裏に浮かび上がったのは、探査機「のぞみ」である。日本の打ち上げたやつで、確か2003年に音信不通になったはず。故障が相次いで、その影響で火星周回軌道への投入に失敗したと聞いたことがある。
「...1つ思い当たるな」
「そう」
「でも、言わないでおく。地球人の夢を壊さない為に」
「夢?」
「そうだ。地球人には宇宙開発の技術は無いけど、夢ならある」
「夢...」
ファイは自分の手のひらを見つめる。知らない概念だったのだろうか。
「まあ、良いさ。帝国はその探査機で、地球の技術を知ったんだろうけど」
「うん」
「そこは否定してくれ...」
界はまた頭を抱えた。どうもこの軍人さんは、口がそんなに堅くないらしい。




