第24話:第六世代と超新星爆発
「...いただきます」
「いただきます!」
ファイと界は、昼食のパスタを食べていた。界は彼女がフォークをちゃんと使えるか心配していたのだが、指でつまんで食べているのを見て杞憂だったと思った。彼女にとっては、地球のお行儀など何の関係も無いのだろう。界は少しだけ羨ましい気持ちになった。
「カイ」
「何だ」
「これ美味しい」
「だろ。地球の伝統料理だ」
「伝統...?」
ファイは訝しげな表情を浮かべる。帝国の方が長い歴史を持っていると言いたげだ。
「いやでも、俺らの伝統だからな。帝国とは違うけど、こっちはこっちで...」
「カイ」
「なんか言いたげだな」
「チキュウ人が生まれたのって、いつ?」
「...絶対負ける気がするから、お前の方から教えて欲しい」
界の提案に、ファイは麺を飲み込んでから答えた。
「良いよ」
「よし。じゃあお前の種族(?)は、いつ生まれたんだ?」
ファイは唇を指で拭いながら、口を開く。
「大体2000万年前」
「意外と最近だな」
「私みたいな円錐状の角を持ってるのは、第六世代って云うの」
「じゃあそれ以前は、第五世代だったのか」
「そう」
「よく分からないシステムだな」
「うん。カイの方は?」
界は記憶の糸を辿る。確か、現生人類であるホモ・サピエンスが生まれたのは...
「...約20万年前だ」
途端に、ファイは目をキラキラさせて喜ぶ。
「勝った〜」
「...そりゃ最初から勝敗は決まってたようなもんでしょ」
「第何世代?」
「知るか」
「角ってあったの?」
「...いや、ねえな」
「でもカイに角が無いのって、進化の過程で...」
「...そういう訳じゃないと思うけどなあ」
「そうなの?」
「うん」
「そっか」
ファイは納得したか分からない表情で、パスタをつまむ。それにしても、このガキは美味しそうに麺を啜るな。界はいつの間にか、自分の妹を見ているような感覚になっていた。
「カイ」
「どうした」
「お腹いっぱいになった」
「...そうか、良かったな」
界は内心、彼女にとっては腹いっぱいにご飯を食べるのが珍しいのかな、と思った。ファイは食いしん坊のようにお腹をさする。
「ファイ」
「ん」
「お前、やっぱりガキだな」
「む」
「...そうなると思った」
その日の午後も、界とファイは帝国について一緒に勉強した。内容は主に、軍事史だった。ただ界は太陽系の宇宙史しか知らないので、よく分からない部分も多かったが。それでも、驚いた出来事は多々あった。
「ファイ」
「何」
「お前、超新星爆発って見たことあるか」
「ある」
「まあ銀河全体じゃ、よくあることか」
「あの時は死ぬかと思った」
「やべえんだな」
「でも1000年前の教訓のおかげで、何とか避難することができた」
「1000年前?」
「うん。あの時は、第61管区が全滅したんだって」
「それって、これか?」
界は宇宙の図鑑を見せる。そこにはM1、かに星雲の姿が映っていた。
「これ」
「やっぱりそうか」
かに星雲は、1054年に起きた超新星爆発の残骸である。その時の記録は、陰陽師からの話として藤原定家の日記にも記載してあった。
「俺らの祖先が、その爆発を記録に残しているんだ」
「へえ。そのくらいの知恵はあったのね」
「...平安時代の人たちが泣いてるぞ」
「でも、チキュウの人たちもちゃんと空を見上げてたんだね」
「そうだな」




