第17話:テレビ電源チャレンジ
界は扉を内側から閉める。ファイはぼーっと部屋の真ん中に座っていた。髪がまだ乾いていなくて、気持ち悪い。さっき言っておけば良かった。それとこの服装、軽くて無防備な感じがする。でもチキュウでは、それが普通なのかな...
どうやらこの星では、兵器が身近な場所に無いらしい。それだけ紛争が少ないということなのだろうか。それとも、この部屋が平和なだけで、外には戦場が広がっているのか? ファイにはよく分からなかった。
ファイは自分の服装を改めて眺めた。銀河尋常帝国宙軍の三等兵が、こんなところで何をやっているのだろう。しかも片田舎の服を着せられて、惨めに映っているだろうに。でも、彼女は全てを否定することはできなかった。この星は惑星間を移動する技術すら無いくせに、生活設備は妙に充実している。水は贅沢に使えるし、温かい食事は食べられるし、柔らかい布団で眠れる。そのどれも、彼女のこれまでの生活よりも遥かに優れていた。そこがどこか、新鮮だった。
「別に、田舎だし」
ファイはそう呟きながらも、テレビの方を眺める。この黒い板は、一体何だろうか。彼女の星にも似たような物があったような...確か、軍の内部で情報を伝達する端末だったはずだ。彼女は電源を点けようとあれこれ試してみる。
手をかざす——点かない。
声をかける——点かない。
磁気を送る——点かない。
「壊れてるのかな...」
ファイは床に座り込む。その拍子に、リモコンを踏んでしまった。
「痛っ...!」
だがそれで電源ボタンが押されたことで、テレビの電源が点いた。磁気の影響は受けなかったらしい。
「チキュウの機械、よく分かんない」
ファイは床に寝転んで、テレビを眺める。深夜のニュース番組では、株価の暴落について専門家たちが討論を行っていた。彼女は不思議に思う。何故この星では、些細な数字の変化で大騒ぎをしているのだろう。彼女の関わった「事件」の話題で、この宇宙は持ちきりのはずなのだが。
「田舎過ぎて、情報が来ていないのかな...」
実際は地球が異銀河の情報を受信する技術を持っていないだけなのだが、ファイはそのことに気付いていない。
「上がったぞ」
界が洗面所から出てきた。Tシャツ短パン姿で、タオルを首にかけている。
「ん」
「お前、髪を乾かしたか」
ファイは寝っ転がったまま答えた。
「まだ」
「じゃあドライヤーを貸してやる」
「どらいやー?」
「こっちに来い」
ファイは洗面所に入った。界はドライヤーの使い方を説明する。彼女は飲み込みが早く、すぐに慣れた手付きで使えるようになった。
「お前、やっぱり頭良いな」
「でしょ」
「流石は元軍人」
「むふ〜」
ファイは得意そうに胸を張る。
「そういや、軍ではどんなことをしてたんだ?」
「色々」
「まあ、説明しにくいか」
「どうせチキュウの技術じゃ、理解できないでしょ」
「...ちょっと腹立つな」
「田舎過ぎて、銀河の情報も来ないし」
「銀河の情報?」
「さっき見た黒い板、変な情報しか言ってなかった」
「テレビのことか。確かに地球は、宇宙開発が全然進んでないからな...お前の星とは大違いだろ」
「植民地とかも、せいぜい近くの惑星でしょ」
「宇宙に植民地なんかねえよ」




