第16話:クローゼットは隠し部屋
界は部屋の方へと向かう。彼女の着替えをどうするか、という問題が残っていた。しかしこの家の引き出しには、男性用の服しか無い。
「仕方無いな」
界はTシャツとジーンズ、そして新品の下着をまとめておく。それにバスタオルも添えた。今はこれで我慢して貰うしか無いな。こればっかりはどうしようも無い。
水音が止んだのを見て、界は扉をノックした。
「ファイ、終わったか」
「うん」
「まだ浴室に居ろよ。洗面所には来るな」
「なんで」
「プライバシーってやつだ」
「そう」
彼は目を瞑りながら洗面所に入る。恐る恐る目を開くと、浴室からファイの顔だけが出ていた。
「じゃあこのタオルで、身体を拭くんだ」
「承知」
ファイはタオルを受け取ると、浴室の扉を閉めた。界は後ろを向く。
「カイ」
「何だ」
「チキュウの服は」
「こいつだ」
彼は後ろを向いたまま、衣類を手渡す。しばらく経つと、Tシャツとジーンズに身を包んだファイが現れた。少し不安そうにしている。サイズは少し大きかったが、特に問題は無さそうだった。
「サイズは、平気そうだな」
「うん」
「気分は?」
「なんか軽くて落ち着かない」
「そりゃ、軍服とは違うからな」
「あと、水を大量に使うことの背徳感がたまらなかった」
「シャワーって、罪悪感が伴うんだな...まあ地球は水が多いから」
ファイは首を傾げた。襟元から彼女の鎖骨辺りが見えたような気がして、界は目を瞑る。
「どうしたの?」
「...こっちの問題だ」
「?」
界はこっそり、(ファイってこんなに可愛かったっけな...)と思っていた。地球の服を着せるだけで、こんなに印象が変わるのか。
「えっと...軍服はハンガーに掛けておくか」
「はんがー?」
「こっちに来い」
界はクローゼットを開ける。ファイは銃を構えるポーズを取った。
「敵襲!?」
「違う、隠し部屋じゃねえ。ここは衣服を仕舞う空間だ」
「誰も居ない?」
「居ない」
ファイは『銃』を下ろすと、界の隣に立つ。
「で、私の服は?」
「取りあえず、ここに掛けておくか」
彼はファイの軍服をハンガーに引っ掛けると、クローゼットの扉を丁寧に閉めた。界はその場で伸びをする。
「さて、俺もシャワーに入るか」
「うん」
「部屋が散らかってるが、まあ気楽に過ごしてくれ」
「承知」
「じゃあ俺はこれで。あ、覗くなよ」
「する訳無いじゃん」
「一応、だ」
「時間の無駄だし」
「...理由がお前らしいな」
界は扉を内側から閉める。




